石くれと砂粒の世界

アクセスカウンタ

zoom RSS 白色発光EL

<<   作成日時 : 2015/03/01 17:16   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

 少し話が前後しますが、有機ELの発光色について取り上げることにします。有機分子の発光色を予測するには分子軌道法によって一重項、三重項のHOMOとLUMOを計算すればよいわけですが、この計算を行うには対象とする分子を指定しなければなりません。しかし分子の種類は膨大ですから、ある程度は経験的に当たりを付けることが必要と思われます。また実際の色は実験的に人が見分けなければなりません。

 はじめに照明用として重要な白色発光を考えます。白色の発光を得る原理は無機半導体のLEDと同じで、補色関係にある2色を混合するか、または3原色を混合する方法を用います。LEDの場合、蛍光体を利用してLEDの発光波長を波長変換するのが一般的です。有機ELでも後述のように同様な発想はありますが、異なる発光色の発光を同時に起こさせ、それを混合する方式の方が多いようです。これは以下に述べるように2色または3色の発光を1素子内で可能にするのが、LEDよりやりやすいからと思われます。

 図Aはプリンストン大学によって発表された白色発光有機ELの例です(特表2004-522276より)。3原色を発光する3種類のIr錯体をそれぞれ別の層にして積層しているのが特徴です。このような構造はLEDでもありますが、無機半導体結晶の場合は格子整合という制約があるので、実用的な素子は実現できていません。真空蒸着や塗布などにより有機発光層を形成する有機ELの場合にはそのような制約がないため、圧倒的に自由度が高いと思われます。
画像

 図示されているように各層は共通のホストであるCBP層中にそれぞれ発光分子を数パーセント混合しています。各層の発光分子の混合濃度や層厚を調整すると発光色が微妙に調整でき、これは白色の演色性を高めるうえで大変有利です。

 別の構造としては図Bのように1つの層の中に複数の発光分子を混合して分散するという発想も早くからありました(特開平2-261889より)。発光層が単層で白色が出せるので素子構造が簡単になります。
画像

 上記の例は単純に2種類あるいは3種類の分子を混ぜるという考え方でしたが、プリンストン大学では少し違う考え方の素子を開発しています(特表2005-514754)。基本的な考え方は発光分子が孤立している場合と凝集している状態では発光波長が異なるという性質を利用するということです。

 ある種の分子(モノマー)は2つ結びついて二量体(ダイマー)を形成することがあります。とくに一方の分子が励起状態にあるとき、これをエキシマ(エキサイマー)と呼びます。
一般にモノマーの発光波長よりエキサイマーの発光波長は長くなります。上記の例はこれを利用したものです。

具体的には適度な濃度でホスト中にゲスト分子を分散すると、ゲスト分子の一部はモノマーのまま残り、その他の一部がエキサイマーを形成する場合があります。このような状態ができれば、モノマーとエキサイマーに対応した両方の発光が得られます。分子をうまく選べばこの両方の発光が混合されて白色発光を得ることができます。
画像

 この文献ではエキサイマーを形成する性質をもっている白金(Pt)錯体を利用しています。図Cは4種類のフィルム試料のフォトルミネセンスです。ホストはいずれもCBPでこれにPt錯体のFPt(acac)(右の構造式参照)を添加しています。フィルム1は無添加のCBPフィルム、フィルム2はFPt(acac)を1重量%未満、フィルム3は約7重量%加えています。
画像
 CBPの発光は300〜400nmの紫外域にあり、FPt(acac)モノマーは470nmと500nm付近にピークをもっていて青緑色に発光します。FPt(acac)の濃度が高くなるとエキサイマーが形成され、フィルム3では570nm前後にブロードなピークが現れ、オレンジ〜赤色の発光が生じます。またCBPの400nm付近の発光が消えています。これによりモノマーの発光とエキサイマーの発光が混合してフィルム3は白色発光します。

 フィルム4は青緑色の発光成分を増強するため、さらにイリジウム(Ir)錯体のFir(pic)(図Aの構造図)を加えています。Ir錯体はエキサイマーを形成しない性質があるため、460、500nmのピークだけを増強することができます。これにより白色光の演色性が向上できます。

 上で触れたようにLED同様に蛍光体を使うという考え方もあります(例えば特開2007-201491)。これまで紹介した白色発光は混合する各色の発光がいずれもエレクトロルミネセンス(EL)でした。つまりいずれも電子−正孔対が再結合して発光したものです。これに対して蛍光体を利用する場合は青色など1つの発光色だけがELで、これと混色する光はEL光で励起された蛍光体からの発光である点が異なります。
画像

図DのようにEL発光層と蛍光体層を積層する場合とEL発光層中に蛍光体も分散してしまう場合とがありますが、LEDの場合と違って蛍光体層も電極の間に挟まれているので、蛍光体層とEL発光層の区別は外見の構造からは判別がしにくくなっています。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
白色発光EL 石くれと砂粒の世界/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる