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zoom RSS トランジスタを使った強誘電体メモリー

<<   作成日時 : 2006/12/10 12:15   >>

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 強誘電体の分極はそれ自体、記憶作用をもっています。しかしこれを広く応用するためにはやはり既存の半導体集積回路のなかに取り込んでいく必要があります。具体的にはシリコンを使ったMOSFETと組み合わせることを考える必要があります。このような提案は1988年に初めて行われました。

 トランジスタをスイッチとして使い、強誘電体の記憶作用を利用したメモリーを最初に提案した(と思われる)特許を紹介しておきます。1988年に出願された特許2674775号です。出願したのはアメリカのラムトロン社です。1988年というのは日本に出願された年でアメリカでは1年前の1987年に出願されています。

 最初に強誘電体の基本的な特性が説明されていて、電圧(電界)と分極の関係が行き帰りで同じところを通らないことを示す前回載せたのと同様な図が第1図に示されています。
行き帰りが違うこのような特性をヒステリシスと言います。

 そして分極がもっとも大きいときを「1」、小さいときを「0」とすればメモリができることも書かれています。この時点で第2図に示されているような強誘電体を挟んだコンデンサをそのままメモリセルにしたメモリはすでに提案されているとして、アメリカ特許が何件か引用されています。

 このようなコンデンサだけをそのまま使ったメモリにはいろいろ問題があることが書かれています。やはり書き込みに当たる分極を反転させる電圧と読み出しのための電圧の設定が微妙であり、読み出した後に情報の書き込みをしなければならないという難点があげられています。また低電圧でも何度か加わると、分極が変化する場合があることも記されています。

 これらの問題点を解決するため、トランジスタと組み合わせることが提案されています。図Aは特許図面の第4図から一部だけを抜き書きしたものです。この回路は前に説明したDRAMとまったく同じです。DRAMは常誘電体のコンデンサでしたので、電圧をゼロにすれば分極もゼロになり、記憶も消えてしまいましたが、強誘電体なら電圧をゼロにしても分極は消えずに保たれますので、同じ回路でも不揮発性メモリが実現できることになります。画像

 記憶情報の書き換えはDRAMと同じように、ワード線66から選択するMOSFET56のゲートに電圧をかけてオン状態とし、ビット線60からソース−ドレイン回路を通してコンデンサ52に電圧をかけて分極させます。読み出しも基本的にはDRAMと同じで、1と0に対応する2種類の分極の状態をオンにしたMOSFETのドレイン電圧から判定して行います。書き換えは分極の反転によるわけですが、電圧をかけてから分極が起こるまでの時間は非常に高速で、DRAMと同じような早さをもっています。浮遊ゲートを使った不揮発性メモリの書き換え速度はこれよりずっと遅いので、強誘電体メモリに対する期待は大きかったのです。

 ではなぜ広く使われるようになっていないのでしょうか。これはやはり強誘電体材料の難しさにあるように思います。強誘電体の分極特性は結晶の質によって大きく影響を受けます。石ころとしての、つまりバルクの強誘電体結晶はきれいなヒステリシス曲線の特性を示します。しかし半導体メモリとしてトランジスタと一緒に作り込むには強誘電体を薄膜にする必要があります。

 図Bは同じラムトロン社の後続の特許2918284号に載っている素子構造の例です。図Cが対応する部分の回路図です。ソース18とドレイン14がSi基板30の表面に作られMOSFETとなっています。ソースの上にあるPZTと書かれた32が強誘電体薄膜です。PZTというのはジルコン酸チタン酸鉛というよく知られた強誘電体で、ジルコニウム、チタン、鉛という3種類の金属を含む酸化物です。

 この特許では溶液を塗布して作る薄膜の形成方法が書かれていますが、最近では気相の成長方法も使われています。しかし薄膜にすると結晶の質が悪くなってしまうのは否めません。強誘電体としてよく知られているのは、PZTの他、チタン酸バリウムなど酸化物が多いですが、これらはSiやGaAsなどに比べるとエピタキシャル成長が難しく、また図Bのように電極26a、24aの間に作れる強誘電体膜はせいぜい多結晶のはずで、良質の単結晶に比べると強誘電特性はどうしても劣ったものになります。また何度も分極の反転を繰り返しているうちに特性が劣化してしまうこともあるようです。

 このようにSiとSiOと金属膜、それにせいぜい多結晶Siだけで作られているMOSFETに違った種類の材料を持ち込むのはかなり大変なことです。これが強誘電体メモリが期待されながらなかなか普及しない原因のように思います。

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