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zoom RSS 発光ダイオードを作る方法(標準的な手順)

<<   作成日時 : 2014/07/06 20:04   >>

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 発光ダイオードの製造方法については折に触れて紹介してきましたが、全体を通しての工程(プロセス)については説明する機会がなかったようです。今回はその辺りに触れておきます。

 発光ダイオードは比較的単純な構造なので、製造プロセスはそれほど複雑ではありません。基本的には
 1.発光層などの半導体の積層構造を基板上に作る。
 2.この積層構造の表面に電極を着ける。
の2段階です。

 製品の場合はもちろん、研究開発の目的でも1つずつ素子を作ることはまずありません。ウェハなど一定の広さをもった基板の上で上記2段階のプロセスを行い、通常は最後に
3.チップを切り分ける。
段階が必要です。

 図はGaNなど窒化化合物半導体の発光ダイオードの典型的な製造手順を示しています(特開2002-252185より)。A列は基板となるウェハの加工状態を示しています。B列は発光ダイオード4素子分の拡大平面図です。C列は2素子分の断面図です。各行が工程を示していますので順に見ていきましょう。
画像

1行目:エピタキシャル成長工程
基板(ウェハ)1上に順にn型半導体層2、発光層3、p型半導体層4を結晶成長させます。代表的な結晶成長方法は有機金属気相成長(MOCVD)法です。この例では半導体層は3層だけですが、最低限必要なのはn型層とp型層の2層です。さらに必要に応じて層を設ける場合があります。例えば基板とn型層の間に結晶成長時に発生する欠陥を減らす目的でバッファ層を設けたり、p型層の上に電極とオーミック接触しやすくするためにコンタクト層と呼ばれる層を追加したりします。いずれにしても基板上に一様な層が作られます。

2行目:電極形成
 つぎに電極を着けます。電極はn型半導体層とp型半導体層の表面にそれぞれ接触するように設ける必要があります。ここで重要な点は電極は最終的に1つのチップに一組ずつ必ず必要なことです。そこでこの段階で最終的なチップの形、大きさを決め、ウェハ上にそれを複数配置するやり方を決めなければなりません。

 図のA欄、3行目、4行目のウェハ上に示されている縦線、横線がチップの区切り線です。
ここでは縦横10本ずつくらいしか描かれていませんが、実際にはもっとずっと多くなります。この例では2インチのウェハに300μm間隔で溝を作っています。2インチは大体5cmですから、160本以上の溝が作られることになります。

この溝の方向はつぎのように決めています。図のA欄のようにウェハは円形ですが、下部が直線状に一部欠けています。これはオリエンテーション・フラット(通称オリフラ)といって、円形ウェハの結晶の軸方向を示すように作られる決まりになっています。具体的にどの方向にするかは製品仕様によって決められます。そこで溝はこのオリフラを基準に方向を決めるのが便利です。これについては切断のところでもう一度触れます。

チップを正方形または矩形にするとすればオリフラと直角方向にもう一つの溝を作ることになります。これによってA欄、2行目のようにチップの配置が決まります(図では4個のみ描かれています)。このチップ一つ一つに電極を着けることになります。

この例では基板はサファイア(酸化アルミニウムの単結晶)で絶縁体です。基板が導体の場合は基板自体を電極にして裏面から外部に接続すればいいですが、この場合は表面側にn型半導体層とp型半導体層のそれぞれに電極を着ける必要があります。p型の方は最上層に電極5を着ければいいですが、n型層は基板と発光層に挟まれているので、p型層と発光層の一部分を削り取ってn型層を露出させ、そこに電極6を着けます。

この例ではn型層を露出させる加工をする際に素子と素子を区切る溝も合わせて加工しています(C欄、2行目参照)。このように素子周囲を溝で区切った素子をメサ型と言います。メサ(mesa)とは元はスペイン吾のテーブルという意味だそうですが、英語ではこれが転じてアメリカの西部の砂漠地帯などによくある上が平らな岩山のことを意味します。メサ型素子は形がこの岩山の形に似ていることから名付けられました。素子を区切る(分離する)方法はこれ以外にもありますが、これがもっとも簡単です。

3〜5行目:ウェハ切断、素子分離
 あとは素子を一つずつに切り離してチップ状にして完成です。この切り離しにもいろいろな方法があります。いきなりのこぎりで切ってしまう方法をダイシングと言います。ウェハの裏側に粘着シートを貼って切り離したときにチップが飛び散らないようにしたうえで、高速で回転する刃でウェハを切ります。半導体結晶は硬いので刃はダイヤモンドをコートしたものを使います。この方法は結晶の方位に関係なく切断できますが、少なくとも刃の厚さ分の切り代が必要でウェハの無駄が多くなり、またチップが欠けたりすることも起こりやすくなります。

 よく使われる方法は、切断する方向に沿ってウェハに溝を作り、その溝に沿ってウェハを割る方法です。このとき溝の方向が結晶軸に沿っていると、結晶はその方向には割れやすいので容易に切断ができます。結晶面に沿って結晶が割れることを劈開(へきかい)と言います。上記のようにオリフラを利用して溝の方向を決めると、溝の方向が結晶軸の方向になるので、この溝に沿った劈開がしやすくなり、便利です。

 溝を作る方法はいろいろあります。上記のダイシングで完全に切断せず、刃をウェハの厚みの途中で止める(ハーフカットという)方法があります。またスクライブといって刃物で傷を付ける方法もあります。機械的でなく絞ったレーザ光を走査しながら照射し、熱でウェハを融解、蒸発させる方法もあります。エッチングでも溝は作れます。

 ところで上記のサファイア基板は六方晶系の結晶形をもっています。これはGaNも同じです。この結晶形の場合、C面と呼ばれる面をウェハの表面にする場合が多いのですが、その場合劈開しやすい方向はウェハ面上の正六角形の辺の方向になります。つまりオリフラを一つの結晶方位に一致させると、これと直角方向は劈開面になりません。立方晶系のGaAsなどではこのような問題は起きません。

 上記特許ではこの性質を逆手にとって利用し、最初に劈開により細長いバー状のチップを作ります。このときこれと直角方向は劈開面でないので、つぎにチップを切断するまで、バー状チップが不用意に割れてしまうのを防ぐことができる利点があります。劈開面に沿わない方向の切断は距離が短いのでそれほど問題になりません。

劈開は刃先の鋭い刃物を溝部分に当てて押す方法で行われるのが普通です。ウェハは粘着シートに貼られているので、切断後も散らばりません。シートは伸びるので直角な2つの切断方向に引き延ばすと個々のチップの間に隙間ができます。この状態で真空吸着などを使って個々のチップを取り外すことができます。

 以上が発光ダイオードチップを作る標準的な手順です。

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