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zoom RSS 電流の閉じ込め

<<   作成日時 : 2007/11/25 23:05   >>

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 前回、第3番目の問題点としてあげたキンクの発生防止について先に考えます。これは電流を増やしていくと起こる変化と考えられています。活性層を流れる電流の様子は素子の構造に強く影響されます。

 基本的な半導体レーザの構造は図Aに断面を示すように活性層をクラッド層ではさみ、そのクラッド層の外側に電極を付けたものです。広い面積に電極を付けた半導体レーザをブロードエリアレーザと呼びますが、この構造では電流は広い範囲に流れますから、発光も活性層の広い範囲で起き、端面では横方向に幅広い範囲からレーザ光が出射することになります。画像

 このような構造では上記のような問題が起きやすくなりますが、それ以前に非常に大きな電流が流れてしまうので、連続的な動作をさせるのが難しくなります。そこでまず考えられるのは図Bのように上部電極を細く(ストライプ状などと言います)することです。こうすると確かに電流は電極から入るところで図Aの場合より狭い範囲に絞ることができます。

 しかし電流は半導体のなかを流れるにしたがって広がり、この広がり方は電流の大小によって変わります。平らな地面の上でホースの口から水を流したときに似ています。このような状態では活性層のなかで発光する部分も電流によって変わってしまいますので、端面の発光パターンも不安定になりやすいことになります。

 そこで考えられたのが狭い範囲に電流が流れる通り道を限ってしまおうということです。
ちょうど地面に溝を掘れば、そのなかにホースから水を流しても水は広がらずに流れていくのと同じことです。

 どうするかというと図Cのように電流が流れにくい抵抗の高い層を両側に作ってしまいます。これで電流の流れる部分は電流を増減してもあまり変わらなくなります。実際これによってキンクもかなり防ぐことができます。

 この抵抗の高い層を電流狭窄層などと難しい名前で呼びます。またこのような構造のレーザを埋め込みヘテロ構造(BH構造)と呼びます。この構造が開発された初期の頃の特許を挙げておきます。特開昭49-24084号は1973年に日立製作所から出願されていますが、この構造は同社が開発したものです。この特許には図Dのような構造のレーザの作り方が記されています。

 図Dのレーザの構造は5がn型GaAs基板で、その上にn型GaAlAs層4とp型GaAlAs層2に挟まれたGaAlAs活性層3のダブルヘテロ構造が形成されています。この3層の上にp型GaAs層を付けた後、図のように細い幅の部分を残して両側をエッチングして取り去ってしまいます。

 その後、この上にGaAlAs層6を液相エピタキシャル法で成長させ、細長い活性層を埋め込んでしまいます。ここで活性層はAlの成分が上下の層より少なくして、バンドギャップを小さくなるようにしないとダブルヘテロ構造としてのはたらきができませんが、これを埋め込むGaAlAs層6も活性層よりAlの成分を多くしておくと、活性層は上下左右をバンドギャップの大きい材料で囲まれた状態になります。このような状態になれば、上下の電極7,8は図のようにとくに細くしなくても電流は活性層の部分だけに集中して流れるようになります。

 また都合のよいことにこの構造では活性層の部分だけ屈折率が高くなりますから光も活性層部分に閉じ込められることになります。

 この特許ではこのような構造にすることでレーザのしきい電流値が低くなる効果があると書かれていますが、この時点ではまだキンクの防止にまでは話が至っていません。しかし基本的にこのような埋め込みヘテロ構造は実用的な価値の高いレーザとして広く使われるようになります。 

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