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zoom RSS 放射線検知素子(その1)

<<   作成日時 : 2010/03/03 21:56   >>

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 受光素子の周りには何故か普段あまり注目されませんが、特別な機能をもった素子や興味深い応用分野が多いように思います。以下、数回にわたってそのような受光素子に関する話題を順不同で取り上げます。

 今回は放射線検知素子です。

・放射線とは何か
 歴史的にみれば、19世紀末にウランやラジウムといった元素から何か物を透過する性質をもったビームが出ていることが見つかりました。発見者はウランがA・H・ベクレル、ラジウムがM・キュリーです。このビームが放射線と呼ばれるようになりました。その後、この放射線には3種類があることがわかり、A・ラザフォードは物を透過する程度が低い順にα(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線と名付けました。

 この3つの名前α、β、γはまだその実体がわからない段階で、仮に名付けられたようなものですが、実体が解明された後もそのまま残っています。その実体は何かというと、α線はヘリウムの原子核で、陽子2個を含むため、プラスの電荷を持っています。β線は電子線で、マイナスの電荷をもっています。γ線は電磁波です。

 ウランやラジウムは多数の陽子と中性子からなる重い原子核をもっています。重い原子核は壊れやすく時間が経つにつれて別の元素に変わっていきます。これを原子核の崩壊といいますが、このときにα線、β線、γ線の3種類の放射線が外に放出されます。ウランやラジウムは自然界にある元素ですから、この3種の放射線も自然界で観測できるものです。

 しかし例えばα線より単純な陽子1個の陽子線とか中性子1個の中性子線なども原子炉などで作れます。またγ線と同じ電磁波のX線はよく知られています。放射線という言葉は最初は原子から何か出ているという歴史的発見の過程で使われましたが、人工的であっても原子から出るものなら、光(電磁波)も粒子(粒子線)も含めた広い概念で放射線と言ってよいと思います。

 日常生活ではα線、β線、γ線には馴染みがないと思いますが、X線だけは医療をはじめとしてよく利用されています。半導体の分野でも結晶構造の解析や不純物の分析などに広く活用されています。この代表的なX線のエネルギーは10KeV(1万eV)程度、波長にすると0.1nm前後です。これは可視光の1万倍近くの非常に大きなエネルギーです。

 もう少し付け加えると、X線は紫外線より波長の短い光であり、紫外線との境界は波長にして数10nm、エネルギーで言えば数10eVのところにあります。高いエネルギー側は100KeV(=10万eV)、波長にして0.01nmくらいまでがX線の範囲です。γ線はさらにこれより高いエネルギー(短い波長)のものを言います。ただしγ線とX線の区別は波長ではなく、原子核の崩壊などに起因するものがγ線で、原子核の周りを回る電子がエネルギーを失うときに出るのがX線という分け方が正しいようです。

・シンチレーション検出器
 この放射線を検知するのが放射線検知素子ですが、最初は光の検知と同じように光電管(光電子増倍管)を使うことが考えられました。ただし放射線を直接カソードに当ててもエネルギーが高過ぎてカソードを透過してしまいうまくいきません。そこで考えられたのがシンチレータです。これは放射線を受けると可視光を出す性質をもった物質です。蛍光体の一種と言ってもよいと思います。シンチレーション(scintillation)は一般用語では閃光とかきらめきとかといった意味だそうです。
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 放射線検出に使われるシンチレータにはいろいろな種類がありますが、例えば無機物ではNaIとかCsIといったNaClと同類のイオン結晶にタリウム(Tl)などの不純物をドープしたもの、有機物ではアントラセンなどが知られています。NaIなどは可視光に対しては透明で、可視光を当てても電子−正孔対はできませんが、X線などの放射線を当てれば電子−正孔対ができます。図Aに示すように伝導帯に励起された電子は中に含まれる不純物の準位に一旦落ち、そこから価電子帯に落ちて正孔と再結合し発光します。この不純物の準位と価電子帯のエネルギー差がちょうど可視光のエネルギーになるように不純物の種類を選んでドープした物質がシンチレータです。

 このシンチレータを光電子増倍管の前に置いて、出てきた可視光を検知すれば間接的に放射線を検知できます。これをシンチレーション検出器と言います。同じことが光電子増倍管の代わりにフォトダイオードなどの半導体受光素子を使ってできることはすぐに思い付くことです。フォトダイオードの上にシンチレータの結晶を貼り付ければよいわけです。

 さらにはフォトダイオードの受光面の上にシンチレータになる物質の膜を直接着けることが考えられます。ここで問題になるのは半導体受光素子の上にNaIなどの単結晶を成長させることは難しいということです。しかし単結晶でなくても蛍光が出ればよいので、図Bのように膜を着けて放射線検出器としたものが考えられています(特開昭59-55075号より)。

 フォトダイオードはp型シリコン基板1の表面にn型領域4を形成したものです。もちろんpinフォトダイオードでも構いません。表面電極5は透明電極です。その上にヨウ化セシウム(CsI)の蛍光膜7が着けられています。不純物は書かれていないのでわかりませんが、タリウムなどが含まれていると思われます。表面電極5と裏面電極6の間にpn接合が逆バイアスになるように電圧をかけ空乏層10を作った状態でX線などの放射線を表面側から入射させると、蛍光膜は可視光を出し、この可視光は透明電極を透過して空乏層に達し電子−正孔対ができます。

 1テーマ1回の読み切りにしたかったのですが、長くなりましたので次回に続きを載せることにします。

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