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zoom RSS 静電破壊防止用中間層

<<   作成日時 : 2013/09/08 20:30   >>

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 前回で静電破壊については終わりにするつもりでしたが、書き落としたトピックスがあったので、今回もう少し続けます。

 発光素子の構造そのもので静電破壊に対する耐性を改善する手段として前回とは違った手段も提案されています。そのなかに中間層としての半導体層を追加するという提案があります。

 このような中間層を挿入して静電破壊耐性を向上させようという考え方はGaN系発光ダイオードを対象に1990年代後半頃からいろいろ提案されるようになっています(例えば、特開平09-92880、特開2000-286451など)。ただし、どれもなぜ効果があるのかはそれほど明確でありません。

 少し時代が下ってより効果がある層構造が提案されています。図Aは特開2007-180495に記載されているGaN系発光ダイオードの層構造を示す断面図です。n超格子層106、発光層107、p超格子層108が発光を担う層構造ですが、これらの層とnコンタクト層103の間に挿入されたiGaN層104とnGaN層105が静電破壊防止に効果のある層で「ESD層」と呼んでいます。
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 図Bはこの層の特性を示しています。(a)は横軸がiGaN層104の膜厚で、縦軸はこの層の表面粗さを示しています。RMSとは2乗平均(Root Mean Square)のことで表面粗さの1つの表し方です。固体表面の凹凸を観測する機器は何種類かありますが、それを使って試料表面に定めたx方向に距離Lを測定し、凹凸の形状がf(x)であったとします。このときRMSは
  
で表されます。表面粗さにはこの他にもいくつかの表し方が例えば算術平均粗さRaは同じ測定結果f(x)に対して
  
で表されます。いずれにしても凹凸が平均的にどのくらいあるかを示すもので、単位はμmとかnmとかの距離の単位になります。
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 図Bの(a)をみると、iGaN層の膜厚が厚くなるほど表面の凹凸が激しくなっていることがわかります。つぎに(b)をみると、今度は横軸が表面粗さで縦軸はESD生存率です。ESD生存率は測定条件の記載がありませんが、何個かの素子にある一定の電圧パルスを印加したとき、破壊しないで生き残った割合を示しています。

 表面が平らな方が破壊は起き難いように思われますが、実験結果はそうならず、iGaN層の表面粗さのある範囲で生存率が高くなっているのがわかります。

 さらに(c)の横軸はSi特性値となっています。nGaN層105はSiをドープしていますが、特性値はこのSi原子の体積濃度と膜厚をかけた値としています。この特性値が大きいほどESD生存率は向上しています。つまりiGaN層だけでなくその上のnGaN層の条件もESD生存率に影響していることが示されています。

 この特許ではiGaN層の表面粗さは表面にピット(小孔)ができるためとしています。この孔には上のnGaN層が埋め込まれます。このため導電率の高い尖った凹みがiGaN層表面にできることになり、ここに電流が集中することになります。

 このようなピットのある層の形成は先行する他の特許にも記載されています。図Cは特開2006-313771に載っている半導体層の断面図です。
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 サファイア基板1、バッファ層2、n型AlGaN下地層3の上に、Geを高濃度(1×1019cm-3程度)にドープしたGaN層4を成長すると、図のようなイメージのピットが発生します。ピットの密度は107個/cm2程度で、Geの濃度によってある程度コントロールできるとされています。さらにこの上にノンドープGaN層5を成長すると、ピットが埋め込まれ、表面が平坦になります。

 図の例ではさらにもう1回層4、5を成長し、その上に発光ダイオードを形成しています。こうすると上層の結晶欠陥が少なくなるため、発光効率が上昇し、静電耐圧も向上する効果があるとされています。

 このようなピットの存在は破壊を促進するようにも思えますが、その部分の大きさと密度が適当であれば、電流はうまく分散されるので、大きな電流集中、電界集中は防げるのではないかという意味のことが特開2007-180495には書かれています。

 図B(b)より最適なRMSは3〜12nmとなりますが、iGaN層は成長温度を850℃前後にするとこの適度なRMSが得られたとされています。また図B(a)から膜厚300nm程度とするのが適当ということになります。

 また、nGaN層のSi特性値(=膜厚×Si体積濃度)はあまり大きいと発光光度が低下するため3.6×1021を限度にすべきとされています。

 敢えて表面にピットがある層を挿入するという意外な方法で、静電破壊電圧は向上できるという興味深いトピックスです。

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