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zoom RSS 埋め込みヘテロ構造

<<   作成日時 : 2007/12/09 20:40   >>

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 前回、すでに埋め込みヘテロ構造(BH構造)についてお話しましたが、今回は後続の特許を紹介しながらもう少し追加説明をしておきます。初期の特許、1973年の出願の特開昭49-24084号(特公昭52-40958号)に続いて同じ出願人の日立製作所から塚田氏らを発明者とするBH構造に関する特許としては特開昭50-10985号(特公昭52-41107号)、特開昭50-119584号(特公昭52-48066号)などがあります。画像

 図Aは特開昭50-119584号に載っているBH構造の半導体レーザです。図Bはその断面図です。構造を簡単に説明します。n型GaAs基板5の上にn型Ga0.7Al0.3As層3、とくに不純物を入れていない(アンドープまたはノンドープと言います)GaAs層1、p型Ga0.7Al0.3As層2が積層されています。この3つの層の周りはアンドープGa0.7Al0.3As層4で囲まれています。これを今では普通、埋め込み層と呼んでいます。

 層6は絶縁膜で、p型GaAlAs層2の上部だけ取り除かれています。この層2の上部2bはp型不純物の濃度が高くなっていてその上に上部電極7が設けられています。基板5の下面には下部電極8が設けられています。

 書かれているサイズの例によると、活性層であるGaAs層1の厚みは0.5μm、幅は1μmで、共振器長(素子の長さ)は400μmです。このレーザのしきい電流は10mAと非常に小さくなっています。

 電流が流れる面積は400平方μm、すなわち4×10-6cm2ととても小さいですから、比較するためには1cm2当たりのしきい電流つまりしきい電流密度を求めて比較した方がよいです。10mAを4×10-6cm2で割ると、2500A/cm2(2.5kA/cm2)となります。BH構造でない電極がべたについたDH構造のブロードエリアレーザでもしきい電流密度は数kA/cm2になりますから、BH構造にすることによって電流密度はそれほど大幅には減りません。つまりレーザ発振、誘導放出を起こさせるにはこの程度の電流密度で電子、正孔を流し込む必要があるのです。

 しかし素子にはその一部分にだけ集中して電流が流れるようになりますから、実際に流れる電流は非常に小さくなります。無駄な電流は素子を加熱するはたらきをしますから、これが減ると素子は長く安定に動作できることになるのです。

 このようなBH構造の作り方についても前回簡単にお話しましたが、もう一度説明しておきます。作り方については特開昭50-10985号の方によく説明がされています。まず初めにGaAs基板5の上に3つの半導体層3、1、2を順に液相エピタキシャル成長法によって成長させます。前に説明したスライド式の装置を使います。

 その後、この3層を細長い部分だけに加工します。これはフォトリソグラフィー法によって細長い部分だけ残して他の部分をエッチングして取り除きます。このエッチングは硫酸と過酸化水素水と水の混合液によって行ったと書かれています。GaAsなどを溶かすにはどんな液がよいかは別に研究されていてこのような特殊な混合液(他の種類もある)がよいことがわかっています。

 この後、2回目の液相エピタキシャル法によって埋め込み層4を成長させます。細長く加工した部分の一番上の層はGaAlAsですが、Alが入った層の表面は酸化しやすく、エッチングをする過程で空気に触れると簡単に酸化してしまいます。ところが液相エピタキシャル法でGaAlAsを成長する場合、下地が酸化されているとその上には結晶が成長しないという性質があります。このため層2の上には2回目の成長では何も着かないという都合のよいことになります。また液相エピタキシャル法は下地にでこぼこがあってもできる表面は平らになるという性質もあり、埋め込み層を作るにはこれも都合がよいことになります。

 注意しなければいけないのは層2と3はAlを含んでいますからその側面には結晶が成長しにくくなります。ただAlを含んでいないGaAs表面には結晶がよく成長するので、この場合のようにGaAs基板が露出しているとうまく全体に成長が起こるとされています。しかし層2、3との界面に空洞などができていないかはよく注意する必要があります。

 この構造ができてしまえば、あとは表面にSiO2層をCVD法などによって付け、層2の表面になる場所だけフォトリソグラフィー法でSiO2層を取り除きます。この隙間から亜鉛などp型不純物をあまり奥まで入らないように拡散します。こうするとこの部分の抵抗が下がりますから上に付ける金属電極とうまくオーミック接触しやすくなります。拡散によらず初めから不純物濃度の高い層を付けておいてもよく、最近はその方が普通です。このような層をコンタクト層とかキャップ層などと呼びます。

 以上はGaAs、GaAlAsからできたBH構造の半導体レーザの例です。この場合、何度も言うようにAl組成が0.3でなく0.2でも0.4でもGaAsと格子整合しますので、問題ありません。電流の閉じ込めと光の閉じ込めに適するようにAl組成を選べばそれでよいわけです。

 しかし光通信の分野への応用に重要なInPをベースにした半導体レーザではピンポイントでしか格子定数が一致しません。このため素子の作り方も難しくなります。このInP系については後に説明するつもりですので、そのときまたBH構造についてもお話することになると思います。
 

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