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zoom RSS MOS電界効果トランジスタとは

<<   作成日時 : 2006/04/16 20:13   >>

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 まずはじめにMartin M. Atalla氏が発明者の米国特許3056888号(以後、888特許と略称します)を見ながらMOS電界効果トランジスタとはどのようなものかを説明していきます。

 888特許をまずざっと見てみましょう。最初のページにいきなり図面が出てきます。現在のアメリカ特許も書誌事項が書いてあるフロントページのすぐ後に図面が入っていますが、この時代はいきなり図面です。もっとも図面のページにも特許の番号や発明者、発明の名称などの書誌事項は書かれていますので、図面は明細書とは別の書類という考え方で、前にあろうが後にあろうが順番は関係ないのでしょう。

 続く3ページが明細書とクレームです。最初に必要最小限の書誌事項があり、その後に明細書の本文となりますが、現在のように項目分けもなく、ベタ書きになっています。でも中身を見ると書かれている順番は現在のアメリカ特許と同じです。発明の詳細な説明の後にクレームがあります。一番最後に参考文献としての特許が書かれていますが、これは現在ではフロントページに書かれています。因みに参考文献の特許は1件のみですが、トランジスタの発明者の一人のBardeenの特許が挙げられています。

 さてこの888特許の発明の名称は”Semiconductor Triode”です。Triodeとは何でしょうか。発光ダイオードのところでダイオード(Diode)は2本足、つまり2極の素子のことだと説明したと思います。Triodeのtriは3人組のトリオと同じ3を意味し、Triodeは3極、3本足の素子のことです。

 最初から6行目くらいのところに”vacuum tube triode”,つまり3極真空管という言葉が見えますが、この特許が出願された1960年頃はまだ真空管の全盛期でした。最近でもオーディオファンのなかには真空管アンプの音を懐かしんでいる方がいるようですが、当時はラジオやアンプなどの身の回りの機器だけでなく、通信機などもすべて真空管が使われていました。当時の電子技術者は真空管を熟知していたので、新しく登場したトランジスタを理解するのに真空管とどうちがうかとう考え方をしたのです。この特許の最初の部分もそのような当時の雰囲気を感じさせます。画像

 MOSトランジスタがどのようなものかはFig.1に示されています。まず3極に当たるのは3本の線がつながっているアノード14、カソード13、グリッド17です。この3極の名前はまさに3極真空管と同じですが、その後別の呼び方が定着しています。

 少し3極真空管について説明しておきましょう。図をみて下さい。3極真空管は中を真空にした容器(普通はガラス管)のなかに金属板のアノード(陽極)とカソード(陰極)を入れてあります。そしてアノードとカソードの間にグリッドが置かれています。グリッドとは格子という意味ですが、要は金網です。カソードのそばにはヒータがあって加熱ができるようになっています。金属を加熱すると電子が飛び出します。カソードに対してアノードにプラスの電圧をかけておくと、飛び出した電子はマイナスの電荷をもっているので、アノードに引き寄せられて空間を飛行します。この電子の飛行が空気中の分子にじゃまされないように管のなかは真空にしてあるのです。画像

 グリッドはどういう役割をするのでしょうか。グリッドにはカソードに対して少しマイナスの電圧をかけます。そうすると電子は反発されて押し戻されます。グリッドがアノードと同じような金属板であると、電子は行き場を失ってしまいますが、グリッドが金網であることがミソです。電子はグリッドで反発されて押し戻されますが、グリッドが金網で穴が開いているため、勢いのついた一部の電子はこの穴を通り抜けてアノードに到達することができます。このグリッドの電圧を変えるとアノードに到達する電子の量が変えられるのです。ということはアノードにもカソードにも触れていないグリッドの電圧によってアノードとカソードの間を流れる電流がコントロールできることになります。これが3極真空管の原理です。例えばグリッドに小さな音声信号をつなぐと、その信号にしたがってアノードとカソードの間に大きな電流を流すことができます。これがアンプ(増幅器)です。

 トランジスタでは電子は真空中ではなく、固体(半導体)中を流れるので、真空管とはまったく原理がちがうのですが、アノードとカソードの間を流れる電流をグリッドの電圧で制御できるところはよく似ています。トランジスタの構造はFig.1に示されています。半導体基板(ウェハといいます)12はやや抵抗の高いp型シリコンです。アノード14とカノード13の部分は部分的にn型になっていて抵抗を低くしてあり、ここに金属の電極22、21がつないであります。半導体(シリコン、Si)の表面は酸化されて二酸化珪素(SiO)膜15が作られています。SiOは絶縁体ですが、この膜の上にグリッド17となる金属電極が付けられています。なお、アノードとカソードの電極はSiO膜に穴を開け、半導体に直接、金属電極が接触させてあります。

 固体では真空管のようにアノードとカソードの間に金網を入れることはできないので、絶縁膜の外側から電圧をかけてカソードからアノードに向かって流れる電子を外からコントロールしようというわけです。このような考え方は単に真空管のまねごとではなく、半導体独自の考え方と言えます。

 最後に今まで何も説明しなかった「MOS」の意味ですが(まだ888特許のなかでは使われていませんが)、これはMetal-Oxide-Semiconductorの頭文字をとった略語です。金属−酸化物−半導体の構造を示したものです。絶縁膜は酸化物とは限らないので、より一般的にいえば、金属ー絶縁体(Insulator)−半導体(MIS)の方が正確です。上記のように888特許のなかですでにSiとその酸化物のSiOの組み合わせが例として説明されていますが、現在でもこの組み合わせ以外に実用的に使われている材料はありません。このためMISトランジスタはあまり使われず、MOSトランジスタという語が広く定着しています。

 次回はもう少しMOSトランジスタの原理に立ち入ってみます。

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