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zoom RSS 半導体レーザ実用化に向けての課題

<<   作成日時 : 2007/11/18 15:39   >>

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 1970年に半導体レーザは室温で連続的に動作することが確認されましたが、それに至る経過をこれまでお話してきました。これに続く1970年代は半導体レーザを実用的な光源として使うことができるようにする努力がなされた期間です。ということは1970年に連続動作が達成されたからといってすぐに実用化ができたわけではなかったのです。

 実用化するにあたっていろいろな問題が発生し、それらをひとつずつ解決していかなければなりませんでした。今回はどんな問題が起きたのかを整理してみます。

 第1番目は発光させてしばらくすると壊れてしまうという問題でした。いわば「突然死」です。現在製品になっている半導体レーザでも決められている範囲を越えて大きな電圧をかけたり、大きな電流を流したりするとあっという間に壊れてしまいます。ですがレーザとして普通に使う程度の電流で動作させていて短時間(数分から数時間)で壊れてしまうようでは実用的に使うことはできません。

 この原因は大体が半導体結晶の欠陥にありました。結晶を作る技術が未熟だったり、基板との格子定数が不整合だったりすると、結晶のなかで原子の並びが乱れた部分ができやすくなります。こういう欠陥のある結晶に電流を流すと、欠陥があるところに電流が集中して結晶が融け、これが結晶全体に広がって発光が止まってしまうという故障が起きることがあります。

 これを解決する手段は良い結晶を作ることに尽きますが、半導体レーザは他の半導体デバイスに比べて大きな電流を流して使いますから、結晶の加熱を避けるために熱を逃がす工夫をする必要があります。ヒートシンクと呼ぶ熱を良く伝える材料の台座の上に半導体レーザを貼り付けて使うことは普通に行われています。

 第2番目の問題はすぐに壊れるというわけではないのですが、段々に特性が悪くなってしまうというものです。具体的に言うと同じ電流を流しているのに時間が経つと段々光が弱くなってしまうような問題です。光の強さを一定にするためには電流を増やせばよいのですが、そうすると素子はより加熱されることになり、劣化が早まってしまいます。画像

 図Aは電流Iと発光強度Lの関係を示したI−L特性ですが、このような劣化が起こったときのI−L特性変化を示しています。初期特性が赤色、時間経過後の特性が青色で示されていますが、時間経過とともにしきい電流値が大きくなり、またI−L特性の傾きが緩くなっています。この傾きのことを微分量子効率と呼びますが、電流を増やしたときにどのくらい光の強度が大きくなるかを示し、大きい方が特性は良いと言えます。

 この原因はいろいろあると思いますが、代表的なものは結晶から光が出る結晶の端面が悪くなってしまうことです。結晶の表面では原子の並びが途切れているので、欠陥と同じように結合手が空いています。そこを通って電流が流れる場合、発光はせずに加熱だけが起こるようになります。そうなると少しずつ結晶内部に欠陥ができていき、レーザの特性を悪くしてしまうことが考えられます。

 これを防ぐためにはレーザ光の出口となる端面に保護膜を付けたり、端面付近が加熱されないような構造にするなどの工夫がなされます。

 第3番目は壊れるというのではなく、特性が不安定になるというものです。図BのようにI−L特性が途中で折れ曲がったりします。これをキンクと言いますが、電流を増減させたとき、いつも同じ特性にならず不安定な現象です。またこれが起こるとき端面を観察していると光っている部分が少し動いたりします。これによってレーザ光の方向が変わったりしますので、実用上は困ったことになります。

 この原因は結晶の乱れとかではなく、電流を増やしていくと起こる変化と考えられています。つまり電流が増えていくと活性層を流れる電流の様子が変わっていきます。例えば段々電流が広がって流れるようになると、発光も広い範囲で起こるように状態が変わっていきます。また屈折率も変わるので、発生した光が閉じ込められる範囲も変わっていきます。このようなことが原因で電流を増やしても光の強度があまり増えなくなったり、発光する位置が変化するようなことが起こります。

 これは半導体レーザの構造を、電流を増やしても流れる経路が変化しないように工夫することで防ぐことができます。

 次回以降、とくに2番目と3番目の対策としてなされたことを例によって特許をみながら辿ってみることにします。
 

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