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zoom RSS 垂直共振器型面発光レーザの実用化

<<   作成日時 : 2008/03/24 19:19   >>

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 垂直共振器型面発光レーザを室温で連続動作させるためには、光の増幅利得を確保する必要があります。そのための手段としては光共振器の2枚の鏡の反射率を高くして光をできるだけ長く共振器内に留めることが考えられます。反射率が高いと外部に取り出せる光の量は減りますが、レーザ発振を持続させることが先決ですから、これは仕方ありません。

 実際にどの程度の反射率が必要かというと、99%より大きい値と見積もられています。特定の発光波長でこれだけの高い反射率が安定して得られ、しかも残りが吸収されずに透過しなければならないので、金属の鏡では実現は難しいと思われます。
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 このような要求に適した反射鏡は回折格子によって得られます。面発光レーザの場合は凹凸の刻みを持った回折格子を使うのは難しいですが、高い屈折率の膜と低い屈折率の膜をそれぞれ1/4波長の厚みで交互に積層した多層干渉膜を使えば実現が可能です(ただしこの波長はこの膜の中での波長です)。

 反射の原理は回折格子と似ています。高屈折率膜と低屈折率膜の界面で光の反射が起きますが、多層膜なので界面はたくさんあり、各界面での反射は、膜厚が1/4波長のとき強め合うように重なるので、反射率は高くなります。

 このような多層膜を面発光レーザの反射鏡に使うことはかなり早くから提案されています。特開昭59-36988号(特公平1-12114号)にはAlGaAsを用いた反射鏡の構成例が詳細に記載されています。図Aのように活性層2の両側に多層膜からなる上部反射鏡1と下部反射鏡3を設けています。多層膜は高屈折率材料の膜5と低屈折率材料の膜6が交互に積層されます。

 AlGaAsはAlの組成が高くなるほど屈折率は小さくなりますから、Al組成の高いAlGaAs膜と低いAlGaAsを交互に積層した多層膜を作れば反射鏡が得られます。極端な場合はAlAsとGaAsの組み合わせになります。

 何度も繰り返しになりますが、AlGaAsはAl組成を変えても格子定数がほとんど変化しないため、どのような組成の組み合わせでも格子整合した結晶膜の積層ができます。半導体レーザの開発初期にこの点が非常に助けになったことは以前にもお話しましたが、多層膜反射鏡の設計においても、Al組成を自由に変えて屈折率を調整できるのは大変物作りを楽にしたと言えます。

 上記特許では高屈折率膜としてGaAs、低屈折率膜としてAl0.3Ga0.7Asを使用した場合、99.7%という反射率が得られるという計算結果を示しています。以上のように多層膜によって反射率の高い反射鏡が設計でき、実際に作ることも可能になりました。

 もう一つの問題はいかに無駄な電流を減らし、小さな電流でレーザ発光を実現するかです。これは活性層の近くで電流を狭い範囲に搾りこめばよいと考えられます。そのような考え方で絶縁層(SiO2)を設け、電流を流す部分だけ孔を開けた構造が、伊賀教授のグループによって提案されています(特開平3-177087号(特許2909512号))。これによって1988年にAlGaAs/GaAsの垂直共振器型面発光レーザは室温で連続動作が可能となりました。低温パルス発振の確認から8年が費やされています。

 ただ半導体層の間にSiO2膜を挟むには、その前で半導体の成長を一旦止めてSiO2膜を着ける必要があり、面倒です。またその後、半導体膜をさらに成長してもSiO2膜上にはうまく成長できないなどの問題がでます。

 このような問題を解決する良い方法が特開平9-266350号(特許2891164号)に提案されています。この方法でははじめに一連の半導体膜の成長をすべて終わらせます。このとき電流を搾る位置にAl組成の大きい層を入れておきます。少なくともこのAl組成の大きい層までの上部を円筒状に加工します。その後、全体を水蒸気を含む雰囲気中で加熱するとAl組成の大きい層が周囲から酸化され絶縁体の酸化アルミニウム層になりますが、適当なところで酸化を止めると、中央部分は酸化されずに抵抗が低いまま残すことができます。

 図Bはこの方法で作った面発光レーザの断面図です。活性層4の両側に多層膜反射鏡2と6が作られています。上部反射鏡6の一番下の層をAlAs層にしておくと、水蒸気による酸化で周囲の部分6aのみが酸化され絶縁体になります。この酸化の速度はAl組成によって大きく変わるので、反射鏡に使うAlGaAs層のAl組成を小さくしておけば、この層はほとんど酸化されずに済みます。以上の方法によって活性層の近くで電流を細く搾る構造を作ることができます。この巧妙な方法は現在広く使われるようになっています。

 以上のような工夫の組み合わせによって、0.8〜0.9μm帯のAlGaAs/GaAs垂直共振器型面発光レーザは室温で連続動作が可能になり、実用的に利用できるようになりました。

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