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zoom RSS p型GaNの作り方(つづき)

<<   作成日時 : 2005/11/03 23:25   >>

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 p型用の添加物を入れて(ドープして)結晶成長し、もう一度400℃以上に加熱(アニール)するとp型GaNができるというのが791特許の請求項1ですが、ここにはそれ以外の条件が書かれていません。実際にはさらに周囲の条件が必要です。その一つが請求項2に書かれた加圧した窒素中で行うというものです。

 これはなぜかというと、791特許の[0009]の最後の部分に、窒素が分解して出て行くのを防ぐためとの説明があります。GaNは前にも説明した通り、砂粒ほどの結晶を作るのも難しいくらいですから、あまり安定した物質ではないようです。加熱すると簡単に分解してしまうのです。p型をつくるのに加熱はしたいが、加熱すると窒素が分解して逃げてしまうという難物だったわけです。そこで加熱しても窒素が逃げていかないように圧力をかけた窒素のなかで加熱するという方法が発明されたわけです。

 どのくらいの圧力が必要なのかというと、請求項2では分解圧以上に加圧することが必要と言っています。となると分解圧とはいくらくらいなの?という疑問がでます。この特許では[0010]段落でその疑問にきちんと答えています。GaNの場合、800℃ではいくら、1000℃ではいくら、1100℃ではいくらと、温度によってちがってくることがはっきり示されています。請求項ではっきりしないことは明細書を見なさいということになっていますが、[0010]段落の記述がどのくらいの圧力が必要かという疑問に答えてくれているわけです。

 さらに請求項3にはキャップ層を付けることが書かれています。キャップ層とは何か。これは業界用語でしょうか。文字通り、上に被せる層という意味です。これも窒素が逃げるのを防ぐために考えられる手段です。どんな材料の層を使ったらよいかというと、それは請求項4に書かれています。ところで請求項3は「請求項1ないし2に記載の」という限定がついていますので、つぎの2つのことを言っていることになります。

 まず、「請求項2に記載の」という意味は、請求項2には「請求項1に記載の」となっていますので、請求項3の条件+請求項2の条件+請求項1の条件という意味になります。言葉で言い直せば、キャッぷ層を付けて、圧力をかけた窒素中で、400℃以上で加熱するということになります。

 「請求項1に記載の」の方をとると、キャップ層を付けるだけで400℃以上に加熱するという意味になり、キャップ層を付ければ、窒素の加圧はしなくてもいいという意味になります。「請求項○○に記載の」と書かれた請求項は従属項と呼ばれますが、このように従属のさせ方で意味が変わってくるので注意が必要です。請求項4のキャップ層の材料はキャップ層がない場合には関係がありませんから、請求項3にしか従属していないわけです。

 実施例でどういうことがなされているかを見てみましょう。[0024]以降の実施例1では、MgをドープしたGaNを成長した後、常圧の窒素ガス中で800℃に加熱することにより、p型のGaNができたとされています。つまり窒素に加圧もしていないし、キャップ層も付けていないので、請求項1だけを使った例です。

 実施例2はキャップ層としてGaN層を付け、常圧の窒素とアルゴンの混合ガス中で加熱する例です。ガスに加圧をしていないので請求項1+3の例です。実施例3はキャップ層なしで20気圧の圧力をかけた窒素中で加熱していますので、請求項1+2の例です。800℃でのGaNの分解圧は0.01気圧とされていますので、20気圧であれば十分分解圧以上という条件を満たしています。実施例4はSiO2のキャップ層を付けた後、加圧した窒素中で加熱していますので、請求項1+2+3のやり方の例です。

 さて、以上からp型GaNを作る4通りのやり方の例がきちんと書かれていることがわかりました。とにかく400℃以上で加熱することが最低限必要ですということになりますので、これが請求項1に書かれているわけです。でも請求項1にはガスの種類は指定していません。例えば空気中で加熱したらどうでしょうか。空気中には酸素があるので、多分Gaが酸化されると思います。Gaの酸化物はあまり安定でないのでこれはまずいはずです。でもこういうことは常識なので、何から何まで書く必要はないし、書いていたらきりがないことになります。もっともどこまでが常識かというと微妙なところですが。

 というわけでこの特許の請求項はうまく書けていると思いますが、問題なのは、400℃以上に加熱するというのは当たり前でだれでも思いつくんじゃないの?という疑問に答えられるかということです。たくさんの異議申立がされたのもそのためです。ただ窒化物半導体のp型を作るのに400℃以上で加熱すると明記した文献は、この特許の出願前に出版されていたという証拠は見付かっていないので、請求項1は特許として認められているわけです。窒素化合物半導体ではどんな条件であろうが、400℃以上に加熱してp型を作るとこの特許を侵害することになってしまいます。

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