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zoom RSS 屈折率導波型

<<   作成日時 : 2007/12/16 19:30   >>

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 前々回、前回と埋め込みヘテロ構造(BH構造)によって電流を狭い範囲に閉じ込め、かつ光も閉じ込めることができることを説明してきました。この構造では活性層は基板面に垂直な方向は層の厚みによって、基板に平行な方向は加工したストライプの幅によって画定されています。このような上下左右とも閉じ込め構造になっている光導波路を3次元導波路と言うことがあります。
 
 この3次元導波路を活性層としたBH構造半導体レーザは設計通りに作れば特性は非常に良いのですが、問題は作るのに手間がかかり、製法上の問題で特性が期待通りに出ない場合があるということです。その大きな原因は結晶成長が2回必要なことです。つまり活性層などの結晶成長をまず行い、ついでストライプ状に加工し、その後もう一度埋め込み層を結晶成長させることになります。

 このように結晶成長→加工→結晶成長という手順をとると作業が複雑になりますし、加工による悪影響があって2回目の結晶成長で欠陥の多い結晶しかできないような場合が出てきます。とくに加工が活性層という素子の最重要部分に関わるので影響が大きくなります。そこで加工→結晶成長か結晶成長→加工かのどちらかで素子が作れないかいろいろ工夫がされました。画像

 基板に先に溝を加工し、その中に活性層などの3次元導波路を作るという方法も考えられましたが、作り方に特殊な技術が必要な場合が多く、2次元導波路ではできないか検討がなされました。ここで言う2次元導波路とは層が基板に平行な面として広がっていてストライプなどに加工されていないという意味です。広く広がった層を活性層としてどうして光を閉じ込めるのかを特許を使って説明します。

 特開昭52-90280号(特公昭54-5273号)にその原理が説明されています。図Aに示すような構造は、基板12に溝を掘ってからクラッド層13、活性層14、クラッド層15と結晶成長を行う加工→結晶成長のタイプです。

 図中に富士山を横にしたような曲線が描かれていますが、これは光の強度分布を示しています。活性層14に光は閉じ込められますから、活性層14の部分の光が一番強くなりますが、光は上下のクラッド層にもかなり漏れ出る性質をもっています。

 ところが基板に溝が掘られている部分はクラッド層13bが厚く、その両側部分のクラッド層13aは薄くなっています。この薄くなっている部分では光はクラッド層13aを通り越して基板12内にも広がっています。基板の屈折率が高い場合には光はクラッド層で閉じ込めきれず外へ漏れてしまうことになります。電流についてはとくに閉じ込める構造はありませんが、18の部分に不純物拡散をしてこの部分だけ電流を流れやすくしていますから、光は主に中央部分で発生し、また光の増幅も光が強く閉じ込められる中央部分で強く起きます。したがってレーザ光はクラッド層の厚い中央部分に集中して発生することになります。

 クラッド層の厚みを変えるのは下側に限りません。図Bは基板は加工せずにクラッド層33、活性層34、クラッド層35を結晶成長し、上側のクラッド層35を中央部分を残して両側を薄く加工しています。結晶成長→加工のタイプです。この例では36の部分は半導体でこの場合は2回目の成長が必要になってしまいます。ただこの層は活性層に接していませんし、電流が流れる部分でもないので、BH構造の場合より結晶の品質は悪くてもよく、また半導体でなく絶縁膜を着けるだけの場合もあります。

 原理は図Aの場合と同様で、中央のクラッド層が厚い部分だけからレーザ光が発生することになります。

 この特許には書かれていませんが、図AのタイプはCSP型と命名されています。CSPはChanneled Substrate Planarの略で、溝を掘った基板で上層が平らなタイプという意味です。図Bのタイプはリッジストライプ型または簡単にリッジ型などと呼ばれます。リッジは溝の反対のうねを意味します。

 現在はどちらかというとリッジ型の方がよく使われていると思います。これはつぎのような理由によります。CSP型は基板に凹みがありますが、その名の通り上の層は平らです。前にも触れましたが、液相エピタキシャル成長法は下地に凹凸があってもそれを埋めて表面が平らになるように結晶が成長できる特徴をもっています。これと違って気相成長法では基板の凹凸にしたがって表面にも凹凸が残るように結晶が成長します。このため液相エピタキシャル法以外ではCSP構造は作りにくいのです。

 一方、最近のように非常に薄い層を積層するような構造が多用されるようになると、これを作るには液相エピタキシャル法よりMOCVD法のような気相成長法が適しています。そこで基板を加工して凹凸をつけることは避け、加工は結晶成長後でよいリッジ型がよく使われるようになっています。

 まとめるとBH構造では活性層の横方向も材料を変え屈折率の低い材料で囲んで光を閉じ込めていますが、CSP型やリッジ型は活性層は横方向には一様な材料とし周囲のクラッド層の厚みを薄くして光が漏れやすくしています。これでも光の閉じ込めは可能になりますので、これらすべてを含めて「屈折率導波型」の半導体レーザと分類しています。

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内 容 ニックネーム/日時
はじめまして。大学で半導体レーザーを研究しているものです。いつも参考にさせていただいています。
shimizu
2009/04/17 18:00

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