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zoom RSS 発光層に適した材料とは

<<   作成日時 : 2012/08/12 19:22   >>

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 LEDの発光波長(発光色)は発光層の材料のバンドギャップエネルギーによって決まります。ところが希望する発光色に相当するバンドギャップエネルギーをもつ材料を選びそれを発光層とするLEDを作ったとしても、うまく発光してくれるとは限りません。

 これが発光層として使える材料がかなり限定される理由の一つです。なぜそんなことになるのでしょうか。困ったことにこれを直感的に説明するのはほとんど不可能です。理論的にはもちろん説明がされているのですが、簡単な計算で結果を示すこともできません。

 ほとんど似た結晶構造をもった半導体でも光ったり光らなかったりします。具体的な例を挙げます。LEDとしてよく使われるV−V族化合物半導体のGaAsはもちろん発光する材料です。ところがV族元素のGaを、周期律表の1段上のAlに変えたAlAsはほとんど発光しません。もちろん結晶構造はどちらも同じで、これまで何度か出てきたように格子定数もほとんど違いません。それにもかかわらず一方は光り、一方は光らないのです。

 GaAsに含まれるGa元素の一部をAlに置き換え、混晶 AlGa1−xAs を作ることができ、これが発光素子に実用的に使われているのはご承知の通りです。

 GaAsのバンドギャップエネルギーは室温で1.42eVです。波長に直すと873nmの赤外光に相当します。またAlAsのバンドギャップエネルギーは2.16eVでこれに相当する波長は574nmで、これは黄色です。したがってAlGaAsのAl組成xを0から1まで変えてLEDを作れば、波長が873nmより短い赤外光から可視光の黄色までカバーできると予想できます。

 ところがAlGaAsが強く光る範囲は大体xが0.3より小さい範囲、つまりAl成分が少ない組成の範囲に限られます。組成とバンドギャップエネルギーの関係は正確には比例関係にないですが、大雑把には比例計算して求められます。X=0.3ではバンドギャップエネルギーは1.64eV程度となり、波長にして765nmとなります。これはもう赤外域に入った波長に当たります。つまりAlGaAsではほとんど赤外域の発光しかできないことになります。

 余談になりますが、AlGaAsのLEDでよく使われる波長帯のひとつに780nmがあります。組成はx=0.25前後に相当しますからよく光る範囲です。780nmは赤外光の範囲の波長ですが、実際のLEDは赤色に発光しているように見えます。780nmというのは発光波長の中心波長です。LEDの発光スペクトルはこの中心波長の両側にかなり広がりがあり、短波長側は赤色成分をかなり含んでいるので、赤色に光るのが見えることになります。

 さて、なぜ発光する半導体と発光しない半導体があるのかについて、なにも説明しないわけにもいかないので、少しだけ触れておきます。ただし上記のように通常の常識の範囲で直感的に理解できる説明は難しいので、以前に説明した3次元結晶のバンド理論の話(http://sunatsubu.at.webry.info/201102/article_4.html)を利用します。

 LEDの発光は半導体中に注入された電子と正孔が結合し、そのとき失うエネルギーが光になって放出されると説明されています。3次元結晶のバンド構造は図Aのようなイメージに書けます。縦軸は電子のエネルギーEで横軸は波数kで、これは運動量に相当します。
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 伝導帯(青い曲線)のもっともエネルギーの低いところ(底)に電子が溜まり,価電子帯(赤い曲線)のもっともエネルギーの高いところ(頂上)に正孔が溜まります。図Aのように等しい運動量(横軸k)のところに伝導帯の底と価電子帯の頂上があるときは、図の矢印のように電子が価電子帯に向かって落ち込み、そのとき失う伝導帯の底と価電子帯の頂上のエネルギー差ΔE(バンドギャップエネルギーに相当)に等しいエネルギーの光を放出します。このようなバンド構造をもつのが発光する材料の条件です。電子が価電子帯へ落ち込むことを遷移といいますので、このような材料を直接遷移型と呼びます。GaAsは直接遷移型半導体です。

 ところで3次元結晶においては原子の並び方が方向によって異なりますから、その方向によってEとkの関係が異なってきます。その結果、図Bのように伝導帯のエネルギー最小点と価電子帯の頂上が異なるkの値にきてしまうことがあります。この場合、電子は図BのXと書いたところに溜まり、正孔は価電子帯のΓのところに溜まります。電子が図Aのようにまっすぐ下の価電子帯へ落ちようとしてもそこには正孔がいません。正孔と結合するためには電子はkを変化させ、伝導帯のX点から価電子帯のΓ点へ向かって斜めに遷移しなければなりません。
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 この遷移自体は不可能ではありませんが、電子のエネルギーが光に変わるとき、エネルギーと運動量は保存されなければなりません。ところが量子論の要請で光は電子が失うこのような大きな運動量は持つことができません。このため斜めの遷移が起こっても運動量保存則が成り立つような光は存在しないことになります。発光を起こさせるには図の矢印のような遷移に相当する光を放出させ、破線のような運動量変化は何か他の現象に担ってもらうしかありません。このような2つの現象の組み合わせは起こりにくいので、発光は起こりにくく、このような材料は実用的なLEDには向きません。このような材料を間接遷移型と呼びます。AlAsは間接遷移型で、GaAsのGaを少しずつAlに置き換えていくと、Al組成比xが0.4位で間接遷移型に変化します。つまり図Aのようなバンド構造が徐々に図Bのような構造に変わっていきます。

 最初に触れたように、以上のようなことがなぜ起こるのか、直接遷移型と間接遷移型の物質は何がちがうのかを言葉で直感的にわかるように説明するのは難しいと思います。理論的にもかなり立ち入って正確なバンド構造の計算を行わないとその物質が直接遷移型か間接遷移型かについて結論を得ることはできません。ここでは材料の性質の違いとして受け入れていただくしかありません。なお、やや詳しい理論についてはいずれとりまとめるつもりです。






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