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zoom RSS 優先権とは

<<   作成日時 : 2006/02/18 19:06   >>

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画像 パリ条約の優先権とは、英語で言うと”Right of Priority”で、要は先に出願した人の権利という意味です。日本語の優先権という訳語はもう長く使われて定着していますが、初めて聴く人には違和感があるのではないでしょうか。現代の日本語では優先と聞くと、例えば「仕事に優先順位を付ける」とか「何にもまして優先してやります」とか、いろいろあるなかで何を選択するかという意味に捉えることが多いように思います。しかし特許の優先権というのは読んで字のごとし、先が優るという時間的な意味です。大事なものを選んで先にするという行為の意味とは微妙にちがうような気がします。思い過ごしでしょうか。話が最初から脱線しました。

 さて、アメリカ企業のA社がアメリカに特許出願をし、日本にも特許を出したいとします。A社は最初、自国語の英語の明細書を作りますが、日本出願用には日本語に翻訳した明細書を作る必要があります。日本には英語の出願を受け付ける制度がありますが、2ヵ月後には英語に翻訳したものを提出しなければなりません。翻訳はできたとして、それを日本に送り、日本のやり方に従って日本特許庁に出願しなければなりません。アメリカに出願するのと同じ日に日本でも出願するとなるとかなり大変です。

 それでは同じ発明についての外国への出願は同日でなければいけないでしょうか。そういうことはありません。アメリカ出願は1年半後には公開になります。公開になってしまうと例え自分の出願でも公知になるということですから、それより後に同じ内容の日本出願をすると公知の文献があることを理由に拒絶されてしまいます。しかし公開の前であればそういうことはありません。

 ただしその間に他人が同じ内容の出願を日本でしてしまうと、それは先行文献になってしまいます。A社がアメリカ出願だけをし、その半年後にB社が日本に同じ内容の出願をしてしまうと、A社がその後に日本で出願してもB社の出願が先にされているため、日本ではA社の出願は拒絶されることになります。外国はそれぞれ少しずつ制度がちがい微妙なところがあるので、アメリカ企業が日本に出願する例で説明しましたが、日本から外国に出す場合も事情は大体同じです。つまり自国に比べて外国での出願は不利なわけです。

 優先権はこういう不利をなくすとまでは言えなくても、軽減するために定められたものです。A社がアメリカ出願をし、その後、日本出願をするときに、先にアメリカに出願しているよと主張する手続きをすれば、日本の特許庁はA社の日本出願はアメリカ出願のときにされたものとして審査をします。ですからこの間にB社の出願があったとしても、これは先願とはなりません。ただしこのような優先権が認められるのはA社の日本出願がアメリカ出願より1年以内に行われることが条件です。この1年という期間もパリ条約の4条Cというところに書かれていますので、同盟国間では共通の決まりごとです。

 これによって外国出願は自国の出願から1年以内にする限り、審査上は自国出願と同時にしたものとみなしてもらえますので、まず自国出願をしてしまえば、その後の翻訳作業と外国での出願手続きに1年間の余裕を持つことができます。

 もちろんこれは自国と外国の出願の内容が同じであることが条件です。1年間余裕があるということは、その間にまた発明が生まれるかもしれません。この新しい発明内容を自国出願に加えて外国出願すること自体は禁止されていませんし、それを理由に拒絶されることもありません。しかしその付け加えた部分まで最初の出願の時にしたものとは認められるわけではありません。実際の明細書にはこの部分は付け加えた部分ですなどと線引きがされているわけではありませんから、実際には何か付け加えられているのかいないのかの判断が微妙な場合もありますが、基本的な考え方は上記の通りです。

 具体的な特許をみてみましょう。3回前に調べたp型GaNの製法に関する外国出願をもう一度見て下さい。Esp@ce-netのNumber Searchで米国特許US5306662を検索します。特許番号がわかっているので、公報を見るだけであれば特許電子図書館でも調べられます。外国文献検索の外国公報DBで番号を指定すればこの米国特許を見ることができます。

 esp@ce-netでは最初に出てくる発明の名称をクリックすると、Bibliografhic dataのページが表示されます。左下の方にPriority number(s)という項目がありますが、ここに書いてあるのが、優先権を主張した特許の出願番号と出願日です。この例では4件の日本出願が書かれています。上では言いませんでしたが、最初の出願と後の外国出願が1対1になっている必要はありません。この例のように複数の日本出願の優先権を主張して1件のアメリカ出願をしても構いません。

 アメリカの特許公報を開いてみましょう。Original documentのタブをクリックして下さい。2001年までアメリカには公開制度がありませんでしたので、公開公報というものもなく、出願の内容が公開されるのはこのように特許として認められた場合だけでした。現在ではアメリカでも公開制度が設けられましたので、2001年以降の新しい出願については、一部公開されないものもありますが、大体は公開公報が見られます。

 公報の1ページ目には一番上に大きくUnited States Patentと書かれ、右側に特許番号と登日が書かれています。左側に”METHOD OF MANUFACTURING P-TYPE CONPOUND SEMICONDUCTOR”という発明の名称が書かれ、その下に発明者の名前が載っています。さらにその下は日本でいうと出願人ですが、アメリカでは出願人(Applicant)は発明者でなければならないという決まりがあり、会社はあくまで発明者から権利を譲り受けた者という立場ですので、Assigneeとなります。その下が出願番号で、その下が出願日です。出願日はApplication dateとは言わずに”Filed”と書かれています。書類が特許庁にファイルされた日という意味でしょう。

 そしてその下の”Foreign Application Priority Data”というのが優先権の主張が認められた最初の出願(基礎出願とも言います)の番号です。先程のesp@ce-netでは出願番号に西暦が使われていましたが、アメリカの公報には4件の日本出願の番号は「特願平」はさすがに書かれていませんが、平成の年号で書かれています。出願日の方は当たり前ですが西暦です。出願日は4件ともばらばらで、一番上が一番早く1991年11月8日となっています。複数の出願について優先権を主張する場合は、一番早い出願日から1年以内でないといけません。アメリカへの出願日は1992年11月2日ですから期限の6日前ということになります。

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