石くれと砂粒の世界

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<<   作成日時 : 2005/09/30 00:08   >>

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 異議申立をした人は2つの証拠(特開昭63−7619、特開昭63−28868)にこの特許の請求項に書かれた発明はすでに記載されていると主張していますが、自分なりに検証してみましょう。

 まずこの特許の発明の本質は、「基板の表面に平行ないし傾斜する方向には反応ガスを供給し、基版の表面に対して実質的に垂直な方向には、反応ガスを含まない不活性ガスの押圧ガスを供給」することにあることはすでにみた通りです。これが日本真空特許に書いてあるかですが、特開昭63−28868の請求項1には「反応性を有するガスとを減圧下反応槽内の基板の表面にほぼ平行にシート状の流れで導入し、かつ前記基板の表面に対向するように不活性ガスを主体とするガス流を導入し」とあります。基板の表面に「平行ないし傾斜する方向」と「ほぼ平行に」とは少しちがいはありますが、ほとんど同じと言えるでしょう。また基板の表面に「実質的に垂直な方向に」と「対向するように」とも少し違いますが、表現の差といった程度の違いと言えるように思います。

 あとは「不活性ガスである押圧ガスが、基板の表面に平行ないし傾斜する方向に供給される反応ガスを基板表面に吹き付ける方向に方向を変更させて」という2つのガスを異なる方向から導入した際に生じる現象が、日本真空特許に書かれているかどうかです。文章はおいて、特開昭63−7619の第3図を見て下さい。第3B図は基板にほぼ平行な方向からだけガスを導入した場合のガスの流れを説明しています。これに対して基板に対向する方向からガスを導入したときの様子が第3A図に示されています。2つの図を見比べると、押圧ガスによって、「基板の表面に平行ないし傾斜する方向に供給される反応ガスを基板表面に吹き付ける方向に方向を変更」されていることが図示されていると言えるように思います。

 その他の細かい部分ですが、「加熱した基板の表面に」に対しては、特開昭63−28868の請求項1に「基板を加熱することにより」と記載があります、以上のようにほとんど同じことが先に出願された公開特許にすでに書かれていることになります。もう少し細かく、実施例を含めてちがうところがあるかを調べてみましょう。

 2つの証拠はGaNなど窒化物半導体膜には触れていません。扱われている膜材料はタングステンシリサイド(SWx)などです。反応ガスは特開昭63−28868の請求項2に列挙されていますが、実施例ではシラン(SiH4)と4フッ化タングステン(WF4)を反応ガスとしてSWx膜をSi基板上に成膜しています。できる膜は単結晶薄膜ではないと思われます。

 特開昭63−7619の3ページ目の末尾には、「実施例では、いわゆる熱CVDによる薄膜形成が説明がされたが、プラズマCVDや光CVDなどにも」適用ができることが記載されているものの、MOCVDには触れられていません(この特許が出願された昭和61年にはMOCVDはすでによく知られていました)。これらのCVDは通常、結晶成長法として扱われておらず、半導体結晶膜の成長技術はほとんど意識されていないと言えます。

 以上の点から出願人は、登録時につぎのようであった請求項を、訂正し材料を窒化物半導体に、方法をMOCVD法に限定しました。

<登録時>
 「加熱された基板の表面に、基板に対して平行ないし傾斜する方向と、基板に対して実質的に垂直な方向からガスを供給して、加熱された基板の表面に半導体結晶膜を成長させる方法において、基板の表面に平行ないし傾斜する方向には反応ガスを供給し、基版の表面に対して実質的に垂直な方向には、反応ガスを含まない不活性ガスの押圧ガスを供給し、不活性ガスである押圧ガスが、基板の表面に平行ないし傾斜する方向に供給される反応ガスを基板表面に吹き付ける方向に方向を変更させて、半導体結晶膜を成長させることを特徴とする半導体結晶膜の成長方法。」

<異議申立に対する訂正後>
 「加熱された基板の表面に、基板に対して平行ないし傾斜する方向と、基板に対して実質的に垂直な方向からガスを供給して、加熱された基板の表面に窒素化合物半導体結晶膜をMOCVD法でもって常圧で成長させる方法において、基板の表面に平行ないし傾斜する方向には窒素化合物半導体の原料となる反応ガスを供給し、基版の表面に対して実質的に垂直な方向には、反応ガスを含まない不活性ガスの押圧ガスを供給し、不活性ガスである押圧ガスが、基板の表面に平行ないし傾斜する方向に供給される反応ガスを基板表面に吹き付ける方向に方向を変更させて、半導体結晶膜を成長させることを特徴とする半導体結晶膜の成長方法。」

 特許庁はこの訂正を認め、特許も維持すると決定しました。しかしどうでしょうか。疑問が残りませんか。拒絶理由通知のときに引例をして使われた外国論文にはMOCVDでGaNを成長することが明記されています。窒化物半導体結晶膜をMOCVD法で成長することに限定しても、依然としてよく知られた技術を組み合わせただけのように思われます。ただデバイスが作れるレベルの質をもったGaN結晶膜は当時だれも作製できなかったのも事実で、それが中村氏の研究によって可能となり、青色発光ダイオードの実用化に道を開いたわけですから、それがこの発明によると主張されると、その効果の大きさは認めざるを得なかったのではないでしょうか。

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