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zoom RSS 特許の権利範囲

<<   作成日時 : 2005/09/07 23:54   >>

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 発明の意義がわかったところで、これが特許としてどのような権利になっているかというと、それは「特許請求の範囲」の表現をみればよいわけです。この特許の請求項1はつぎのように書かれています。
 
 「加熱された基板の表面に、基板に対して平行ないし傾斜する方向と、基板に対して実質的に垂直な方向からガスを供給して、加熱した基板の表面に窒素化合物半導体結晶膜をMOCVD法でもって常圧で成長する方法において、
 基板の表面に対して実質的に垂直な方向には、反応ガスを含まない不活性ガスの押圧ガスを供給し、不活性ガスである押圧ガスが、基板の表面に平行ないし傾斜する方向に供給される反応ガスを基板表面に吹き付ける方向に方向を変更させて、半導体結晶膜を成長させることを特徴とする半導体結晶膜の成長方法。」

 特許公報を見ながら上記の請求項を読まれた方は、公報に記載されている請求項1と一部違っているところがあることに気づかれたかも知れません。これは書き間違いではなく、特許公報が発行された後、請求項の内容が変更されたためです。特許が登録された後にその内容を変更することを「訂正」と呼んで、補正とは区別しています。この訂正が行われた理由を説明するにはこの特許の成立過程を詳しく見ていく必要があります。この点について、つぎの機会に説明したいと思います。

 典型的な請求項の書き方は、「・・・において、・・・を特徴とする・・・」という形です。「・・・において」の前は、発明が対象とする技術の範囲を示していて大体は従来技術を示していると言えます。この請求項では半導体結晶膜を成長する方法が発明の対象であることがわかります。冒頭に「加熱された基板の表面に」とありますから、加熱されていない基板を使う場合はこの発明の技術の範囲外となります。またガスを2方向から供給しない場合も範囲外です。そして訂正によって加えられた「窒素化合物半導体」以外にも半導体はいろいろありますが、それらは範囲の外です。また前回結晶膜の作り方にはいろいろあると書きましたが、「MOCVD法」以外の方法を使う場合は範囲外となります。「常圧で」とあるのでMOCVD法では減圧で行う場合もありますが、それは範囲外となります。

 これもあれも範囲外と書きましたが、これはとても重要なことで、この特許の発明が対象とする技術の範囲外であれば、どのような方法であっても、この特許の権利者から権利の侵害であると訴えられる言われはなくなります。ですからその境はとても重要です。この特許の場合、境はかなり明確なように思いますが、例えば「MOCVD法」以外の方法かどうかを判定する場合には「MOCVD法」の定義が必要です。それがあいまいだと自分の使っているのはMOCVD法ではないという主張がされた場合に、それが正しいかどうかを巡って争いになります。

 以上を前提にしたうえで、「基板の表面に対して実質的に垂直な方向には、反応ガスを含まない不活性ガスの押圧ガスを供給し、」この押圧ガスが、「基板の表面に平行ないし傾斜する方向に供給される反応ガスを基板表面に吹き付ける方向に方向を変更させて、」半導体結晶膜を成長させる方法、これがこの特許の権利範囲ということになります。

 特許権を取得しようとする人にとっては、その権利ができるだけ広い範囲に及んだ方がよいわけです。この特許の請求項にもその配慮はいくつか見受けられます。対象とする材料の範囲は「窒素化合物半導体」と書かれ、GaNとは書かれていません。つまり対象はGaNだけでなく、実施例2、3にあげられているAlNやInGaNも含み、その他にも窒素化合物の半導体があればそれも含むという意味です。また、基板の表面に対して「実質的」に垂直な方向とありますが、「垂直な方向」といってしまうと垂直から少しずれると範囲外になる恐れがあります。かと言ってどのくらいずれてもよいかははっきり言い切れない、そんな場合に「実質的に」という言葉がよく使われます。

 しかしだからと言って特許の範囲をどんどん広くされては、特許権をもたない人はたまったものではありません。そこでお役所(特許庁)が法律をもとに審査を行って、あなたの要求する権利は広すぎるからもう少し狭くしなさい、というようなことをいってバランスをとっているのです。このとき、広すぎるかどうかはその特許が出願されるより前にその技術がどこまで知られていたかということが基準になります。

 つぎにはこの特許の審査の過程を見てみることにします。 

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