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zoom RSS 真空中の電子の偏向

<<   作成日時 : 2010/06/13 20:04   >>

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 本書(*)第2章では、その標題でもある「半導体のWilson模型」を説明する筋道として、まずは古典電子論から話を始めています。この古典電子論とは前回も触れましたが、電子を負の電荷をもった粒子とみて、それに古典力学、電磁気学を適用し、電子の運動を記述しようとする理論です。

 ただ例えば数mm角という大きさをもった半導体内を電流が流れるとき、移動している電子はもちろん1個ではなく、10の二十何乗個という膨大な数が集団で動いています。このため1個の電子の動きが計算できたからといって、実際に起こる現象を説明できるとは限りません。古典電子論でもこのような大量の電子の運動をどのように扱うかが重要になります。

 しかしまずは1個の電子の運動を知らなければなりませんので、ここではそこから考えます。電子は電荷をもっているので、電界や磁界のなかで力を受け、加速されたり進行方向を変えられたりします。

 実はこの世の中に電子というものがあることが発見された根拠もこれでした。電子の発見者であるJ.J.トムソンは真空中を何かが飛んでいて、それが電界や磁界で曲げられることを実験で確かめ、それが電子の発見につながりました。

 本書には書かれていないことですが、ここではトムソンの実験を例に電子が受ける力を説明してみます。これは古典電子論の基礎になるものです。なお、このトムソンによる電子の発見については、前にも触れましたが、S. ワインバーグ著「電子と原子核の発見」(邦訳、ちくま学芸文庫)に詳しく記されています。

 トムソンが行った実験は真空中の放電です。当時(19世紀半ば)、大気圧の100分の1以下の圧力の真空が作れるようになり、このような真空のもとで放電実験を行うとマイナス側の電極からプラス側の電極に向かって目に見えない何かが飛んでいることがわかり、これは陰極線と名付けられました。これが実は真空中を電子が飛ぶ電子線であったのです。
画像
 トムソンが実験に使った装置は概略、図のようなものです。中を真空にしたガラス管中に電極を入れます。一番左側にあるのが陰極(カソード)でマイナスの電極です。そのすぐ右側にプラスの電極、陽極(アノード)があります。

 アノードを板状にしてしまうとカソードから飛んできた電子がそこで止まってしまいます。普通の目的の場合はそれでよいのですが、電子線の曲がりを調べるためには、電子を空中に飛ばせなければなりません。そこでアノードには穴か開けてあります。また穴を細長い管のようにしてあります。これで飛んできた電子はアノードの後へまっすぐ飛び出すことができます。

 図Aではアノードの後方にもう一組の電極があります。この電極に電圧をかけると電子は電場から力を受けて曲げられます(偏向といいます)。ガラス管の電子が当たる位置に蛍光塗料を塗っておくと電子が当たった点が光りますから、電子がどのくらい曲げられたかを示す距離dを計ることができます。

 このアノード後方に図Bのように磁石を取り付けると、電子は磁場によっても曲げられることがわかります。最近なくなりつつあるテレビのブラウン管はこの原理で電子を蛍光面上のあらゆる位置に到達するように振り、画像を表示していました。

 トムソンは電場や磁場を変えて電子の曲がりを詳しく測定し、それが電子の発見につながりました。次回は電場や磁場と電子線の曲がりの関係を数式で表すことにします。

(*)植村泰忠、菊池誠著、「半導体の理論と応用(上)」、裳華房





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