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zoom RSS 低温ポリシリコン膜

<<   作成日時 : 2007/03/21 23:41   >>

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 水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)を使ったTFTはアクティブマトリックス液晶ディスプレイに応用され実用化されています。しかし以前にも触れたようにa−Si・TFTにも問題がないわけではありません。もっとも大きな不満は移動度が小さいためにスイッチング速度が遅いということでしょう。液晶も分子が向きを変えて画像を切り換えるので動作は決して速くなく、その切り換えだけならa−Si・TFTでも充分使えます。画像

 しかし非常にたくさんのスイッチを駆動する周辺のトランジスタは高速で動作することが要求されます。このため駆動用トランジスタ(IC)は別に用意し、TFTと配線を繋ぐ必要があります。TFTが高速になれば、この駆動用のトランジスタの一部もガラス基板上に載せてしまうなど、いろいろな展開が期待できます。またa−Si:Hという物質は強い光を受けていると変質してしまう場合があるという難点もありました。

 これらの不満点を解決できれば、他の材料でTFTを作った方がよいわけです。a−Siと似た材料で従来から知られていたのが多結晶シリコンです。Poly-crystalline siliconを略してポリシリコンと呼ぶことが多いようです。ここではa−Siに対応してp−Siと書くことにします。

 このp−Siは結晶シリコンを使うMOSFETの世界では以前から電極材料などとして使われてきました。メモリー素子で浮遊ゲートに使われているのもこれです。p−Siの移動度は、a−Siに比べると10倍から100倍も大きく、結晶シリコンの数分の1くらいにまで迫っています。このためスイッチング速度はかなり高速化できます。

 問題は作り方にありました。シリコンを非晶質でなく小さな結晶の集まりの多結晶にするには高い温度が必要です。シリコン原子が基板表面に飛んできてくっついたとき、温度が低いとそこから動けません。結晶になるためにきちんとした並びになろうとすると、基板上で原子が動いて所定の位置に落ち着く必要があります。シリコン原子の場合、1000℃くらいの高温でないと動けないのです。多結晶といってもその結晶の大きさ(結晶粒径と言います)はいろいろです。結晶粒径が小さくてもよければ、やや低い温度でもよいですが、移動度も小さくなってしまいます。

 MOSFETに使われていたp−Si薄膜は化学気相成長法(熱CVD法)で作られていました。a−Siの場合のプラズマCVD法と似た方法ですが、プラズマは使用せず加熱でシランを分解する方法で高温にする必要がありました。シリコン単結晶を基板とする場合は1000℃くらいの高温は気にしなくてもよかったのですが、ガラス基板の場合はそうはいきません。普通のガラスは1000℃にもなると融け始めてしまいます。1000℃でも耐えるガラスというと石英ガラスくらいしか普通に入手できるものはありません。

 石英ガラス基板でもよいならば、多結晶シリコン膜を作る技術はすでにありましたから、TFTを作ることも可能でした。実際にp−Si・TFTを使った液晶ディスプレイはa−Siのそれより早く1983年頃には実現しています。ただし大きさは2インチ(約5cm)程度でした。石英ガラス基板では大きなものを作るのは困難で、これ以上の進展は望めません。

 そこで何とか普通のガラス基板が使えるような低温でp−Si膜を作るための研究開発が盛んに行われました。1990年代になって実用になってきた方法はレーザ照射処理によるものです。これはa−Siを低温で成長し、あとでレーザを照射して結晶化を行おうというものです。特許の一例を挙げておきます。

 三洋電機が1993年に出願した特許3357707号はレーザ照射によるp−Si膜の形成方法について述べています。この特許ではプレズマCVD法でa−Si膜をまず作りますが、a−Si膜に含まれる酸素や水素がその後の結晶化の障害になるとして、事前に熱処理してこれらを除去する必要があるとしています。ただしこの熱処理も600℃以下の温度に抑えなければ意味がありません。

 その後、レーザ光を照射します。レーザ光を当てるのはやはり加熱してシリコンを一度融かすためです。強いレーザ光のエネルギーによってアモルファスシリコンの表面が融け、それが冷えて固まるときに結晶化が起きます。光が表面付近で吸収されてしまえば、融解するのは表面付近だけでこの部分は高温になりますが、基板の温度はあまり影響を受けないで済みます。基板を低温に保ったまま、結晶化だけを進めることができるわけです。

 使われているレーザはエキシマレーザと言われる紫外線レーザです。このレーザは連続発振するものでなく、パルス光を出します。ボタンを押すと1回パチンと光る、そんなイメージで動作します。1回の発光を1ショットと言い、2ショット、3ショットと数えます。この特許では図のようにショット数が増えるごとに結晶粒径が大きくなるとしています。基板を400℃に加熱し、120ショット、レーザを照射すると、結晶粒径は4.5μmになったと書かれています。

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