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zoom RSS 共振型発光ダイオード

<<   作成日時 : 2012/06/17 21:53   >>

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 LEDの層構造のなかに反射層を設けて光出力を向上させるという前回のテーマとのつながりで、少し特殊過ぎるかも知れませんが、今回は共振型LEDを取り上げます。

 このLEDの構造の基本は、図A(特開平09-260783より)のように活性層(発光層)22の両側に反射層18、30を設け、共振器を形成したものです。共振器長Lは活性層中での発光波長の1/2程度に設定します。つまり図のように共振波の「腹」が活性層の位置にくるようにします。
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この構造をみると垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL、http://denkou.cdx.jp/Opt/LD01/LDF1_42.html)と同じように見えますが、レーザ発振はさせない発光ダイオードです。VCSELの場合はレーザ発振をさせるために共振器を形成する反射鏡は両側とも反射率を99%以上と高くする必要がありましたが、レーザ発振をさせる必要がないならばその必要はなく、少なくとも光出射側の反射率は低くして光の取り出しを大きくします。図では上部電極38の周囲に導電型を反転した電流阻止層40が設けられていますが、VCSELでは必須の強い電流狭窄は不要です。

 光を多く取り出すためなら上部反射鏡がない前回の構造でよいわけですが、共振器構造を採用する必要はなさそうに思われます。共振器構造に何か良い効果があるのでしょうか。これは上記特許にも簡単に言及されていますが、共振器QED(cavity quantum electrodynamics)効果と呼ばれる効果です。この効果を言葉で説明するのは難しいのですが、自然放出源を共振器中に置いて共振を生じさせると、外部に放出される光が増強されるという効果です。

 この効果自体は古くから知られていましたが(後日理論を取り上げる予定です)、初めて発光素子への適用が考えられたのは1990年代初頭と思われます。特開平03-229480や特開平05-275739などがそれに当たりますが、前者は日本のNTTによる1990年の出願、後者はアメリカのAT&Tによる1991年の出願(アメリカ)です。両方とも通信会社による出願であり、最初は通信用光源としてのLEDの応用が意図されたと思われます。

 具体的な利点は後者の明細書につぎの3点が挙げられています。第1には発光はその波長が共振波長となったとき増強されるという上記の共振器OED効果です。第2は後部反射鏡により出射光強度が高められる点です。第3は共振器を使っていることにより、スペクトル線幅が普通のLEDより狭くなる点です。高出力、狭線幅という特徴は通信用光源に適しています。共振型は応答も高速化することが期待され、これも通信用に適しています。
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 図Bは最初の特許(特開平09-260783)に載っている発光スペクトルの例ですが、共振型の場合、曲線a、b(両者は共振器長Lが異なる)のようにかなり狭いスペクトル線幅が得られます。λpと書かれた曲線は単一量子井戸活性層自身の発光スペクトルで、共振型でないLED発光のスペクトルに近いと考えられますが、このようにかなり広いスペクトルの広がりになることがわかります。

 最後に用語について少し触れておきます。上記のAT&Tの特許ではこのタイプのLEDのことをresonant cavity LED(RCLED)と呼んでいます。日本出願ではこれが「共振空洞LED」と訳されています。”cavity”を一般用語として訳すと「空洞」となるかもしれませんが、ここでこの訳語を使うのは不適当と思われます。”Resonant cavity”は単に「共振器」という意味で、NTT特許のように「キャビティ」単独でも「共振器」の意味に使うくらいです。

 そこでこの記事の表題は「共振型発光ダイオード」としました。また共振器長が1波長程度以下のような共振器を”micro-cavity”(微小共振器)と呼ぶことがあります。そこで微小共振器(またはマイクロキャビティ)LEDなどと呼ぶこともあります。

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