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zoom RSS 蛍光体の材料

<<   作成日時 : 2013/05/19 21:17   >>

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 前回説明したようにランタニド原子の発光に関係している電子はもっとも外側の軌道にはないので、発光する原子を囲んでいる周囲の材料は何のはたらきもしないように思われます。しかし実際には周囲材料は発光波長に影響を及ぼしています。

 その例をあげると、先に取り上げた再表WO98/05078にYAG蛍光体の特性が載っています。図Aは色度図で左下に示される青色LED(中心波長465nm)の発光色と中央付近に示されるYAG蛍光体の黄色の混色を示しています。
画像

 図中の1〜7までの番号はYAG結晶の組成のちがいに対応しています。組成によってこのように蛍光の発光色がかなり広く変化します。材料を変えることによって混色結果を図の斜線の範囲内で種々変えられることがわかります。

 ここで使用されている蛍光体の一般式は
  
で示されるCeを付活元素とするYAG蛍光体の1種です。番号1〜3はa=0(Gdは含まない)で、bすなわちGa組成を0、0.4、0.5と変えた場合に相当しています。AlをGaに置き換えていくと発光色は次第に緑色がかっていく傾向があるのがわかります。

 番号4〜7はb=0(Gaは含まない)で、aすなわちGd組成を0.2、0.4、0.5、0.8と変えた場合に対応しています。YをGdに置き換えていくと発光色は次第に赤みがかっていくことがわかります。

 このようにYAGの組成を変えることによりかなり発光色が変動することがわかります。その理由はこの特許にはなにも書かれていませんが、定性的には付活原子の周囲の原子の配置が変わると、付活原子の周辺にはたらく電場が変化します。これによって前回説明した4f軌道と5d軌道の電子のエネルギーが影響を受けて変化し、これによって発光色が変わると考えられます。しかし定量的にその変化を説明するのは非常に複雑な計算になり簡単ではありません。

 以上のように同じCeやEuを付活元素とする蛍光体でも周囲の元素の構成によってかなり影響を受けます。また発光色だけでなく、耐候性などにも影響しますから、非常に多くの種類の材料が存在します。すべてを網羅することは到底できませんが、代表的なものをいくつか紹介しておきます。

1.酸化物蛍光体
(1)シリケート蛍光体
 もっとも古くから知られた材料で、Euを付活元素とする青、緑、黄、赤の各色の蛍光体があります。Siの酸化物で一般式は
  
のような形です。R1はアルカリ土類金属で、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)のいずれかの元素の組み合わせになります。Rの組成を変化させることにより発光色が変えられます。

(2)アルミン酸蛍光体
 Euを付活元素とする青から緑の比較的短波長の蛍光体で、Alの酸化物です。大体は
  
のような形です。

(3)ガーネット蛍光体
 Eu、Ceを付活元素とする緑、黄など比較的長波長の蛍光体です。SiまたはAlまたはその両方を含む酸化物です。YAGのようにAlのみの場合はアルミン酸蛍光体の一種とも見なせます。この場合
  
のような形になります。R2はYAGのようにイットリウムYが代表的ですが、希土類のスカンジウムScやランタニド元素に置換されることがあります。またR3はAlを代表とするV族元素で、上記の例のようにAlの一部が同じV族のGaやInに置き換えられる場合があります。

 Siの酸化物の場合は
  
のような形になります。

(4)ハロ燐酸蛍光体
 Euを付活元素とする青など比較的短波長の蛍光体で、リンの酸化物ですがハロゲン元素を含むのが特徴です。一般式は
  
のような形になります。ここでXはハロゲン元素のフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)のいずれかです。

2.窒化物、酸窒化物
 サイアロン蛍光体が代表的です。サイアロンとはSiAlONの意味でSi34とAl23が互いの一部を置き換えた酸窒化物をこのように呼んでいます。蛍光体に使われるのは酸素を含まないSiとAlの窒化物に希土類が加わったものが一般的ですが、酸素を含むことも可能です。Si34には2種類の結晶形α形とβ形があり、サイアロンもこれに準じてα形とβ形に分類します。α−サイアロンは
  
という形で、これにアルカリ土類金属や付活元素を組み込んで例えば
  
のような蛍光体とします。比較的広い範囲の発光色が得られます。

 β−サイアロンは
  
という形で、蛍光体も
  
の形です。

 窒化物系、酸窒化物系は一般にシリケートなど酸化物系より高温での特性変化が少ないと言われています。LEDからの発熱で蛍光体の温度が上昇しても発光効率の低下が少ないという特徴です。

3.硫化物
 Gaなど3族あるいはZnなど2族元素の硫化物があります。Euを付活元素として青から赤まで広い範囲の色が出せます。

4.その他
(1)有機物
 有機分子にEuなどの付活元素を導入したものです。有機分子は多様なものがあります。

(2)量子ドット
 半導体の量子ドットのフォトルミネッセンスを利用するものです。量子ドットは直径がナノメートル程度と非常に小さいものですが、それでも多数の原子からできていますから、発光の原理は原子の発光とは異なります。

 ただ結晶が非常に小さくなるとバルクの場合にはない複数の量子準位が形成されてきます。その間の電子の遷移による発光は一見原子の発光と似たものに見えます。

 量子ドットは非常に小さい粉のようなものですから、デバイスに使用するには何かで支えてやらなければなりません。上記で説明した蛍光体も粉として使う場合は樹脂中に混ぜて(分散させるといいます)使いましたが、量子ドットもこれと同様な扱いができます。

 例えば特表2012-509604にはCdSeやInPの液中での製造方法が記載されています。半導体粒子の表面は化学反応しやすい状態なので、安定で透明な材料で覆ってやると扱いやすくなりますが、この覆いをシェルと呼んでいます。この半導体のコア/シェル構造の作り方も併せてしめされています。

 できた量子ドットを樹脂などのビーズ状のものに閉じ込めると、これが普通の蛍光体粒子と同じような取り扱いができますから、LEDの封止樹脂中に分散すればいいわけです。
この過程を示したのが図Bです。
画像

 蛍光体を利用した白色LEDについては以上で終わりにします。

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