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zoom RSS p型GaNの作り方(つづきのつづき)

<<   作成日時 : 2005/11/06 12:09   >>

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 ところで791特許には熱処理をするとどうしてp型ができるのかについては書かれていません。特許の明細書としては別にそこまで書かなくてもよいでですが、科学的には、GaNではなぜ理屈通りにp型ができず、加熱するとそれが可能になるのかは解明すべき問題です。

 まず何か不純物(添加物)を入れて半導体結晶をn型やp型にするのに最低限必要なことは、純度の高い結晶がきちんとできていることです。原料となる材料に不純物が多かったりすると、後から微量の添加物を入れても効果が現れません。また結晶に乱れが多いとこれもだめです。

 GaNではこのような最低限必要なことは最初に取り上げた404特許のような結晶成長技術の研究によってクリアされていて、それでもだめな理由があったからです。GaNには限りませんが、このような理由としてかなり古くから言われていたものに補償効果というのがあります。これは添加物を入れて正孔を発生させても、何か他の理由でそれが吸い取られてしまって電気抵抗が高くなりp型にはならないというものです。

 GaNでp型ができなかったのもどうやらこのような原因だったようです。中村氏ら日亜化学のグループがこの問題について学術論文を発表しています(Japanese Journal of Applied Physics, 31巻、Part 1、No.5A、p.1258〜1266 (1992))。英文の論文ですが、この略称JJAPと言われる雑誌は日本で出版されていて応用物理学関係の学術論文が掲載されています。

 この論文によると原因は水素原子によるとされています。結晶成長は水素ガスを押圧ガスとして使い、また窒素の原料はアンモニアガス(NH3)ですから水素を含んでいて、非常に水素の多い環境で行われます。水素原子はもっとも小さい原子ですから結晶のなかに入りやすく、窒素に余った結合手でもあればそこに結びついてしまいます。水素原子は1個の電子を出しやすいので、これが折角作られた正孔を食ってしまうというわけです。

 このようなことが起こっている根拠として論文では窒素ガス中で加熱処理すればうまくp型になるのに、水素を含むアンモニアガス中で加熱処理してもうまくいかなかったという実験結果をあげています。水素が原因なら対策はそれを追い出してしまえばよく、周りに水素がない状態にして加熱すれば水素は簡単に出て行くはずです。ただしそのとき窒素が逃げないようにしておく必要があります。そこで加圧した窒素ガスのなかで加熱するか結晶表面に何か膜を作って加熱するという発想に結びついたことが理解できます。

 以上のようにn型、p型の半導体を作るのは、いつも理屈通りにはいかないことがわかります。その物質の性質によっていろいろなことが起こり、それにうまく対処しないとうまくいってくれないようです。

 GaNの場合、n型を作るにも通常考えられる6価のセレンなどではなく、4価のシリコンがよいことが赤崎教授のグループの天野浩氏らによって見出されています。Siは4価ですから3価のGaを置き換えれば電子が1個余りますが、5価の窒素を置き換えれば電子が1個足りないということになります。どちらの可能性もあるのですが、何らかの理由でGaを置き換えるようにはたらくのでしょう。この辺は個々の物質、材料によって決まる微妙なことで、理屈で予測するのは難しそうです。

 V−V族半導体のGaAsなどではp型を作るのに使われる添加物は亜鉛がもっとも一般的です。ところがこれも天野氏らがマグネシウム(Mg)がよいことを見つけました。Mgは2価ですが、アルカリ土類金属で、周期律表では亜鉛とはちがう系列にあります。これがp型GaNを作るのになぜいいのか理由ははっきりしていないと思います。

 いずれにしてもこのような研究に基づいてGaNのpn接合ができるようになったため、青色発光ダイオードが作れるようになったわけです。p型を作る話はこれくらいにしますが、791特許にはこれまであえて触れなかったいろいろな問題が書かれています。次回以降はそこに話を移していきたいと思います。

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