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zoom RSS p型GaNの作り方

<<   作成日時 : 2005/10/29 19:53   >>

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 発光ダイオードの発光原理の説明に5回ほどかかってしまいました。そもそもこれは青色発光ダイオードを作るのに、何が難しかったのかを探るための準備でした。いよいよその本題に戻ろうと思います。

 6回前の最後に中村裁判の東京地裁判決(平成13年(ワ)17772号)の判決文を参照しましたが、そのなかに青色発光ダイオードが実用化され、さらに発展していく技術的経緯が記載されていました。「三 前提となる事実」という節には「8.GaN系バッファ層及びp型化アニーリングの各発明」という項があります。このなかの「p型化」というのはこれまで説明してきたp型半導体すなわちp型のGaNを作るという意味です。

 なぜp型を作ることがことさら取り上げられているのでしょうか。GaNはVーV族半導体ですから、前にも説明した通り、3価のGaより価電子の1個少ない2価の元素を微量添加することでp型ができるはずです。ところが実際はそうはいかなかったのです。例えば亜鉛などの2価の元素を添加してもp型はできず、電気抵抗の高い電流の流れにくいGaNしかできませんでした。一方、n型は5価の窒素より価電子の1個多い6価の元素、例えばセレンなどを添加することで作ることができました。

 n型はできてもp型ができなくてはpn接合ができないので、これまで説明してきた発光ダイオードはできません。発光の色を決めるのは半導体のバンドギャップのエネルギーであると前回説明しましたが、GaNと同じようなバンドギャップをもつ材料にU−Y族のセレン化亜鉛(ZnSe)があります。しかしZnSeも同じようにp型ができないという問題をもっています。青色発光を可能にする候補の半導体でいずれもpn接合ができないということが青色発光ダイオードの実現を阻んできた大きな理由です。

 同じV−V族のGaAsやInPは理屈通りにp型を作ることができます。ではなぜGaNではできないのでしょうか。これはかなり難しい問題でしたが、日亜化学のグループが実際にp型GaNを作ったことで、その原因もかなりわかってきたと言えそうです。また特許を読みながらその問題を考えてみましょう。

 上の東京地裁の判決文にp型を作るための発明の特許番号が書かれています。特許第2540791号(以下、簡単のために791特許と言います)がそれです。さっそく特許電子図書館でこの特許をみてみることにします。

 発明の名称は「p型窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法」で、 1991年12月24日の出願です。特許権者は日亜化学工業、発明者は中村修二氏と岩佐成人氏の2名であることがわかります。経過情報をみると、激しく異議申立がされるなどいろいろあるようですが、ここではその問題には立ち入りません。

 それでは請求項を見てみましょう。請求項1には「気相成長法により、p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体を成長させた後、400℃以上の温度でアニーリングを行うことを特徴とするp型窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法。」と書かれています。なんだか拍子抜けするほど簡単な内容です。ただ400℃以上に加熱するだけです。

 もっとも請求項2を見ると加熱は窒化ガリウム系化合物半導体の分解圧以上に加圧した窒素雰囲気中で行うとなっています。また請求項3では窒化ガリウム系化合物半導体の上に、さらにキャップ層を形成するとなっています。これはどういう意味でしょうか。明細書に書かれた説明を見てみることにしましょう。

 従来技術について特許公報の2ページ目[0005]段落に上に書いたのと同じようにGaNではp型ができないことが書かれています。では従来まったくp型ができなかったのかというとそうではありません。[0006]段落の「発明は解決しようとする課題」のところにとく特開平2−257679号という公開特許が引用され、マグネシウム(Mg)を添加して高抵抗になったGaNに電子線を当てるとp型になって低抵抗化することが知られていたと書かれています。この公開特許もちょっとみておきましょう。

 この特許は名古屋大学から出願されています。筆頭発明者は赤崎勇氏となっていますが、この方は名古屋大学の教授(現在は退官されています)で、早くからGaNを使った発光素子の研究をされてきた方です。請求項は1つだけで、発光素子の製造工程として書かれているため、やや長文になっています。ここに電子線を照射することによりp型を作製する方法が記載されています。

 791特許に戻りますが、ここには電子線照射という方法の問題点が記されています。それは電子線というのはテレビのブラウン管(正しくは陰極線管、CRT)で使われている陰極線と基本的には同じものです。金属を加熱すると飛び出す電子をプラスの電圧をかけた電極を近づけて引き出してやると発生させることができます。ただそのままですとあちこちに広がってしまうので、電界か磁界をかけてビーム状にしたものを電子線と言います。

 CRTもそうですが、細い電子線を広い面積に当ててやるためには電子線の方向を変えて面上をなぞってやる必要があります(これを走査すると言います)。2価の元素を添加したGaNに電子線を当てるとp型化するという赤崎先生の発見はすばらしかったのですが、いちいちウェハ面を走査をしなければならないので、デバイスを生産するには向いていません。また電子線を固体表面に照射してもその影響は表面近くの浅い部分にしか及ばないのも問題でした。そのことが791特許の[0006]段落に書かれています。

 そこで791特許の発明者は加熱でp型を実現することを考えたわけです。しかし単に温度を上げるだけではうまくいかず、加圧した窒素中で行う必要があることに気づいたものと思われます。なぜこうするとよいのか、少しながくなりましたので次回とします。

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