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zoom RSS AlGaAs/GaAsヘテロ接合と液相エピタキシャル成長法

<<   作成日時 : 2007/10/21 20:11   >>

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 ヘテロ接合の発光素子への応用については1960年代前半にすでに提案されていました。ただし具体例としてはゲルマニウムやシリコンと化合物半導体の組み合わせが提示されており、GaAs/Siの組み合わせを除くとその後、実際に活用されたものはほとんどありません。

 これはひとえに当時まだ化合物半導体の結晶薄膜を成長させる方法が確立されていなかったことによっています。1960年代の後半になって液相エピタキシャル成長法という技術が確立されるに及んで、実用的な発光素子に利用できるヘテロ接合が形成できるようになりました。

 AlGaAs/GaAs系の発光ダイオードが初めて作られた頃の特許を例として取り上げてみます。本当に一番最初かどうかはわかりませんが、IBM社が早い時期に提案していたのは事実です。1967年にアメリカで出願され、日本には翌1968年に出願された特公昭44-13097号は液相エピタキシャル成長法によるAlGaAsの成長に関するIBM社の特許です。発明者はルプレヒトとウッドールという人です。画像

 液相エピタキシャル成長法(略してLPE法)は簡単に言えばつぎのような方法です。結晶を成長させる代表的な方法に、種結晶をその結晶の原料の融液や溶液に漬けて種結晶のまわりに結晶を成長させるやり方があります。LPE法はこれと原理的には同じ方法ですが、エピタキシーですので、種結晶というより平板状の結晶基板上に結晶薄膜を付けるのが目的で、この点では少し異なったところがあります。

 この特許で示されている装置は図のようなものです。その後装置は改良されていきますが、それは後で説明することにして、ここでは図の装置に沿ってLPE法を説明しましょう。結晶の成長は石英ガラスの管10のなかで行われます。管のなかにはるつぼ16が置かれ、このなかに原料18が入れられます。ここではAlGaAsを成長させるので、AlとGaとAsの原料を入れます。

 図には加熱装置は書かれていませんが、るつぼを加熱して原料を融かします。このときガラス管のなかにはアルゴンなどの不活性ガスを入れます。空気などが入っていると原料が酸化してしまいますし、真空にすると蒸発しやすい砒素はるつぼの外へ蒸発してしまう恐れがあるからです。

 GaAs基板34は細い石英ガラス管20の先に取り付けられます。図では基板はすでに原料融液に漬かっていますが、この管20は上下できるようになっていて、原料融液がよく融けるのを待ってから基板を降ろして図のように融液に漬けます。

 さてここで重要なことはただ原料融液のなかに基板を漬けても結晶は成長してくれません。どうするかというと融液の温度を一定速度でゆっくり下げます。そうすると基板上に結晶が成長します。これはどういうことかというと氷と水を考えて下さい。0℃では氷と水が共存した氷水の状態になりますが、温度が少し上がると氷は融けて水が多くなります。逆に温度が下がると氷が増えていきます。

 GaとAsが融けたところに固体のGaAsを漬けた場合も同じことです。そのときの温度が高すぎれば基板が融けてしまいますし、低すぎれば融液全体が固まってしまいます。最初、固体状態(固相といいます)と液体状態(液相といいます)が共存するように温度を選びます。そしてその温度から少しずつ温度を下げると固相の方へバランス点が移っていき基板上の結晶層が増えていきます。つまり結晶が成長してくることになります。実際の例としては最初、950℃に設定し、そこから1分間に1度以下という非常にゆっくりした速度で温度を下げると書かれています。

 さらに複雑なのは、この場合、融液の方にはAlも入っているということです。発明者は温度を下げる速さを変えるとAlが結晶に取り込まれる割合が変わることを見つけたと言っています。温度を下げる速さを早くするとAlは取り込まれにくくなります。上記のように最初非常にゆっくりと温度を下げて結晶を成長させると、Alが多く入った結晶が成長しますが、ある時点で温度を少し早く下げるようにするとAlの割合が減ってGaAsに近い結晶が成長します。つまりこの方法でAlGaAs/GaAsのヘテロ接合が形成できることになります。もちろんAlGaAs同士でAl組成の違う組み合わせもできます。

 なお、pn接合を作るには不純物を添加します。n型なら例えばテルル(Te)、p型なら亜鉛(Zn)を使います。ガラス管20の中に上からこれらの不純物の原料を落としてやると口30のところから融液18のなかに落ちます。この装置では一旦落として加えた不純物を取り除くことはできませんが、最初に入れた不純物の量を上回る量をつぎにいれればpn接合は作れます。pn接合ができれば発光ダイオードも作れることになります。

 この特許の装置はまだまだ初期的なもので、これでは複雑な結晶層を作ることは難しいですが、その後装置は改良されてLPE法は代表的な結晶成長方法の一つになっていきます。

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