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zoom RSS 固体中の電子伝導

<<   作成日時 : 2016/01/11 20:50   >>

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 長く更新が滞りましたが、再開します。

 前回のトンネルダイオードを流れる電流の理論を紹介するつもりでいましたが、そのベースになる固体(とくに半導体)中の電子の伝導現象についてきちんと取り上げていないことに気付きました。そこで少し回り道になりますが、この機会に調べてみることにしました。

 以前の記事で電子の運動が古典力学(ニュートンの運動方程式)にしたがうとした理論を紹介したことがあります。負の電荷をもつ電子を電界中におくと力がはたらいて電子が運動しますが、この場合、電子はどんどん加速しますからオームの法則にしたがう定常電流はこれだけでは説明できません。

 そこで電子の加速を妨げる要素、例えば原子との衝突などを考慮すると電流が定常になることが説明できます。このことはすでに説明しましたが、簡単に復習しておきます。

  固体中の電子を質量m、負電荷−eをもつ粒子とし、これを電界Eのなかに置いた場合、つぎの運動方程式が成り立ちます。
    (1)
ただしvは電界Eの方向に沿った電子の平均速度、τは緩和時間と呼ばれる定数です。(1)式右辺第1項は電界中に置かれた電荷にはたらく力を表し、第2項は速度に比例してはたらく力で電界による力とは逆方向にはたらきます。

 この式は空気中を重力によって落下する物体についての運動方程式と同じ形で、その場合の右辺第2項は空気の抵抗を表します。固体中の電子についても原子との衝突などによって加速が妨げられる効果をこの右辺第2項が表しています。

 (1)式の微分方程式はt=0でv=0とすると
    (2)
というかたちの解が得られます。ここでv
    (3)
となります。

 つまり電子は初め加速されて速度が増加しますが、やがてv=vに落ち着くことが示されます。このとき電流Jは
    (4)
で定義されます。ここでnは電子の数です。電子の速度が一定に落ち着いたとき、(3)式を(4)式に代入すれば、
    (5)
となり、電流Jが電界Eに比例するオームの法則が示されます。

 大方の電流はこれで説明ができますが、ここで目的にしているトンネル電流などは説明ができません。その理由は電流にかかわる多数の電子がエネルギー分布をもっていることによります。

 この電子のエネルギー分布についてもすでに説明をしていますが、電子は熱平衡状態ではフェルミ分布fに従います。
    (6)
ここでεFはフェルミエネルギーです。電子のエネルギーεkは次式で示されます。
    (7)
つまりエネルギーεkは波数kの2乗に比例します。
画像

 したがってf(k)は図のようにkの正負に対して対称なグラフ(青線)とります。この系に電界E、すなわち力F=eEを加えると、分布は熱平衡状態f(青線)から新たな分布f(赤線)にずれます。ただしこのずれもどんどん増大するわけではなく、上記の運動方程式(1)の場合と同じように、電子が原子と衝突するなどの影響による分布の変化があり、あるところで落ち着くと考えます。分布の時間変化df/dtは
    (8)
と書けます。ここで右辺第1項は外力による分布変化でドリフト(流動)項と呼ばれ、第2項は衝突などによる分布変化で衝突項と呼ばれています。

 この式はボルツマン(Boltzmann)方程式と呼ばれています。元来気体の分子運動について導かれた式ですが、後に固体中の電子にも拡張適用されました。固体の場合を区別してボルツマン−ブロッホ(Boltzmann-Bloch)方程式という場合もあります。

 今回はここまでにし、次回にこの式と電流との結びつきについて説明します。 

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