石くれと砂粒の世界

アクセスカウンタ

zoom RSS 薄膜トランジスタ

<<   作成日時 : 2007/02/12 12:47   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

 今回から薄膜トランジスタの話に入ります。薄膜トランジスタというよりTFTという方が通りがいいかもしれません。TFTはThin Film Transistorの略ですが、数年前にはノートパソコンの液晶ディスプレイの謳い文句としてこの語を広告等でよく目にしました。今やデスクトップ型パソコンの液晶ディスプレイや大型の液晶テレビが普及し、これらではTFT方式は当たり前になっています。

 液晶は液体ですからガラスの容器(セル)に入れ、これに電圧をかけると光を通したり、通さないようにしたり、切り換えることができます。ディスプレイにするにはこの液晶のセルを区分けして多数の画素とし、一つ一つにかける電圧を切り換えて画像を表示します。一つ一つにかける電圧の切り換えは線状の電極を縦横に交差させて多数並べればできるのですが、一つ一つのセルにスイッチを設けた方がよりよいのです。何がいいかというとコントラスト、つまり明るいときと暗いときの差が大きくなり、画像がくっきりすること、むらが少なくなること、切り換えを高速でできることなどがあります。

 碁盤の目のようにスイッチを並べると言えば、これまでに説明した半導体メモリやCMOS撮像素子などでMOSFETを使って行われていました。ディスプレイでも基本は同じです。ただ撮像素子などでは素子の大きさはせいぜい数cm角程度でしたから、シリコン結晶の基板にMOSFETを集積すれば実現できました。ところがディスプレイの場合、パソコン用でも10数インチと大きくなりますから、これをシリコン結晶基板で作ることは難しく、できたとしてもものすごく高価になってしまいます。また液晶ディスプレイの場合は基板が光を通す材料である必要があります。となると大きな面積のものを容易に得られ、かつ透明なガラスなどを基板にするのが望ましいことになります。

 このようにガラス基板などの上に半導体の薄膜を作り、そのなかにトランジスタを作り込んだものが薄膜トランジスタ(TFT)です。TFTは普通はバイポーラトランジスタではなく、電界効果トランジスタで、これまで説明してきたMOSFETと同じような原理で動作します。

 ところが実用的なTFTはなかなかできませんでした。ガラス基板は結晶でなく非晶質ですから、その上にシリコンの膜を作っても、結晶にはならず、非晶質になってしまいます。このような膜にp型やn型の不純物を入れても、電流がよく流れるp型やn型のシリコン膜はできませんでした。そこでまず初めに作られたTFTはシリコンではなく、硫化カドミウム(CdS)などのU−Y族半導体を使ったものでした。これを最初に提案したのはアメリカのRCA社のワイマー(P.K.Weimer)でした。1961年に発表され、アメリカや日本に特許が出されています。日本特許は特公平40-16459号です。画像

 時期的にはMOSFETの発表と同時期かむしろ早いくらいで、薄膜トランジスタの発想はMOSFETに触発されたものと言うより、結晶基板を使うMOSFETとは違う考え方が独立、並行して考案されたと考えるのが正しいと思われます。つまり電界効果を使った固体素子の実現が模索されていた時代に異なる発想が提案されたわけです。

 特許図面でTFTの構造を説明しましょう。ガラスなどの基板10の上にまず2つの金属電極12、14を付けます。その上にCdSの薄膜を付けます。CdSは真空中で加熱すると比較的低温で簡単に蒸発し、基板の上に半導体膜16ができます。しかも抵抗が低く電流が流れる膜ができます。特許にはゲルマニウムや珪素(シリコン)等々の半導体でもよいと書かれていますが、実際にはうまく作れなかったはずです。さらにこの半導体を絶縁膜18で覆います。特許ではフッ化カルシウム(CaF)の例があがっていますが、この材料も比較的低温で膜を作れるので選ばれたと思います。最後にこの絶縁膜の上に金属電極20を付けます。この金属電極20は下にある2つの電極12、14の間に来るように位置を合わせます。

 この構造をMOSFETと比較すると、電極20がゲート電極で、電極12、14がソース、ドレイン電極に相当していることがわかります。MOSFETではソース、ドレインの半導体領域は不純物をドープして抵抗の低い領域を作りますが、このTFTではそのようなことはしていません。半導体膜は付けたままで何も加工されていません。これはしようと思ってもできないので、やむなくそのまま使っているのです。特許のなかにも書いてある通りCdSの膜はn型の半導体になります。しかしこれをp型にするのはむずかしいのです。

 このTFTがトランジスタとして動作したデータが特許には載っています。しかし特性は結晶シリコンを使ったMOSFETには遠く及ばなかったのです。その後、日本も含め研究開発は行われましたが、よい成果は出ませんでした。やはりシリコンを使った方がよいのではという考えで、なんとか薄膜の結晶シリコンを得ようという研究も行われました。シリコンの薄膜を作った後、熱処理などで結晶化しようとする試みなどが行われましたが、かなり多くの研究が行われたのは、サファイア基板を使ってその上に結晶シリコン膜を成長させようというものでした。SOS(Silicon on sapphire)技術と呼ばれています。サファイア基板はその後、青色発光ダイオードのGaNを成長させる基板として使われましたが、大型基板を得るのは難しいので、ディスプレイ用基板として使うのは難しかったと思われます。

 そうこうしてTFTの実用化は難航していましたが、最初のTFTの提案から20年近く経った1970年代の終わりになってようやく実用化に向けて大きな転機を迎えました。これについては次回に。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
薄膜トランジスタ 石くれと砂粒の世界/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる