石くれと砂粒の世界

アクセスカウンタ

zoom RSS 集積型薄膜太陽電池

<<   作成日時 : 2009/05/31 19:29   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

 前々回に説明したタンデム型太陽電池は異なる材料の太陽電池を積層し、異なる波長帯の光を光電変換できるようにしたものでした。これは積層方向に複数の太陽電池を集積した集積型太陽電池ということができます。

 今回とりあげるのは積層方向ではなく同じ基板の上に横方向に複数の太陽電池を並べたタイプで、普通はこれを集積型太陽電池と呼びます。
画像
 このような集積型の利点は直列につないで使用するときにはっきりと現れます。シリコン系太陽電池の場合、1つのセルが発生する電圧は1Vより少し高いくらいで、乾電池1個より低い電圧しか出ません。これでは通常の機器の電源にそのまま使うには低く過ぎます。乾電池と同じように直列にいくつかつないで電圧を上げる必要があります。

 同じ基板上にはじめから複数の太陽電池セルを直列接続したものを作り込むことができ
れば、複数のセル同士を改めて接続する必要がありません。このような考え方は例えば、特開昭55-107276号(特公昭58-21827号)などで提案されています。具体的な構造は3回ほど前に例を示していますが、ここでは別の特許の図面を示します。

 図Aは特開昭57-12568号(特公平4-72392号)に示された集積型薄膜太陽電池の断面構造です。透明基板1の上に透明電極2、半導体層3、金属電極4が積層されています。半導体層は実際はpin構造などになっているのですが、簡単にするために図示が省略されています。

 図では横方向にa、b、cの3セルが集積されていますが、セルの数は必要な出力電圧によって決められます。重要な点は1つのセルの金属電極、例えば4aは隣のセルの透明電極2bにつないであることです。
画像
 さてこのような構造をどのような方法で作るかをつぎに示します。トランジスタなどの集積回路ではフォトリソグラフィとエッチングを駆使して集積回路の構造を作りますが、太陽電池の場合は基板のサイズが大きいのでフォトリソグラフィを使おうとすると、露光設備などが大きくなり、コストがかかってしまいます。

 幸いにして電極パターンは複雑でなく、直線的なパターンで十分です。そこで提案されたのはレーザを使って膜を焼き切るレーザスクライビングという方法です。レーザ光を集光して小さなスポットにし、膜に照射しながら動かします(走査すると言います)。照射部分の膜をレーザ光が吸収されて発生する高熱で焼き切ってしまう方法です。この方法を太陽電池に応用することは原理的には特開昭55-107276号(特公昭58-21827号)に提案されていますが、より実際的な方法は上記の特開昭57-12568号に示されていますので、これを使って説明しましょう。

 図Bは図Aの構造を作る手順を示しています。

(a)ガラス基板10の表面に透明導電膜(酸化スズ)11を着けます。

(b)透明導電膜11にレーザ光を照射し、照射部分11'を除去します。これで透明導電膜は3つの部分11a、111b、11cに分割されます。レーザは波長1.06μmのYAGレーザが使われます。この波長の光は透明導電膜に吸収され熱を発生します。

(c)(b)で加工した表面にアモルファスシリコン膜12のpin構造を成膜します。

(d)アモルファスシリコン膜12にレーザ光を照射し、照射部分12'を除去します。これでアモルファスシリコン膜は3つのセル部分12a、12b、12cに分割されます。レーザは波長0.51μmのアルゴンレーザに変えます。可視光はアモルファスシリコン膜によく吸収されますが、透明導電膜にはほとんど吸収されません。このため照射部分12'の下にある透明導電膜はレーザ光が当たっても損傷されることはなく、そのまま残ります。

(e)(d)で加工した表面に裏面電極としてアルミニウム膜13を着けます。

(f)アルミニウム膜13にレーザ光を照射し、照射部分13'を除去します。これで裏面電極が隣のセルの透明導電膜につながり、かつ反対隣のセルとは分離された構造が実現されます。レーザは透明導電膜に用いたYAGレーザを再び使います。ただしアルミニウム膜は透明導電膜に比べて低温で溶けて蒸発しますので、レーザ光のパワーを透明導電膜の場合より小さくします。これでレーザ光がアモルファスシリコン膜や透明導電膜を傷つけることが防げます。

 以上の工程により図Aの構造の集積型太陽電池を作ることができます。基板表面全体への成膜とレーザ光を照射しながら必要なパターンになるように走査することの繰り返しだけで必要な構造を作ることができ、非常に簡単であることがわかると思います。

 このような集積構造が簡単にできることはシリコン系薄膜太陽電池の大きな特徴です。単結晶や多結晶の基板を使った太陽電池では基板が導電性であるため同じような構造にはできません。そこで普通はセル間を線でつなぐ方法がとられます。これについては別の機会に触れることにします。
 

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
集積型薄膜太陽電池 石くれと砂粒の世界/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる