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zoom RSS 有機エレクトロルミネセンス素子

<<   作成日時 : 2014/08/17 21:19   >>

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 今回から有機材料を用いたエレクトロルミネセンス(EL)素子について考えていくことにします。

 歴史的にみると、前回まで取り上げてきた無機材料をベースにしたEL素子からそれほど遅れずに、同じような構造で無機材料を有機材料に置き換えたEL素子は提案されています。例えばアメリカのダウ・ケミカル社は1960年代初めにアントラセンにテトラセンを少量添加した溶液を塗布する方法で有機薄膜を形成し、これを発光層とする交流駆動型のEL素子を提案しています(US 3173050)。これはまさに電界発光素子の有機版と言えます。

 これに対して現在、有機ELと呼ばれている素子の原形となる構造はここから約25年後の1980年代になって同じアメリカのイーストマンコダック社によって提案されました。一連の特許としては1980年代前半から出願が始まっていますが、集大成的なものは1987年出願のUS 4720432 (1988)(対応日本出願は特開昭63−295695)です。これを見ながら構造を紹介していきます。

 図Aは素子の基本構造を示しています。この素子は直流駆動型ですので、アノード(陽極)102とカソード(陰極)104の2つの電極に挟まれています。アノードに接する層がホール(正孔)注入層108です。その上にホール(正孔)輸送層110があり、この層が発光層としてはたらきます。そしてこの層とカソードとの間に電子注入輸送層112が設けられています。この3層はいずれも有機材料層です。
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 このような層構造により、この素子のアノードにカソードより高い電位をかければ、素子は順方向バイアスされることになり、電子と正孔が素子内に注入され、それが再結合して発光することになります。

 この構造から気づくように正孔注入、輸送層は化合物半導体のp型層に、電子注入。輸送層はn型層に相当し、素子はpn接合をもっていると考えてもよさそうに見えます。しかもこの素子は注入されたキャリアによって発光が生じるので、電界発光型とは言えず、注入発光型と言った方が正しいと考えられます。つまり有機EL素子はむしろ有機発光ダイオード(OLED)といった方が適当な発光原理をもっていると言え、一部では実際にOLEDという語も使われています。

 それにもかかわらず依然としてこの素子が有機ELと呼ばれているのは、初期の有機材料を用いた電界発光素子の流れを汲んでいるためと思われます。また確かに結晶を用いた微少な素子である発光ダイオードに比べ、かなり大面積で、可撓性のある素子などができる有機ELは見た目には発光ダイオードとは違う範疇に属するとも言え、その辺りがなかなか微妙で、「有機EL」という語が使われているのはこのような事情によると思われます。

 このイーストマンコダック社の有機ELの発光層の材料としては複数の例があげられています。代表例を以下に示します。

 まず、正孔注入層としてはポルフィリン化合物があげられます。その一例は銅フタロシアニンという色素としてよく知られた有機化合物です。化学式は図Bのような形で、MのところにCu(銅)が、QのところにはN(窒素)がそれぞれ入り、T1、T2のところに6員環(ベンゼン殻)がついたものです。
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 正孔輸送層の材料としては芳香族3級アミンという化合物群があげられます。3級アミンというのはアンモニアのNH3の水素がすべて炭素を含む有機基に置き換えられた化合物のことで、具体的に使われているのは、図Cのような化学式で表される1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)―シクロヘキサンという物質です。これは同社の先行特許US4539507(対応日本出願:特開昭59−194393)にすでに示されています。
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 電子輸送層はキレート化オキシノイド化合物といわれる化合物で、具体的には図Dのようなトリス(B−キノリノール)アルミニウムという物質があげられています(MをAlとする)。この物質はAlqと略称されてよく知られており、上記特許に図Dの化学式は記載されていません。
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 なお、アノードは透明導電層のITO、カソードはMgとAgの合金層とされています。

 有機ELを考えるうえで、なぜ上記のような物質群が選ばれるのかという疑問がつきまとうと思います。それを考えるには有機分子内の電子の挙動を知らなければなりません。有機分子内の電子の動きは化合物半導体結晶中の電子の動きとはまったく異なります。これを説明するのは大変難しいのですが、次回以降少しだけ勉強してみようと思います。

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