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<<   作成日時 : 2009/11/22 17:05   >>

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 フォトダイオードとしてもっとも普通に使われているのがpinフォトダイオードです。このpin(大文字でPINと書かれることもあります)はp型−i型−n型という半導体の層構造を表しています。そしてこのiは真性(intrinsic)半導体の頭文字です。実際には不純物ドープをしていない層であり、ノンドープ層とかアンドープ層とか呼ばれます。

 真性半導体は不純物を含まない半導体物質そのものの性質(とくにキャリア濃度)をもった半導体のことですから、厳密に言うとこれとノンドープとは異なります。ノンドープとは意図的に不純物をドープしていないだけで、実際にはまったく不純物を含まないわけではありません。ただしデバイスとして見たときには、十分に不純物濃度が低ければ、ほぼ真性半導体を使っているとみなすことができるので、あまり厳密な区別は不要です。

 言葉の話をもう少ししておきます。pinフォトダイオードは「ピン」フォトダイオードと発音されるのが普通です。「ピーアイエヌ」と言っても構いませんが、ピンの方が言いやすいでしょう。しかし書くときは「pin(またはPIN)」とアルファベットで書くべきです。

 pinは幸か不幸か英語の単語です。画鋲のような紙を壁に留める針のことを意味します。日本語でピンというとむしろ髪を留めるものを言うような気がしますが、英語では留め針が主要な意味です。このため英文のなかで”pin photodiode”と書かれると知らない人はこの英単語の意味ととってしまうのは仕方のないことです。英文から翻訳した外国特許などでは「ピンフォトダオード」と書かれていることが多く、「ピン留めフォトダイオード」という珍訳を見たこともあります。このような取り違えをなくすためにも日本語の文献にはpinと書いていただきたいと思います。

 脇道が長くなりましたが、本題です。pinフォトダイオードの特許を調べてみると、日本でもっとも早く出願されているのは、特公昭30-8969号です。発明者はこれも東北大の西沢潤一、渡辺寧の両先生で、1953年の出願です。p型半導体とn型半導体の間に高抵抗薄層を挟んだ構造が提案されています。この特許にはpin構造という語はまだ書かれていないようですが、抵抗の高い層がi層に相当します。
画像
 これまで説明してきたように、フォトダイオードはpn接合があれば実現できます。なぜi層を挟むのでしょうか。前回、pn接合に逆バイアスをかけ、空乏層を広げた方が、感度、応答速度とも向上することを説明しました。i層はもともとキャリアが少ないので、逆バイアスをかけるとこのi層の部分にほとんどの電界がかかります。

 図は上記とは別の特公昭40-23055号というこれも古い特許の図面ですが、わかりやすいと思い取り上げました。左側がp層、真ん中がi層、右側がn層です。エネルギーバンド図は電子(マイナス電荷)に対して描かれますから、p層側にマイナス、n層側にプラスの電圧をかけた状態が示されています。

 ここで注目すべきは電位が傾斜しているのはi層部分だけで、この部分だけに電界がかかっていることが示されています。i層にはもともとキャリアが少ないので、はじめから空乏層があるようなものです。

 これに対してpn接合で空乏層をこのように広げるためには、かなりの電圧をかけてp層とn層の正孔と電子を電極側に引き寄せなければなりません。pin構造にすることによってこの電圧を下げることができます。このような利点については上記の西沢・渡辺特許にすでに書かれています。

 このような目的ならi層1層だけ用いて両側に電極を着ければよいような気がします。pin構造にする意味はどこにあるのでしょうか。i層のみに電極を着けた場合は電極とi層の界面に電界がかかります。電極付近に大きな電界があると、半導体表面に障壁があったとしても、電極からキャリアが注入されやすくなります。光が当たっていなくてもこれによって電流が流れるのは受光素子にとっては好ましくありません。

 pin構造の場合は図からもわかりますが、p層、n層にはほとんど電界がかかりません。このため電極付近の電界は小さく、半導体表面に少しでも障壁があれば、キャリアは入って来ません。両側にp層、n層があると、光が当たっていないときに流れる電流が少ないという利点があります。

 図のような構造のpinフォトダイオードのi層に光が当たるようにすると、できた電子8と正孔10が9、11のように流れて光電流となります。どのようにi層に効率よく光を吸収させるかという問題は、フォトダイオードの具体的な構造によって工夫されています。次回以降では素子の構造に触れます。

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