石くれと砂粒の世界

アクセスカウンタ

zoom RSS 希土類原子の発光

<<   作成日時 : 2013/04/29 21:13   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

 前回触れたように多くの蛍光体材料は希土類などの原子の発光を利用するものです。このため半導体結晶のバンド間発光とは考え方がかなり異なります。

 原子の発光は原子に束縛されている電子がエネルギーを失うときに起こります。言い換えれば高いエネルギーをもつ軌道にいた電子が低いエネルギーの軌道に移るときに起こる発光です。

 ただし励起光の波長と近い波長で発光したのでは波長変換の役目が果たせません。励起光の色とはっきり区別できる色の蛍光を発するためには特別な準位の構造が必要です。もっとも単純には図Aのような準位の構造があれば、波長変換が起こります。
画像

 励起光を照射してエネルギーの低い準位0(基底準位)から準位1へ電子を励起します。励起光は準位1と準位0のエネルギー差より大きいエネルギーをもっている必要があります。準位1に励起された電子は中間にある準位2へ落ちます(遷移すると言います)。このとき電子は準位1と準位2のエネルギー差に相当するエネルギーを放出しますが、そのエネルギーは光にはならず、熱として放出されます。つぎに電子は準位2から準位0へ遷移し、この2つの準位のエネルギー差に相当する波長の蛍光を発します。

 準位2と準位0のエネルギー差は準位1と準位0のエネルギー差より小さいので、蛍光のエネルギーは励起光のエネルギーより小さくなることが理解できます。このとき準位1に励起された電子はなぜ元の準位0に直接戻らないのか、準位1から準位2へ落ちるときはなぜ発光しないのかなどの疑問が残るかと思います。

 このような原子に束縛されている電子の準位やその間の遷移については量子力学を用いたかなり複雑な解析を行ってはじめて理解ができます。孤立した原子のエネルギーについては結晶のバンド構造に関連してちょっと触れたことがありますが、発光について基礎から理解するにはそこまで遡りさらに詳細な議論を理解する必要があり、それをするには延々と寄り道が必要です。ここではそこまではしないことにします。

 蛍光体材料として用いられる代表的な元素は希土類ですが、周期律表で3族のスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の下にある一枠に14種が押し込められたランタニド(ランタノイドと表記されることもあります)元素がよく用いられます。

 このランタニドは3つの電子を放出して+3価のイオンになりますが、このイオンの電子配置は以前紹介した表し方によれば

と書けます。特徴は5s、5p電子の軌道が完全に埋まり、それより内側の4f電子軌道が完全に埋まっていないことです。通常は内側の軌道が電子で埋まるとさらに外側の軌道に電子が入るようになるのですが、5s、5p軌道のエネルギーは4f軌道のエネルギーより低いためこのようになります。

 上式のNは1から14の整数で、ランタニド原子はつぎのように原子番号とともにN、すなわち4f軌道の電子数が1つずつ増えるという特徴をもっています。

 原子番号   元素名    元素記号  4f電子数N
  58    セリウム      Ce      1
  59    プラセオジム    Pr      2
  60    ネオジム      Nd      3
  61    プロメチウム    Pm      4
  62    サマリウム     Sm      5
  63    ユーロピウム    Eu      6
  64    ガドリニウム    Gd       7
  65    テルビウム     Tb      8
  66    ジスプロシウム  Dy      9
  67    ホルミウム     Ho      10
  68    エルビウム     Er      11
  69    ツリウム      Tm      12
  70    イッテルビウム   Yb      13
  71    ルテチウム     Lu      14
画像

 これら希土類は3価のイオンの発光の多くは4f軌道間または4fと5dの軌道間での電子の遷移によることがわかっています。発光ダイオードには可視域の発光が見られるEuやCeがとくに使われます。

 Euは上の表のように4f電子を6個だけもっていて4f軌道は完全に埋まっていません。軌道が完全に埋まっていれば電子の状態は1通りしかありませんが、軌道が埋まっていない場合にはエネルギーの異なる多くの電子状態ができます。これらの状態は量子力学的に角運動量を用いて区別されます。

 詳細に立ち入ることはできませんが、Euの4f電子が作る準位は図Bのように多く存在し、波長460nm前後の青色光(図の単位では大体22×103cm-1に相当)で基底準位から52と名付けられた準位に電子が励起され、これが50まで熱エネルギーを放出して落ち、ここから図のように72まで遷移すると波長610nmの赤色光を放出します。70から74の各準位への遷移も可能で、710nmから590nmの範囲の5つの波長の発光が可能です。赤色から黄色の蛍光体として利用されます。

 Ceの場合は4f電子は1個だけなので、5d電子軌道との間の遷移が主として起こります。一般にEuより短波長の発光が観測され、黄色から青色の蛍光体として利用されます。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
希土類原子の発光 石くれと砂粒の世界/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる