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zoom RSS 電子輸送層と正孔輸送層

<<   作成日時 : 2014/12/28 21:43   >>

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 前回まで有機分子の発光のメカニズムを調べてきましたが、これを基礎に有機エレクトロルミネセンス(有機EL)の動作について取り上げていきます。

 すでに概略の層構造については紹介しましたので、少し重複しますがまずは素子の全体構造を説明し、次いで個々の部分に入っていこうと思います。

 有機ELの発光は、無機結晶半導体LEDと違って接合という概念がなく、基本的に一つの分子層によって起こります。したがって分子層の両面に電極を着けた構造が基本構造と言えます。これを縦軸にエネルギーをとったエネルギー図で表すと、図Aのようになります。
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 陰極(カソード)から電子が、陽極(アノード)から正孔が、それぞれ発光層に入り、発光層内で再結合して光を出すことになります。発光波長は基本的に発光層を作っている分子のLUMOとHOMOのエネルギー差に相当します。

 ここで電子が発光層に入るためには発光層の電子親和力と陰極の仕事関数の差が作るエネルギー障壁を乗り越えなければなりません。また正孔が発光層に入る(発光層のHOMOにいる電子が陽極に引き出される)には、発光層のイオン化エネルギーと陽極の仕事関数の差が作る障壁を乗り越えなければなりません。

 効率よく発光を起こさせるためにはこの陰極と陽極にできる障壁をできるだけ小さくする必要があります。これは人が行う操作では調整できず、電極の材料を選択するしかありません。図Aでは陰極1、陽極1とも仕事関数が等しく描かれ陰極と陽極が同一材料であることが示されています。この例ではやや仕事関数の小さめな材料が選ばれています。

 この場合、陰極と発光層の間の障壁は低くなるので電子は入りやすいですが、陽極と発光層の間の障壁は高くなってしまい正孔は入りにくいことになります。このような場合、発光層中の電子が正孔より多くなってしまい、再結合する相手の正孔がいなくて余った電子は発光に寄与できず無駄になります。これを改善するためには、陽極の材料を仕事関数の大きなもの(陽極2)に変えればよいでしょう。陰極、陽極を同じ材料にする必要はまったくないからです。

 しかし電極として使える材料をいくら探しても理想的な仕事関数をもつ材料が見つかるとは限りません。金属元素の種類は限られており合金などを含めてもあまり広い範囲で仕事関数が選べるものではありません。現実的に使える材料は化学的に安定で、有機分子層の上に容易に層を作れるあまり稀少でなく廉価な材料でなければならず、そんなに選択肢はありません。また発光素子の電極ですから少なくとも陰極と陽極の一方は透明な材料が望まれるのが普通でしょう。このように電極材料の選択は制約が多く、必ずしも素子設計に見合ったよい材料が見つかるとは限りません。

 そこで考えられたのが発光層と電極の間にさらに有機分子層を挿入した構成です。図Bに示すように、陰極と発光層の間に電子輸送層、陽極と発光層の間に正孔輸送層を挿入します。このような構成は例えば特開平7−105066などに記載されている典型的なものです。
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 電子輸送層はその電子親和力が陰極の仕事関数と発光層の電子親和力の中間に来るように選ばれます。発光層の電子親和力と陰極の仕事関数差はできるだけ小さくするように選びますから、陰極と電子輸送層、電子輸送層と発光層の界面の障壁はそれぞれ小さくできます。正孔輸送層はそのイオン化エネルギーを陽極の仕事関数と発光層のイオン化エネルギーの中間に来るように選びます。はたらきは陰極側と同じです。

 陰極と発光層の間の障壁がそれほど大きくない場合には電子輸送層を省略してもよく、陽極と発光層の間の障壁がそれほど大きくなければ正孔輸送層を省略しても構いません。逆に電子輸送層や正孔輸送層を挿入してもまだ十分でない場合にはさらに中間層を追加する場合もあります。あまり層数を増やすのは製造が大変になるので、特性とのバランスで素子の構成は決定されます。

 電子輸送層は電子親和力が大きい材料が選ばれますが、そのような材料はイオン化エネルギーも大きい場合が多く、これはよい効果をもたらします。図Bでもわかるように、発光層に入った正孔は発光層と電子輸送層の間にできる高い障壁のため、陰極に出て行きにくくなります。このため発光層に留まるので、多少相手の正孔が少なくても発光に寄与する確率が高くなります。

 同じことが正孔輸送層にも言え、正孔輸送層は電子親和力が小さい場合が多く、発光層の電子に対して障壁を作り、陽極にあふれ出すのを防ぐはたらきをします。

 また電子輸送層はその名の通り、電子が移動しやすい材料が選ばれます。正孔輸送層は逆に正孔が移動しやすい材料が選ばれます。具体的な材料については別に取り上げる予定です。

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