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zoom RSS 単位の話

<<   作成日時 : 2010/08/15 19:57   >>

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 ホール係数を測定するには、前回記したように、試料のx方向に電流Ix(単位面積当りJx)を流し、z方向に磁界Hzを加えたときに、y方向に発生する電界Eyを測定します。あとはこれらの値を前回の(1)式(または(7)式の左側の部分)に入れればホール係数Rが計算できます。

 電界Eyを測定するには、前回の図に示したように、試料のy方向に発生する電圧(ホール電圧と言います)Vを測定します。試料のy方向の厚みdを予め測定しておけば、
 
よりEが求められます。もちろんこの式が成り立つためには試料内で電界Eが一様であることが前提になります。電極の接触の仕方などによっては誤差が生じる恐れがありますから注意が必要です。

 ところで前回のような理論解析では個々の物理量の数値自体は意識されません。しかし実験や測定を行う場合には、実際に与えることのできる条件や測定できる物理量の数値には使用する機器などによって制限がありますから、具体的に各物理量がどの程度の値になるのかをイメージすることは大変重要です。

 本書(*)には、各物理量の単位を含めて次式が掲げられています(記号はここでのものに直しました)。これは上記のような物理量の扱いの重要性を意識してのものと考えられます。
   (1)
ここでCは電荷の単位クーロン、Oeは磁界の単位エルステッドです。

単位が何かをはっきり定義していないと、物理量の数値は意味をなしません。また上式のように単位系の選択によって108といった定数がくっついてきたりすることもあります。

 しかし単位系というのはかなり複雑でわかりにくい問題です。国際的に単位を統一するために、1954年にMKSA単位系を国際単位(SI)系とすることが定められました。日本には計量法という法律があり、一部例外を認めつつSI単位系を国内で標準的に使用することが定められています。この法律の制定は1992年ですが、これに伴ってその後、日本で出版された書籍や論文はSI単位系に統一して記述されているはずです。

 MKSA単位系というのはメートル(距離)、キログラム(質量)、秒(時間)、アンペア(電流)をベースにした単位系です。これに対し、従来使われていたのはcgs単位系で、こちらはセンチメートル、グラム、秒をベースにしています。

 米英で今も使われているヤード・ポンド法やもうほとんど使われなくなった日本の尺貫法からの変換には抵抗はある(あった)でしょうが、cgsからMKSへの変換は距離では1m=100cm、質量では1kg=1000gという換算だけですから、あまり大きな意味はないように見えます。ただし電気、磁気関係のcgs単位系はかなり複雑に枝分かれし、分かりにくいものになっています。この辺りの混乱がSI単位系への統一を促したのかもしれません。

 本書(*)は1960年に出版されていますが、この時期は世界的にもまだcgs単位系が使われていましたから、本書もcgs単位系をベースに書かれています。本書に限らず、少し古い物理学関係の本を読む際に引っかかるのが、この単位の問題です。

 このように現在、公式の出版物での単位系はMKSAになっていますが、一方で実験や測定の現場ではまだ従来の単位が使われていることもあると思います。長年の数値感覚を単位の変更で変えるというのはかなり抵抗があるものです。以下で触れると思いますが、例えば移動度の単位はcm/V・sが今でもよく使われ、m/V・sはあまり使われていないように思います。1万倍も数値が違ってくるので、イメージが変わってしまうからではないでしょうか。またcmとmの変換はあまり本質的な意味がなく、わざわざ変更する意味はそれほどないとも考えられます。

 一方でオングストローム()という短い長さを表す慣用されてきた単位があります。計量法では波長など特定の目的には使ってもよい例外扱いになっています。しかしこれは一般にあまり使わなくなっています。1=0.1nmとnmと1桁違いでしかないことも影響しているような気がします。

 だいぶ話が逸れましたが、上記(1)式では磁界の単位エルステッド(Oe)がcgs単位系です。MKSA単位系ではA/mが使われます。換算は次式の通りです。なぜ4πが入ってくるのか、など詳細には立ち入りません。
   (2)

 クーロンはMKSAの単位ですから、(1)式は単位が統一されていない式です。そこで本書ではガウスの絶対単位系というcgs単位への変換を示していますが、MKSA単位系で(1)式を書き直すと次のようになります。ここでもRの単位のなかのcmをmにするかしないかはあまり重要ではないと思います。
   (3)

 今回はここまでになってしまいました。次回に数値例を紹介しましょう。

(*)植村泰忠、菊池誠著、「半導体の理論と応用(上)」、裳華房

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