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<<   作成日時 : 2006/03/11 20:34   >>

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 アメリカ特許をみたので、ヨーロッパ特許もみておきましょう。アメリカ特許5,306,662をもう一度esp@ce-netで番号検索すると、これのファミリーのヨーロッパ特許が表示されます。EP0541372というのがそれです。ただ同じ番号のものが4つも並んでいますね。これは何を意味するのでしょうか。

 ヨーロッパ特許は日本やアメリカとちがって、公開時の番号と登録時の番号が同じで変わりません。公開番号が付くと、その件の審査が終わって特許になったときの特許番号も同じになります。ただ公開公報なのか登録公報なのか区別がつかなくては困るので、番号の後ろにA1とかB1というアルファベットと数字を付けて区別しています。Aは審査前の公開公報を意味し、Bは登録後の登録公報を意味します。

 以前にも触れたことがありますが、ヨーロッパには欧州特許条約という条約があってこれの締約国で特許を取りたいときは、ヨーロッパ特許庁というところに1件の出願をすれば、ここで審査がなされ、これにパスすれば希望の国で特許が取れるという仕組みがあります。各国に直接出願し、各国の特許庁で審査してもらうこともできますが、多くの国で権利を取得したい場合は、1回の出願で済むヨーロッパ特許の方が楽なのは言うまでもありません。面積も小さく、人口も少ない国が多いヨーロッパでは合理的なシステムと言えます。30カ国弱の締約国と旧ソ連圏の国などの拡大国と呼ばれる数か国がこの条約に加盟しています。

 日本の特許制度はアメリカの制度よりもこのヨーロッパの制度に似ていますが、日本にはない制度もあります。その一つが出願された全件について先行技術の調査が行われ調査報告(サーチレポート)が出されることです。このサーチレポートはもちろん出願人に通知されますが、公開もされます。先程のEP0541373A3を見てください。2ページ目の表がサーチレポートです。特許2件と学術論文3件が挙げられ、関係する箇所まで示されています。Categoryという左端の欄が各文献の位置づけを記号で示しています。記号の意味は下の欄に書かれていますが、XとかYは関連の深い先行技術で、後で拒絶理由として引用される可能性がある文献です。

 A2を見ていただくとこれが公開公報であることがわかります。先行技術調査は公開前までに行われ、サーチレポートは通常、公開公報と一緒に公開されます。このときはA1という記号がつきますが、この件のようにサーチレポートが何かの理由で遅れたときは、明細書などとは別に公開され、A2とA3という番号がつきます。B1は登録公報です。

 この件にはB2という公報もついています。ヨーロッパ特許には異議申立制度があります。B2というのは異議申立によって補正された後の内容を掲載する公報です。B2に出くわすことはそうはないのですが、なかを開いてみると変更された部分が太字で示されているのがわかります。

 少し公報の中身を見てみましょう。A2(公開公報)をまず開いてみます。1ページ目は左上にヨーロッパ特許庁のロゴマークがあり、右側に公開番号が記されています。順番はアメリカと違いますが、出願日や優先権主張の対象案件番号、出願人、発明者などが同様に記載されています。アメリカにはなかった項目としては”Designated Contractiong States”というのがあります。これはいわゆる指定国で、特許を取得したい締約国です。出願時に取りあえず指定し、後で変える(減らす)こともできます。この件ではドイツ(DE)、フランス(FR)、イギリス(GB)、オランダ(NL)が指定されています。

言語は英語です。日本からの出願はまず英語でなされると思いますが、ヨーロッパ特許庁はフランス語とドイツ語でも出願を受け付け、出願された言語のまま公開します。図面が最後に載っている点は日本の公報に近いですが、クレームはやはり明細書が終わったあとの最後に記載されていて日本とは違います。

 クレームは25項まであります。アメリカは公開公報がなかった(現在はありますが)ので、出願時のクレームがどうだったかわかりませんでしたが、多分これと同じだったと思います。基礎出願である日本出願3件分を組み込んだクレームになっています。

 つぎにB2(最終的に確定した登録公報)を開いてみましょう。クレームをみると、英語の他にドイツ語とフランス語のクレームが付いています。ヨーロッパでは登録になると、クレームだけ英独仏3カ国語で公報に掲載することになっています。クレーム数は減っていませんから、出願時とほとんど同じ内容が特許になったということになります。結果的には日米欧のうち、ヨーロッパで一番広く権利になったということが言えます。

 このように審査結果が国によって異なることはよくあります。必ずしも審査のミスではなく、各国の審査の基準のちがいや各国の先行技術調査のやり方のちがいによってこのようなことが起こります。でも出願人としてはどっちを信じればよいのかわからず困ったことです。他の国では拒絶になったクレームが、ある国では権利になった場合には、後でそのクレームは無効になる恐れがあるので、権利を主張しにくい面があります。他人の権利侵害を訴えたところ、他国で拒絶の理由になった先行技術を証拠として出され、権利が無効になってしまうことがあるからです。

 逆に一旦、拒絶が確定してしまうと、そのクレームを復活させる途はありません。他国で権利になったからといって、審査が明らかに違法に行われたのでない限り、権利が戻ることはありません。審査官が誤認をしているような場合はとことん不服を申し出て争う必要がありますが、費用や労力の点から諦めてしまうと取り返しがつかなくなります。

 ヨーロッパ特許庁で権利が認められた特許は、各指定国の特許権となります。したがって権利侵害に対する訴えなどは各国の司法当局に対して行うことになります。ここまで統一されているわけではありません。

 審査自体もまだ各国に直接出願された件については各国で行っています。しかしヨーロッパ各国でそれぞれ審査してそれぞれ違う結果になってはヨーロッパ全体の利益にならないということから、このヨーロッパ全体の特許を一括で審査する制度ができたものと思われます。

 ここから当然出てくるのは世界全体で一括審査をする制度を作ろうという考え方です。各国がそれぞれ先行技術調査をして審査を行うのは無駄も多いからです。しかしヨーロッパ内とは違って世界全体となるとなかなか利害が一致せず、そのような構想はあっても実現にはまだ遠そうです。ただそれへの一歩として、特許協力条約という国際条約があり、国際出願という制度ができています。前回これの説明を予告しましたが、次回にずれ込んでしまいました。

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