石くれと砂粒の世界

アクセスカウンタ

zoom RSS シリコン系薄膜ヘテロ接合太陽電池

<<   作成日時 : 2009/05/24 19:32   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 5 / トラックバック 0 / コメント 0

 シリコン系薄膜太陽電池の接合構造についてもう少し話を続けます。表題にヘテロ接合と書きましたが、前回紹介したアモルファスSiとアモルファスSiCを積層したものなども材料が異なり、光学ギャップも異なる半導体の組み合わせですからヘテロ接合と言えます。

 ここで取り上げようとしているのはこれとは違い、アモルファスと結晶の組み合わせです。材料が同じシリコンという意味ではヘテロ(異種)ではないように思えますが、これまで説明してきたように、結晶のSiとアモルファスSiでは光学的な性質が大きく異なります。結晶Siのバンドギャップは約1.1eVですが、アモルファスSiの光学ギャップは約1.8eVです。
画像
 そこでアモルファスSiを光の入射側の層にし、結晶Siを裏面側に配置した太陽電池は広い波長範囲の太陽光を電気に変換でき、効率が高いことが期待されます。このことは早くから気付かれていて、1980年代の初め頃には特許も出されています。例えば、特開昭57-60875号や特開昭59-175170号などがその例です。いずれも大学の先生が発明者に名を連ねており、この頃関心を集めた技術であったと言えます。

 図Aは後者の特許の図面です。この構造がp型結晶Si基板2の上にn型アモルファスSi層3が積層されていて、HJと書かれた面がヘテロ接合面となります(その後は逆にn型基板とp型薄膜の場合の方が一般的になっています)。下の図が対応するエネルギーバンドの図です。厳密にはアモルファス層はこのように単純に描いてはいけないのかもしれませんが、このヘテロ接合の光学的な特徴はこの図のように入射側のギャップが広い(大きい)ことです。

 電極構造は表面側が透明導電膜4とその上の金属の細長い集電極5からなっています。裏面電極は光が到達しないのでベタの金属電極です。このような電極構造は基板が光を通さない単結晶や多結晶の太陽電池と同様となっています。 

 しかしこのようなヘテロ構造を実際に作るには難しい問題がありました。単結晶または多結晶のSi基板の上にアモルファスSi薄膜を積層すること自体はガラス基板/透明電極上に成膜するのとさして変わらないのですが、問題は結晶SiとアモルファスSiの界面が接合として使われることです。結晶の上にアモルファス膜を着けるのはエピタキシャル成長とちがって界面に欠陥が多くなりやすいという問題があります。接合部に欠陥があると折角発生した電子と正孔がそこで再結合してしまい、電流として十分取り出せなくなります。

 この問題に対する解決策は三洋電機が1990年に出願した特開平4-130671号(特公昭7-95603号)に書かれています。結晶とアモルファス層の界面に薄い真性(i型)アモルファスSi層を入れるというものです。層の厚みは25nm以下とされ、数nmのところで変換効率が膜のないときに比べて1.5倍近くに増加しています。この特許ではとくにp型やn型にするための不純物が界面における欠陥の原因とみており、薄い真性膜を間に入れることで問題の解決がはかれるとしています。想像ですが、このような薄い膜ならばエピタキシーに近いことが起きているのかもしれません。

 この構造は上記特許にはまだ書かれていませんが、HIT構造と呼ばれるようになりました。”Heterostructure with Intrinsic Thin-layer”の略で「薄い真性半導体層をもつヘテロ構造」という意味です。i型アモルファスSi層は非常に薄いので、pin構造のi層としてのはたらきはなく、HIT構造はヘテロpn接合と考えられます。

 さてこのHIT構造は変換効率は優れているのですが、基板が単結晶または多結晶のためコスト面では薄膜型の良さが失われてしまいます。そこでコストを引き下げるためには少しでも基板を薄くしたいところです。ところが基板を薄くすると、電極金属などはシリコンと異なる熱膨張係数をもっているため、基板に応力がはたらき反りが発生するという問題が出てきます。

 そこで考えられたのが、Si基板を中心に積層構造を対称にすることです。図Bがその構造を示していますが、これも三洋電機の出願です(特開平10-135497号(特許3469729号))。n型Si基板11を中心に上側がHIT構造太陽電池の機能部です。基板上にi型アモルファスSi層12、p型アモルファアスSi層13、透明導電膜14、金属電極15が積層されています。下側の各層15〜18は上側と対照に作られますが、下側にはpnは不要なので16はn型アモルファスSi層です。

 上記の構造がHIT構造として完成した基本構造です。実際にはさらにいろいろな改良がなされているようで、このあとも三洋電機を中心に多数の特許が出願されています。

 このHIT構造太陽電池は化合物半導体を使ったものなど特殊なものを除けば、現在もっとも変換効率の高い太陽電池です。たまたま最近(5月22日付)三洋電機社が世界最高の変換効率23%を達成したと発表し注目されています(http://jp.sanyo.com/news/2009/05/22-1.html)。シリコン太陽電池の理論変換効率は27%程度ですから、もうほとんどそれに迫るところまで来ているといえます。
 

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 5
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
シリコン系薄膜ヘテロ接合太陽電池 石くれと砂粒の世界/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる