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zoom RSS 太陽電池の効率を低下させる原因(その4)

<<   作成日時 : 2008/11/23 23:54   >>

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 これまで、光が太陽電池のセルの中にうまく入ってくれないとか、入ってくれはするものの電気に変換されずに通り抜けてしまうとかいった問題を考えました。

 今回は光がセルのなかで吸収され電子と正孔を発生させるのに、外に電力としては出てこないという問題を考えます。これはどういうことかというと電子が太陽電池の外に流れ出る前にまた正孔と結合して消滅してしまうことが起こりうるということです。一度できた電子と正孔がもう一度結合するので、これを再結合と呼んでいます。

 再結合が起こると、エネルギーが外に放出されます。これは発光ダイオードの原理と同じように光のエネルギーになる場合もありますが、必ずしも光になるわけでなく、熱になる場合もあります。
画像
 pn接合を使った太陽電池では接合付近には空乏層ができていますが、この部分にはかなり強い電場がありますから、この付近で発生した電子と正孔はこの電場に引かれて高速で移動します。これをドリフトと呼んでいます。ここでは電子と正孔が結合する機会は少ないのであまり問題はありません。

 ところがこの空乏層の厚さはせいぜい数μm程度です。結晶基板を使った太陽電池では図Aのようにかなり厚い例えばp型結晶の上に比較的薄いn型層を着けた構造が使われます。この場合、空乏層の外でも太陽光が吸収され電子と正孔が発生します。そのような部分には基本的に電場がありません。しかし電子と正孔はじっとしているわけではなく、たくさんいる(濃度が高い)ところからあまりいない(濃度が小さい)ところに向かって移動します。これを拡散といいます。コップの水に赤インクを一滴たらすとかき混ぜなくても時間が経てば赤インクはコップの中に一様に広がります。このような拡散現象は電子や正孔でも起こります。

 この拡散で電子または正孔が空乏層にたどり着ければ、外部に取り出せる電流となります。しかしたどり着く前に再結合してしまう場合もあります。どの程度の距離を再結合せずに拡散できるかの目安となる量をキャリア拡散長と言います(図B参照)。

 半導体結晶の質が悪いと再結合が起こりやすくなりますから、拡散長は短くなります。質が悪いというのは結晶の原子の並びが乱れた部分(欠陥と言います)が多かったり、何か不純物が多く含まれている状態です。このような欠陥や不純物は電子や正孔を引き寄せやすく、ここで電子と正孔が再結合しやすくなります。

 このためできるだけ質の良い結晶を使うに越したことはないのですが、太陽電池は他の半導体デバイスと違って多くの太陽光を受け止めるためにできるだけ面積を大きくする必要があります。しかし大きくて質の良い結晶を作るのは難しく、また値段が高くなってしまいます。この点にどう折り合いを付けるかが難しい問題で、これはまた後で考えることにします。

 これまでは結晶の内部の話でしたが、結晶の表面でも電子と正孔は再結合しやすいことが知られています。結晶の表面というのはそこで原子の並びが途絶えているので、欠陥のようなものです。結晶の表面はどんな場合にも必ずあるので、そこでの再結合をまったくなくすことは不可能です。とくに太陽電池はその表面から太陽光を入射しますから、影響を受けやすいと言えます。

 半導体結晶の表面を空気中に曝したままにすることは太陽電池に限らず普通はしません。結晶の表面上にはSiOなどの絶縁膜を着けるのが普通です。これをパッシベーション、日本語では不活性化などと言います。これによって半導体結晶表面の欠陥を減らせることが知られています。表面の欠陥が減れば再結合を少なくすることができます。

 太陽電池の効率を低下させる原因はこの他にもあり得ますが、大きな原因は以上です。

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
非常に分かりやすく勉強になりました。
この記事から1年たった今でも実用は難しそう
再結合については3次元フォトニック結晶で阻止できると、ニュースでみたんですが、本当にできるんでしょうかね?
盛岡
2009/12/15 12:03

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