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zoom RSS 金属のマイグレーションの防止

<<   作成日時 : 2013/09/15 19:32   >>

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 今回の話題に入る前に、前回記事に一部追記をしましたことをお知らせしておきます。図Cとその説明の部分です。

 さて、発光ダイオードの劣化原因として、素子中での原子の移動が挙げられます。固体中の原子は気体中や液体中のように自由に動けないのですが、特別な場合には固体中でも移動が起こる場合があります。固体中の原子の移動は通常はわずかですが、非常に長い時間が経過すると無視できない量になる場合があります。

 半導体デバイスでは半導体層のほか、金属層や絶縁体層など種々の材料からなる層が積層されています。各層の材料や厚みはそれぞれ役割を果たすように設計されていますから、その中の原子が動いてしまうと、デバイスの特性が設計値からずれることになります。

 デバイスは使用時に電界がかかり、電流が流れ、温度が上昇しますから、原子が動きやすい状態になります。使用が長時間に及ぶとデバイス特性はどうしても次第に劣化してきますが、その一因はこのような原子の移動にあります。

 発光ダイオードに関する例を挙げます。

 発光ダイオードの発光層から出る光は通常四方八方に発散しますが、基板などに取り付けて使う場合は基板から上方に出る光が利用されるので、下方に向かう光は無駄になってしまいます。そこで以前に紹介したように素子の片側に反射構造を設けて下方に向かう光を反射させることにより有効に利用しようという考えがあります。 このうち基板側から出射させるタイプの場合は、半導体層の表面にある金属電極を反射層として兼用することができます。可視光の反射率が高い金属としては銀(Ag)やアルミニウム(Al)がよく知られています。ところがこれらを電極金属として使うには次のような問題点があります。

 これらの金属は他の金属や半導体中に拡散しやすい性格をもっています。このような原子の移動をマイグレーション(migration:人の移民とか鳥の渡りなど移動を意味する語です)と言うことがあります。とくに電極の場合は電圧を加えるのでより移動がしやすくなります。電界がかかった状態での原子の移動をエレクトロマイグレーションと言うことがあります。

 またこれらの金属はどの半導体層に対しても必ずしもオーミック接触がとれるわけではありません。電極と反射層を兼ねる場合にはこの問題も解決する必要があります。

 これらの問題を解決する手段として、もっともよく用いられるのは電極を多層化して役割を分担させることです。この多層電極について特許を調べると、いろいろな観点から様々な層構成の電極が試みられています。

 ここでは集大成的ないろいろな効果を織り込んだ電極構成の一例を紹介しますが、これがベストかどうかはわかりません。

 図は特開2008-192782に示されている素子構造の断面図です。サファイアなどの誘電体基板10の上に窒化物系の半導体層が形成されています。活性層12の上のp型層13の上に多層のp側電極が形成されています。
画像

 その層構成はp型半導体層13に接する層21が透光性かつ導電性をもつ酸化インジウムスズ(ITO)層です。その上が銀の合金からなる反射電極層22です。さらにその上がチタン(Ti)と白金(Pt)とを積層した拡散防止層23です。この上に厚い金(Au)層からなるパッド電極24が形成されています。

 各層の役割はつぎのようになっています。透光性電極層21は活性層からの発光を反射電極層22へ透過させます。またこの層は半導体層13とオーミック接触をする役割も担っています。さらにまた反射電極層22が半導体層13に接するのを防ぎ、Agなどが半導体側へ拡散するのを防いでいます。

 反射電極層22は活性層から透光性電極層を透過してきた光を基板側へ反射する役割をもっています。実施例では銀単独ではなくパラジウム(Pd)と銅(Cu)と酸素を少し含んだ合金とされています。酸素を含むことにより、銀がITO層に含まれる酸素と反応して黒く変色するのを防ぎ、またITO層から酸素が抜けて透明度が低下するのを防ぐ効果もあるとされています。

 拡散防止層23は反射電極層のAgがパッド電極のAu中へ拡散するのを防ぐ効果をもっています。金属としてはPdやPtに限らず、Tiやバナジウム(V)、タングステン(W)など種々の効果をもつ材料があります。

 なお、n側の電極はバナジウム層31、アルミニウム層32、金層33の構成です。

 以上の層構成で、反射電極層のAgがパッド電極と半導体層のいずれへも拡散しないようにし、かつ半導体に対してオーミック接触もとれるような電極が実現できます。このようにいくつもの特性を満足し、長期にわたって素子の特性を劣化させないような電極はどうしても複数の材料を使った複雑な構造になりがちで、どこまでの性能を求めるのかを明確にし、それに従ってできるだけ構造を簡略にすることも必要です。

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