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zoom RSS 白色発光ダイオードの基本特許

<<   作成日時 : 2005/12/30 23:27   >>

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 今回は白色発光ダイオードの基本特許とも言うべき特開平5−152609号について調べてみることにします。内容を見る前に例によって特許電子図書館で経過情報をみてみましょう。この特許はかなり特異な経過を経ているので、特許制度の説明を少ししておく必要があると思います。

 この件は特願平3−336011号として1991年11月25日に出願されていますが、結果的には特許になることはありませんでした。出願した特許を権利にするためには特許庁に対して当時は出願から7年以内(現在は3年以内)に審査をしてほしいという意思表示をし、お金を払わなければ審査をしてもらえません。これを審査請求といいますが、この件は経過情報の「出願情報」をみると出願から3年と少しを経た1995年2月に審査請求がされています。

 期間内に審査請求をしないとどうなるかというと、出願は取り下げたとみなされ、権利になることは永久になくなります。出願は早い者勝ちですから、ゆっくり吟味せずにまず出します。時間が経って考えてみたら大した発明ではなかったなとかいう場合や、よく調べてみたらもう知られていたことが分かってしまった場合などはあえて審査請求をしない場合もあります。

 特許は出願されてから1年6月経つと公開されますから、もはやその後に同じ内容の出願をしても特許にすることはできません。企業などでは、特許権をもつほどのことではない技術でも、他社が権利を持ってしまって使えなくなると困ると思うと、公開することだけを目的として出願することがあります。公開されればその後だれかが同じ内容を出願しても権利にすることはできないからです。これを防衛出願と言います。審査をパスして権利を得、それを維持していくには労力も費用もかかります。そこまでしたくないが後で障害になるのも困るという企業的感覚のなせる技です。

 話をもとに戻します。この件、審査請求から約2年半後の1997年8月に拒絶理由通知が出されています。審査の結果は、特許にすると認められれば、特許査定、特許にすることはできない場合は拒絶査定のいずれかの査定となります。ただし拒絶査定をする場合はいきなりでなく、一旦その理由を出願人に通知して、出願人に意見を言う機会を与えなければいけないことになっています。特許査定はいきなりされることもあります。

 拒絶の理由はこの技術は公知であるということのようですが、ここではどのような文献が引用されたかまではわかりません。出願人は意見書と手続補正書を提出してこの拒絶の理由を回避しようとしましたが、審査官はこれを認めず、翌1998年6月に拒絶査定を発しています。これで審査は終わりで、この件は特許にできないと結論されたわけです。しかしどうもその結果に納得ができないと出願人が思ったときは、この査定に不服であることを申し出てもう一度審査をやり直してもらうことができます。これが拒絶査定不服審判の制度です。審査は審査官が一人で行いますが、審判では複数(通常3人)の審判官が審査官とは別の眼で審理を行うことになっています。

 この件もこの審判が請求されています。「審判情報」の方をみて下さい。審判記録の一番上に請求書というのがありますが、これが拒絶査定不服審判をしてほしいと出願人が特許庁に請求する書類です。これは拒絶査定から30日以内に出さなければならないことになっています。さらにそこから30日以内は特許の内容を補正することができます。この件も補正がされています。

 そのつぎに何回も「閲覧照会」と何度も同じことが書かれていますが、これはこの特許の成り行きに関心をもっている人(会社)がたくさんいて、どんな補正がされたかを調べていることを示しています。その下に前置移管という変な言葉があります。これは何かというと、審判を請求するときに補正がされた場合には、審判官が見る前に事情をよく知っている前の審査官にもう一度、審査をしてもらう前置審査という制度があり、その審査に移されたということを示しています。

 この段階で審査官が特許にしてもいいと判断した場合は、審判官の手を煩わすことなく特許査定がなされます。しかしやはり特許にはできないと判断した場合は、審査を終了して判断を審判官に委ねます。前置解除をあるのはその意味です。これでいよいよ3人の審判官(合議体といいます)による審理が始まるわけです。その結果は1999年10月に出ている審決です。どういう審決だったかは上の方の「審決の決定記事」というところをみると特許(登録)しないとなっていて、審判においても特許にはできないという判断が下っています。

 この審判の結果にも納得ができない場合は、裁判所にこの審決を取り消してほしいと訴えてでることができます。これを審決取消訴訟といいます。審判までは行政機関である特許庁が行いますが、それに不満がある場合は司法機関である裁判所に訴える途が残されています。この件ではそこまではせず、この段階で断念しています。しかしこれで白色発光ダイオードについての権利化を断念したかというとそうではありません。「審判情報」の横にある「分割出願情報」を見て下さい。なんと第6世代までたくさんの分割出願がされていることがわかります。第1世代の特願平9−306393号は1997年10月の出願ですから最初の拒絶理由通知へ応答するときにすでに出願されています。

 最初の出願(親の出願)は特許にならなかったが、さらば分割出願で行こうということであろうと思われます。これについては次回に。よいお年を。

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