石くれと砂粒の世界

アクセスカウンタ

zoom RSS 電子のエネルギー分布

<<   作成日時 : 2011/04/25 21:24   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

 今回は、
   伝導電子の数=伝導帯の状態密度×エネルギー分布
のなかのエネルギー分布について調べます。

 これまで何度も書いたと思いますが、結晶のなかの膨大な数の電子についていちいち方程式を解くことは不可能です。それではどうするかというといろいろな近似を用いてきました。しかしその他に統計的な手法を用いるという手段もあります。

 統計といえば、平均値とか標準偏差とかいった全体を代表する値を求めることが思い出されるかも知れません。これらの数値のもとになるのが分布です。分布とは例えばある試験の成績で何点の人が何人いるか集計したものです。この集計をすれば、平均点も点数がどれくらいばらついているかを表す標準偏差も求めることができるので、その試験の問題が難しかったか易しかったかなどを判断できるわけです。

 ここで問題にするのは結晶のなかを動く電子がどんなエネルギーをもっているか、その分布がどうなっているかです。多数の電子はもちろん全部同じエネルギーをもっているわけではありませんが、かといってまったく無秩序にばらばらなエネルギーをもっているわけでもありません。あるエネルギー分布をもっています。本書(*)でもこの分布を求める理論を紹介していますが、ここでは少し違ったやり方を紹介します。

 結晶中にN個の電子があり、全エネルギーがEであるとします。電子はエネルギーE1、E2、E3・・・の各準位に入りうるとし、各準位の電子数をN1、N2、N3とします。つまり次式の関係があるとします。
   (1)
   (2)

 準位のエネルギーEiに対して複数の状態が存在し、それぞれに対応する波動関数(固有関数)が存在している場合を考えます。1つのエネルギー固有値に対して複数の固有関数が存在していることを「縮退している」と言います。ci個の状態があるならば、「ci重に縮退している」、あるいは「縮退度ci」などと言います。

 例として3つのエネルギー準位E1、E2、E3がそれぞれ3重に縮退している場合を考えてみます。この場合、電子の配置N1、N2、N3の組み合わせは表のようになります。ここで重要なことは電子は同じ状態には1つしか入れないということです。これはパウリの排他原理による制約です。

 エネルギーE1の準位だけに3個の電子が集中している場合、
 
の場合の系のエネルギーEは
 
です。E2、E3の準位にだけ電子がいる場合もそれぞれの準位のエネルギーの3倍が系のエネルギーになります。

 これに対して3つのエネルギー準位に各1個の電子がいる場合、
 
については、各準位の電子の固有関数は3種類のいずれかをとる可能性があります。したがって3×3×3=27種類の固有関数があることになります。系のエネルギーはどの場合も
 
です。

 また1つの準位に2個、他の準位に1個、3番目の準位は空いている場合があります。この場合電子の固有関数は3×3=9通りあります。系のエネルギーは
 
など3通りになり得ます。
画像

 上記の例を参考にして、Ni個の電子をci個の状態に割り振る場合の数を考えます。各状態に1個の粒子しか入れないので、最初の1個の電子はci通り、2番目の電子はci-1通り、Ni番目の電子はci-Ni+1通りの入りうる準位があることが分かります。したがってこのときの場合の数wiは
 
    (3)
となります。Ni!で割ってあるのは振り分ける順序は問題としないためです。さらにすべての電子、N1、N2、N3・・・についての振り分けを考えると、その総数wは
   (4)
で与えられます。ここで記号はiの違うものを全部掛け合わせるという意味です。

 ここで熱平衡状態においてどのような電子の配置が実現するかですが、系の各状態の現れる確率は平等です。このため系の固有関数の数がもっとも多くなるような状態が実現することになります。

 そこでwを最大にする電子の配置を求めます。そのためにテクニックとして上式の対数をとると便利です。
   (5)

 ci、Niは1より十分大きいとして、スターリングの公式
 
を使うと
   (6)
となります。

 (6)式をNiで微分して
   (7)
 wが最大になる条件は
   (8)

 一方(1)、(2)式より
   (9)
   (10)
です。

 (8)式を(9)、(10)式の条件で解くためにラグランジュの未定係数法というテクニックを使います。(9)、(10)式に定数α、βをそれぞれ掛けて(8)式に足します。
 
これが成り立つためにはカッコ内が0である必要があります。
 
これより
   (11)
が得られます。これをフェルミ・ディラック(Fermi-Dirac)統計と呼びます。電子数Niが縮退度ciに比べて十分小さいときは
   (12)
となります。これをボルツマン(Boltzmann)統計と呼んでいます。

 次回にこれを具体的に半導体に適用できるようにしていきます。

(*)植村泰忠、菊池誠著、「半導体の理論と応用(上)」、裳華房

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
電子のエネルギー分布 石くれと砂粒の世界/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる