石くれと砂粒の世界

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zoom RSS 結晶の記述

<<   作成日時 : 2010/10/17 20:27   >>

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 だいぶ長く回り道をしましたが、「半導体の理論と応用」(以下、「本書」と言います)に戻ります。前回原子核と電子が1個または2個からなる系を例に、原子核と電子を多数含む系のシュレディンガー方程式がどんな形になるかを考えました。

 本書では結晶系のシュレディンガー方程式をどう書くかを議論していますので、必要な記号等を説明しながら、それを紹介します。

 1個の電子に対するシュレディンガー方程式を前回、つぎのように書きました。
 
 

 この式では使いませんでしたが、量子力学では演算子という記号を使って式を書くのが普通です。前に出てきましたが、量子力学では運動量pを波動関数を用いて
 
と表します。ここで
 
と置いて、このを運動量演算子と呼びます。

 演算子は数学用語で、何らかの演算操作を施すことを示す記号です。この例では波動関数を位置について微分し、h/iをかけるという演算をという記号で示すというものです。

 さらに運動エネルギーとポテンシャルエネルギーを加えた
 
をハミルトン演算子(ハミルトニアン、Hamiltonian)と呼び、これは量子力学ではよく使われます。なお、演算子は普通、特殊記号で表しますが、ここでは都合により本書とは違う記号を使っています。

 ハミルトン(Hamilton)というのは人名で、19世紀、イギリスの数学者です。当時、ニュートンの運動方程式を数学的に解析する解析力学という分野が発展し、ハミルトンは運動エネルギーとポテンシャルエネルギーを加えた関数を使うと座標変換などの数学的解析に便利なことを示しました。この関数が元祖のハミルトニアンで、量子力学のハミルトニアンは同じ物理量を表す演算子に転用されたものです。

 ハミルトニアンを使うと、シュレディンガー方程式は
   (1)
と簡単な形に書けます。しかも原子核、電子の数など系が変わってもこの式の形は不変です。

 多数の原子核、電子がある系でのハミルトニアンを本書では
 
と書いています。q1,q2・・・qfはf個の座標変数で、p1、p2、・・・pfはこの各座標変数に対応する運動量です。

 結局、ハミルトニアンは系の中の各原子核と電子の座標と運動量の関数ということになります。2つの直交座標なら前回の例のように座標変数はx,x,x,y,y,yの6個(f=6)です。この系は自由度が6の系と言います。

 前回の式から類推できるようにハミルトニアンの中の各項は単純に加え合わされているだけなので、グループ分けしてから足し合わせるような形に書くことができます。本書ではハミルトニアンを3つに分類して
 
と書いています。ここで、は原子核に関する座標と運動量のみを含み、原子核の運動エネルギーと原子核同士の間のクーロン力によるポテンシャルエネルギーからなります。は電子に関する座標と運動量のみを含み、電子の運動エネルギーと電子同士の間のクーロン力によるポテンシャルエネルギーからなります。は原子核と電子に関する両方の変数を含み、原子核と電子の間のクーロン力によるポテンシャルエネルギーからなります。

 このハミルトニアンを使って上に書いた(1)式と同じ形のシュレディンガー方程式が得られますが、自由度fが大きければ、実際には極めて多くの変数を含む複雑な式になります。いずれにしてもこんなに多数の項を含む方程式は解ける見込みはありません。しかし本書に書かれているつぎのことは大変重要と思いますので、そのまま書き写しておきます。

 「もしその解が得られたとしたならば、その一番エネルギーの低い状態が絶対零度で各原子核と各電子の安定な配置を与える筋合いとなる。従ってその解の型は核の配置についてみれば規則正しい結晶格子を作った状態をあらわし、それが絶対零度で現実に観測されるべき結晶型を与えるはずであって、・・・」

 つまりこのシュレディンガー方程式は半導体中の電子の状態を表しているという狭い範囲に留まらず、自然界にあるすべての結晶の形までを表しているということです。この式では表せない結晶が見つからない限り、この式は自然を表す基本的な意味をもった式なのです。

 このため、多少の簡単化、近似をしてでもこの式の解を求めることは大変重要な意味をもちます。つぎはその話へ入っていきます。




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