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zoom RSS 端面破壊と窓構造

<<   作成日時 : 2008/01/05 16:34   >>

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 5回ほど前に「半導体レーザ実用化に向けての課題」をまとめましたが、第1番目の課題として正常に動作していた半導体レーザが突然壊れてしまうという問題を挙げました。今回はこの問題に触れます。

 半導体レーザが実用化に向けて進み始めた初期には、結晶成長技術が未熟だったことなどのために欠陥を含んだ結晶ができてしまう場合も多く、こういう欠陥のある結晶に電流を流すと、欠陥があるところに電流が集中して結晶が融けてしまうというようなことが起きたかもしれません。

 現在では非常に品質のよい結晶を作る技術が確立し、このような問題はほぼ解決されています。しかし大きな電流を流し強い光を得ようとする場合、いかに品質のよい結晶でも限界があります。その限界に近い状態になると突然の破壊が起きることがあります。

 このような破壊の原因はほとんど半導体レーザから光を取り出す端面の破壊にあることがわかっています。端面では電極から流れ込む電流の一部が結晶表面を伝わって流れやすくなっています。この分の電流は発光に寄与しないので、端面付近では誘導放出が起きにくくなり、光吸収が増加することになります。光吸収が増えると端面部分の温度が上昇します。バンドギャップエネルギーは温度が上がると小さくなる性質があり、ますます光は吸収されやすくなり、温度はさらに上がるという悪循環に陥ります。そしてついには端面の結晶が融けてしまう事態になります。

 融解した部分は電流を止めて発光が無くなれば、冷えて固まりはしますが、元の結晶には戻らず、再び電流を流したときに動作したとしても発光の強度は大きく低下し、しきい電流など特性も悪くなってしまいます。最悪の場合には再び発光できなくなります。

 このような現象を光損傷といい、英語ではCatastrophic Optical Damage、略してCODと呼んでいます。”Catastrophic”とは「致命的な」という意味で、回復不能な損傷であることを示しています。

 この端面の損傷を起きにくくすれば、半導体レーザを高い出力でも安定して使うことができます。そのための工夫は現在でもいろいろ行われていますが、基本的な考え方は端面付近での温度上昇を避けるため光吸収をできるだけ減らすことです。具体的にどうするかを初期の特許で紹介します。

 1977年出願の特開昭54-6788号(特公昭62-16036号)を見て下さい。これによると採用されている手段は、端面付近に電流注入をしないようにすることと、端面付近のバンドギャップエネルギーを大きくすることの2つです。画像

 端面付近のバンドギャップエネルギーを内部に比べて大きくすると、内部で発光した光は端面付近では吸収されなくなりますので、温度上昇は避けられます。しかしこの部分にも電流を注入していると内部より波長の短い光が発光する恐れがあり、それでは意味がありません。そこで端面付近には電流を流さないようにする必要があります。

 端面付近に電流を流さないようにするにはストライプ状の電極を短くして端面付近には電極を着けないようにすればよいです。バンドギャップエネルギーを端面付近だけ部分的に変えるにはどうしたらよいでしょうか。端部だけバンドギャップエネルギーの大きい材料の結晶を成長させればよいのですが、もっと簡単にできればそれに越したことはありません。

 この特許では不純物ドープによってその違いを作ることを提案しています。図を見ながら説明しますと、n型GaAs基板10上にn型AlGaAs層11、n型GaAs活性層12、n型AlGaAs層13を形成します。つぎにこの表面にSiO膜を着けてこれに幅15μm、長さ250μm(結晶の全長より短い)の穴を開け、この穴を通してp型不純物であるZnを活性層12の下まで拡散します。

 こうすると、不純物が拡散された部分の活性層12'はp型に変わります。SiO膜を残したまま上部電極を着ければ、ストライプ状の部分からだけ電流が流れますから、p型活性層の部分から発光が起こります。

 ここで重要なことは不純物を高濃度で拡散すると、この部分12'のバンドギャップエネルギーはそれ以外の活性層部分12”に比べてわずかに(0.07eVと書かれています)小さくなります。この程度でもバンドギャップエネルギーに差があると、活性層12'で発光した光の端面付近の活性層部分12”での吸収は小さくなります。このように端面付近での光吸収を防止するための構造を「窓構造」と呼んでいます。窓のように光を通すための構造が備わっているという意味です。

 ところで半導体レーザを実際に使用する際にはパッケージに入れ、中に不活性ガスを詰めて使うのが普通です。しかしそれでも端面の半導体を剥きだしにしておくと、僅かな酸素によって表面が次第に酸化されてきます。この酸化が進むと端面での反射率が低下し、しかも光が出にくくなる場合があります。これをCODとは区別して反射面劣化と呼びます。これを防ぐために、本特許ではさらに端面にAl膜20を着けています。

 なお、本特許では手段として不純物の高濃度ドープによるバンドギャップエネルギーの減少を利用していますが、活性層にあまり高い濃度で不純物を入れると光の損失が大きくなるため、現在ではこの手段はあまり使われておらず、他の手段が検討されています。しかし多くの場合、端面付近での光吸収を減らすという基本的な考え方には変わりはありません。

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