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zoom RSS シリコン単結晶の作り方(その3):引き上げ法(CZ法)

<<   作成日時 : 2009/01/12 18:54   >>

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 「その2」では原料の一部を融かすFZ法を説明しましたが、この方法は非常に高純度の単結晶が得られる反面、結晶の大型化あるいは大量生産には向いていません。一方、るつぼ内で融かした原料に種結晶を漬け、引き上げる、いわゆる引き上げ法はるつぼから不純物が混入しやすいという問題があるものの、大型結晶が作りやすいという点で、大量の半導体デバイスを必要とする現代の要求には適した方法でした。

 この引き上げ法はチョクラルスキー法という呼び方もよくされます。このチョクラルスキーは人名です。ポーランド人の学者チョクラルスキー(J. Czochralski)氏は1916年に金属の単結晶成長法としてこの引き上げ法を提唱した人しました。少し長い名前なので頭2文字をとってCZ法と略称されます。これは偶然でしょうが、フローティングゾーン法のFZ法と対をなす語呂合わせのようになっています。
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 このように引き上げ法は古くから知られていた方法ですが、半導体に適用したのは、これもベル研究所の人達です。J.B.LittleとG.K.Tealという人のグループがまずゲルマニウムの結晶を成長させ、ついでシリコンにも適用しました。いつものように特許を紹介しておきます。米国特許2683676号、2727840号がそれで、ともに1950年に出願されています。トランジスタの発明が1948年ですから、ほぼトランジスタなど半導体デバイスの開発と並行して結晶成長技術の開発が進められていたことになります。

 図Aは2683676号に掲載されている装置の図面ですが、全体のシステムを示しているため、るつぼ15付近が小さくてわかりにくいと思います。どのように結晶が成長してくるかをわかりやすく示した図として、だいぶ時代が下った1980年に出願された国内の特許(特開昭56-104799号)の図面を示します(図B)。結晶成長前にるつぼ中で原料半導体を融かしておき、その上方から種結晶を下ろして融液のなかに漬けます。図Aでは種結晶17を重り16を付けたワイヤ22で吊り、モータ18によってネジを切ったシャフト20を回転させて、種結晶を上下させる仕組みになっています。

 図Bはその後、ある程度、結晶ができてきた段階を示しています。通常、種結晶7かるつぼ2、あるいは図のように両方を回転させながら、ゆっくりと引き上げます(図Aにはこの回転機構は示されていません)。すると円柱状の単結晶1が種結晶にぶらさがるように成長してきます。もちろん融液の温度や引き上げ速度などによって結晶の大きさや質が変わってきますので、これらは厳しく管理しなければいけません。

 CZ法で作られるシリコン単結晶の大きさは直径16インチ(40cm)、長さは2mにも及んでいて、直径12インチ(30cm)のものがデバイス生産用に供給されています。他の材料の結晶、例えばGaAsは3インチ(7.5cm)、その他はせいぜい1,2インチ径であることを考えるとこれは驚異的なことです。

 このような大型で良質な単結晶が生産できるようになったのは、非常に多くの研究開発が長い間行われてきた結果です。ここではその後なされた開発からいくつか重要なポイントを挙げておきます。

(1)無転位化技術(ネッキング法)

 結晶の欠陥のひとつに転位というものがあります。単独の原子が不足したり、余計にいたりするタイプの欠陥ではなく、線上に並んだ原子の位置がまとまってずれてしまった欠陥を転位といいます。このような転位は温度変化などによって伸びたり枝分かれしたりして増殖するのでやっかいです。CZ法で大きな結晶を成長しようとすると、中心部と外側で温度差が大きくなって結晶が歪み、これが転位発生の原因になります。

 この転位をなくす方法がGE社のW.C.Dashという人によって考案されました。図Bを見ると種結晶のそばの部分の結晶は細くなっていますが、このように結晶が細くなると温度差も小さくなり、転位も減り、やがてまったくなくなります。シリコンは一旦、転位がなくなると、その後かなりの温度差が結晶にかかっても転位が新たに発生しないという性質があるので、大きくても転位のない結晶ができます。

 この方法(ネッキング法ということがあります)の開発がCZ法による大型シリコン結晶成長にとっては決定的なものとなりました。なお、結晶を細くするには引き上げ速度を速くします。大きな直径のものを作るには遅くすればいいのですが、それでは時間がかかり過ぎるので、温度を下げて速く結晶が成長するようにします。こうすると温度差が大きくなるのですが、上記の方法なら温度差が発生しても転位の増殖にはつながりません。

(2)ゲッタリング(IG効果)

 Cz法の欠点はすでに触れたように、るつぼから不純物が混入することです。シリコンの場合、同じシリコンの酸化物である石英をるつぼに使います。しかしるつぼの表面はシロコンに溶け、酸素が不純物として融液に入るのは避けられません。酸素はシリコンと結合して欠陥を作ります。

 IBM社では結晶成長中ではなく、ウェハに加工した後の処理で酸素の欠陥に対処する方法を開発しました。半導体デバイスはウェハのほんの表面しか使わないので、表面から数10μmの深さまで欠陥がなければ支障にはなりません。ウェハ表面付近の酸素は、水素などのガス中で熱処理すれば、抜き取ることができます。これでまず酸素による欠陥の問題は回避できます。

 この他にシリコンウェハ中には酸素以外に鉄や銅などの金属不純物が含まれています。製造装置などはこれらの金属を使って作られているので、このような不純物が混入してくると思われますが、ウェハの洗浄処理などを行っても避けるのは難しいのです。

 ところがウェハ中に残った酸素はこのような金属不純物と化合し固定化すると同時に、酸素自体も再び表面に移動できなくなるという一石二鳥のはたらきをします。不純物を何かで吸い取って除去することをゲッタリングと言いますが、内部でそれを行ってしまうという意味で、酸素による金属不純物の除去をイントリンシック・ゲッタリング(Intrinsic gettering、略してIG)効果と呼んでいます。なお上記の特許、特開昭56- 104799号では、結晶成長後、成長装置内でもう一度、高温で熱処理することにより、IG効果がより顕著になると述べています。

 以上のようにCZ法は欠陥、不純物に対処する方法が開発されて、大型結晶を成長する決定的な方法となったと言えます。

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