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zoom RSS 請求項の変遷を追う(つづき)

<<   作成日時 : 2005/09/21 23:32   >>

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 まず公開公報に掲載されている出願時の請求項をみてみると、つぎのようになっています。

<出願時>
 「基板の表面に反応ガスを噴射して、加熱された基板表面に半導体結晶膜を成長させる方法において、基板の表面に、平行ないし傾斜して反応ガスを噴射すると共に、基板に向かって押圧拡散ガスを噴射することを特長とする半導体結晶膜の成長方法。」

 その後の自発補正により、「押圧拡散ガス」から「拡散」の語を削除し、「押圧ガス」にする修正がなされています。すなわちつぎの通りです。下線部が修正された箇所です。

<自発補正後>
 「基板の表面に反応ガスを噴射して、加熱された基板表面に半導体結晶膜を成長させる方法において、基板の表面に、平行ないし傾斜して反応ガスを噴射すると共に、基板に向かって押圧ガスを噴射することを特長とする半導体結晶膜の成長方法。」

 さてこれが審査を経て登録になったときどうなったかというとつぎの通りです。かなり多くの語が加えられ、大幅な修正が施されています。

<登録時>
 「加熱された基板の表面に、基板に対して平行ないし傾斜する方向と、基板に対して実質的に垂直な方向からガスを供給して、加熱された基板の表面に半導体結晶膜を成長させる方法において、基板の表面に平行ないし傾斜する方向には反応ガスを供給し、基版の表面に対して実質的に垂直な方向には、反応ガスを含まない不活性ガスの押圧ガスを供給し、不活性ガスである押圧ガスが、基板の表面に平行ないし傾斜する方向に供給される反応ガスを基板表面に吹き付ける方向に方向を変更させて、半導体結晶膜を成長させることを特徴とする半導体結晶膜の成長方法。」


 後にこの請求項はさらに訂正されていますが、まずは審査を経て登録になるときの請求項の変化に注目しましょう。以前にも見ましたが、審査官が先行文献として引用したのはJOURNAL OF ELECTRONIC MATERIALSという外国の学術雑誌です。ここで9月14日付「経過情報(その2)」で書いたことに間違いがありましたので、訂正しておきます。「特許公報をみるとこの外国文献は発明者が従来技術を説明するために引用しているものと同じです。」というのはその通りですが、先ほど見た公開公報にはこの文献は記載されていません。すなわち「発明者は自身の発明がこの文献に書かれた技術の課題を解決できたと考えて特許を出願したはずですが、」という記述は誤りでした。審査官がこの文献を取り上げて拒絶の理由としたため、出願人は明細書にこの文献についての記述を後になって加えたというのが正しい説明です。

 通常、審査官が先行文献として引用するのは日本の公開特許公報です。外国の学術雑誌まで調査するのは大変困難なので普通はしません。ではこの場合なぜこの文献を審査官は引用したのでしょうか。その答えは情報提供です。前に経過情報を見たときに刊行物等提出書というのが出されていることを説明しましたが、だれかがこの外国文献を提出し、これを審査官が採用したものと思われます。

 さてこの文献には、特許公報2ページ目の左下に説明されているように、MOCVD法によるGaN、AlN、GaAlNの結晶膜の成長方法が記されています。つまりこの特許とほぼ同じ技術が対象になっています。そして基板な方向からTMGなどを供給し、基板に垂直な方向からNHガスを供給する方法をとることが説明されています。

 審査前の請求項は「基板の表面に、平行ないし傾斜して反応ガスを噴射すると共に、基板に向かって押圧ガスを噴射する」となっているので、反応ガスであるTMGを基板表面に平行な方向から供給している点は同じだし、押圧ガスは種類も書かれていないので、NH3ガスを押圧ガスと見なせば、たしかに基板に向かって噴射しているし、ということになってしまって、この請求項に書かれていることはすべて先行文献に書かれているから特許にはできないということになってしまった訳です。

 そこで出願人は、押圧ガスについては「反応ガスを含まない不活性ガス」という種類に限定し、反応ガスの一方を基板に垂直な方向から供給している先行文献の方法とは違うことを主張しています。また「押圧ガスが、基板の表面に平行ないし傾斜する方向に供給される反応ガスを基板表面に吹き付ける方向に方向を変更させて」としてこの押圧ガスの役割を明確にして、先行文献においてはそのような役割はないとしています。このように先行文献に書かれていることとこの特許に書かれている発明はちがうことが説明され、それに沿って請求項も補正されたので、審査官も特許として認める査定を下したものと思われます。

 しかしこれで終わりではありませんでした。以下次回です。

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