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<<   作成日時 : 2006/02/26 11:09   >>

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 アメリカ特許5306662をもう少し見てみましょう。1ページ目の左側の欄の下の方に”References Cited”という欄があり、その中の”U.S.PATENT DOCUMENTS”にはアメリカ特許が4件ほど示されています。また”OTHER PUBLICATIONS”(右側の欄)に示されているのは学術論文です。日本でも最近、制度改正により出願人はその発明に関する先行文献で知っているものがあるならば明細書に書かなければいけなくなりましたが、アメリカではこれがより厳しく要求されます。出願人は発明に関係する情報を知っていれば提出しなければならないという情報開示義務を負っていて、これをしないと特許が成立したとしても権利を行使できないという制裁が科されます。ここに示されている文献には審査官が引例として提示した文献と出願人が提出した文献が含まれます。技術のルーツへ遡るにはよい手がかりとなります。

 ページをめくると図面になります。アメリカ特許の明細書では図面が先に載っています。この特許では7ページから明細書の本文が始まっています。最初に発明の名称があり、つぎに”BACKGROUND OF THE INVENTION”(発明の背景)があります。日本特許の「背景技術」に相当し、従来技術が記載されます。つぎのページにいくと”SUMMARY OF THE INVENTION”(発明の概要)が見えます。少しニュアンスは違いますが、日本特許の「課題を解決するための手段」の項に該当します。日本特許の「発明が解決しようとする課題」に相当する項目はなく、課題は背景技術といっしょに書かれます。

 そしてつぎは”BRIEF DESCRIPTION OF THE DRAWINGS”(図面の簡単な説明)です。日本特許の場合よりだいぶ前にあります。9ページ目から”DETAILED DESCRIPTION OF THE PREFERRED EMBODIMENTS”(好ましい実施形態の詳細な説明)になり、複数の実施例(EMBODIMENT)の詳しい説明がなされています。

 一般に外国の公報では特許請求の範囲は最後に記されることが多いようです。アメリカ特許の場合もそうで、この特許の場合は15ページの右側の欄の下の方に”What is claimed is:”とあり、その下の8つの番号がついた項がこの特許のClaims(請求項)になります。特許請求の範囲という項目を設けず、付け足りのような書き方になっているところが面白いですね。

 このClaimと基礎出願である日本出願の請求項と比べてみましょう。基礎出願は前回触れたように最初のページに書かれている4件、特願平3-321353号、特願平3-357046号、特願平4-32763号、特願平4-40280号です。特許電子図書館で公開公報を探します。「特許・実用新案検索」で番号検索をする「特許・実用新案公報DB」では出願番号による検索はできません。そこで出願番号に対応する公開番号を調べなければなりません。以前に使った経過情報の番号検索を使えば、出願番号から公開番号が分かりますが、もっと簡単には「特許・実用新案検索」のメニューの2番目にある「特許・実用新案文献番号索引照会」で調べられ、公報を開くことができます。ただしPDFファイルでの表示は「特許・実用新案公報DB」の方でないとできないようです。

 さて調べてみると最初の1件、特願平3-321353号は該当する公開番号がなく、公開されていないようです。あとの3件は特開平5-183189号、特開平5-198841号、特開平5-206520号に該当することが分かります。これらの公報を開いてみましょう。

 特開平5-183189号は以前に調べたp型窒化ガリウムの製造方法に関する特許2540791号(791特許)に対応する公開特許です。この公報の1ページ目を見ると、出願番号、出願日の下に優先権主張番号という項目があって、特願平3-321353と書かれています。これはアメリカ出願の基礎出願の1番目に書かれていた番号と一致しています。さらにその下には優先日、平2(1991)11月8日、優先権主張国、日本(JP)となっています。これは何を意味するのでしょうか。

 実は前回説明したパリ条約の優先権と同じような制度が日本国内にもあって、国内優先権と呼ばれています。つまり最初の出願から1年以内であれば、それの優先権を主張してもう一度日本出願ができます。同じ国内の出願ですから外国のように翻訳文を作るのに時間がかかるとか、距離が遠いなどの理由はありません。しかし外国出願をする際に基礎出願に実施例などを追加する場合がありますが、日本出願に同じことを加えようとしても補正ではできませんから手段がないことになってしまいます。そこでこのような制度が設けられています。ただしパリ条約の優先権とちがって、国内優先権を主張すると先の出願は公開される前に自動的に取り下げたことになります。そうしないと同じ発明についての出願が重複してしまうことになるからです。このため特願平3-321353号自身は公開されいないのです。

 国内優先とはいっても新たな発明を書き加えた場合には、それが最初の出願日に遡って存在したと認められるわけではありません。しかし別に出願するよりは一つの出願にまとめておいた方がいい場合もあるので、そのような場合には便利です。また発明自体は変わらないとしても、実施例を追加しておきたいような場合、補正では認められませんので、こういう場合にも役立ちます。

 話を戻しますが、特願平3-321353に対して特願平3-357046には何かが付け加えられているはずです、しかし追加部分がどこなのかは特願平3-357046の公開公報をみても示されません。それを知るには特許庁から包袋を取り寄せなければなりません。

 パリ条約の優先権主張をして外国出願をする場合には、もっとも先に出願である最初の出願に対しても優先権主張をする必要があります。優先権主張をする対象を特願平3-357046にしてしまうと、優先日はその出願日である12月24日になってしまいます。この場合は先の出願の出願日が11月8日ですから1ヵ月半ほどしかちがいませんが、通常は1年近い差になります。ただこの最初の出願から1年以内に外国に出願する必要がある点は注意が必要です。うっかりして後の出願直前に外国出願をすると、先の出願にタイする優先権主張は認められなくなってしまいます。

 以上のような理由で日本で公開公報が出ていない出願が外国出願での優先権主張の対象になっていることもあるのです。次回にClaimの内容を日本出願と比べてみることにします。

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