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zoom RSS 白色発光ダイオードの基本特許(その4)

<<   作成日時 : 2006/01/21 17:59   >>

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 最初考えていたよりこの話が長くなってしまいました。今回で白色発光ダイオードはおしまいにします。

 この白色発光ダイオードの特許は1991年の特願平3−336011号が最初の出願でしたが、これはその後、つぎつぎと分割されています。それを特許電子図書館で確認してみましょう。経過情報でH03-336011を入力すると、分割出願情報というタブが出てきますのでこれを開いてみます。分割出願がわかりやすく表で示されています。1件1件調べてこのような表を作るのは結構大変ですから、1クリックでこれが見られるのは大変ありがたいことです。

 分割出願は第1世代(いわゆる子出願)から第6世代(孫の孫の孫でしょうか)まであります。しかも一昨年出願の第5世代は3件、昨年出願の第6世代は2件あります。こんなに多数の分割がなされた例はそんなにあるものではありません。

 子出願の特願平9−306393については前回、やや詳しく説明しましたが、第2世代以降も経過情報を開いてみました。そうすると、これまたすごいことに第5世代の1件とまだ確定していない第6世代を除く他の件はすべて拒絶査定になり、その後、拒絶査定不服審判が請求されています。その結果、特許にならなかったのは第4世代の1件と第5世代の1件だけです。第1世代の特許第2900928号に続いて、第2世代の3366586号、第3世代の3645207号、第5世代の2件、3724490号と3724498号がそれぞれ登録になっています。

 やはり各件の内容を見てみたいですね。第2世代の3366586号の請求項1では、窒化ガリウム系化合物半導体がGaxAl1-xN(但しXは0≦X≦1である)に限定されており、青色光の波長範囲が420nmから440nm付近と限定されています。また波長発光ダイオードの視感度を良くするという効果を表す表現も付加されています。第3世代の3645207号の請求項では、 凸レンズ状樹脂モールドという語が加えられている程度、第5世代の3724490号の請求項では発光ダイオードの色補正をするという語が加えられている程度と、請求項の内容的差異はわずかです。さらに比較的すんなりと登録になった第5世代の3724498号は他の件とのちがいがどこにあるのか判然としません。

 親出願にそれほど多岐にわたる内容が書き込まれているわけではないので、その範囲内で多数回の分割を繰り返すのは少し無理があるように思います。第6世代ではそれを表すかのように、特許法39条を理由に拒絶理由通知が出されています。この39条を理由にした拒絶というのは一言で言えば、先願と請求項の内容が同一だというものです。もはや分けようにもネタがないと言った状態かと思います。特願2005−158166号の方は昨年末に拒絶査定になっています。これも拒絶査定不服審判で争うのでしょうか。

 それにしてもなぜこのように分割出願を何度も繰り返しているのでしょうか。最近、”私の言語”さんという弁理士さんが書かれている「特許の思想体系」といういかめしいタイトルのブログ(http://tb.plaza.rakuten.co.jp/patent/diary/200601100000/)に「分割出願の利用形態」という記事が3回連載されていて、8種類もの利用形態が紹介されていますが、このケースはどの形態ともちがうような気がします。何としても蛍光体と青色発光ダイオードを使った白色光源を独占したいという執念はわかるのですが・・・。

 ところでこれらとは別に最初の分割出願と同年に出された特願平9−218149号という特許があり、これは特許第2927279号として登録されています。この特許は請求項が6つありますが、請求項1は次のような内容になっています。

【請求項1】 マウント・リードのカップ内に配置させた発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であるLEDチップと、該LEDチップと導電性ワイヤーを用いて電気的に接続させたインナー・リードと、前記LEDチップが発光した光によって励起され発光する蛍光体を含有する透明樹脂を前記カップ内に充填させたコーティング部材と、該コーティング部材、LEDチップ、導電性ワイヤー及びマウント・リードとインナーリードの先端を被覆するモールド部材とを有する発光ダイオードであって、前記LEDチップは、発光スペクトルが400nmから530nmの単色性ピーク波長を発光し、前記蛍光体は(RE1-xSmx3(AlyGa1-y512:Ceであり、且つLEDチップからの光及び蛍光体からの光はモールド部材を透過することによって白色系が発光可能なことを特徴とする発光ダイオード。ただし、0≦x<1、0≦y≦1、REは、Y、Gdから選択される少なくとも1種である。

 蛍光体の材料を特定のものに限定した特許ですが、いかがでしょうか。最初の特許に比べると規定されている内容が整理されているように思えませんか。やはり6年の時を経て製品が具体化した時点での出願は最初の発想のときの出願とはだいぶちがってくるものなのでしょう。しかし後年になると権利化できる技術内容は狭められ、競合他社も対抗して特許を出願してきます。やはり競合他社の参入を防ぐには早い時期の出願が重要なことがわかります。それをあらゆる手段を使って補強している典型的な例がこの一連の分割出願であると言えるように思います。

 発光ダイオードに関する技術は青色、すなわち窒化物系半導体を使った発光ダイオードに限らず他の材料を使った発光ダイオードについてもほとんど共通です。ちがうのは窒化物系半導体の結晶成長技術とp型、n型を自由にコントロールする技術だけといってもよいと思います。ですから青色発光ダイオードそのものの特許は公知技術がじゃまになってなかなか権利になりにくいと想像できます。しかし白色発光ダイオードは青色がなくてはできません。応用も青色そのものよりかなり広いと考えられますので、その特許を押さえることは事業を有利に進めるうえで非常に重要であったはずです。それがこのような特許を巡る激しい動きの原因であると推測できます。

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