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zoom RSS トンネル電流

<<   作成日時 : 2016/02/24 21:23   >>

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 トンネルダイオードのpn接合に流れる電流の理論を考えてきましたが、今回ようやく最終的な電流の式を導きます。

 トンネル電流は基本的に電位障壁に流入する電子の流れと電子が障壁を透過(トンネル)する確率の積で表されます。流入電流はすでに考察した固体中を流れる電流ですが、以前に検討したような衝突項は敢えて考えません。なぜなら障壁が電子の流れを制限する役割を果たしているからです。

 電流密度は電子の速度 × 濃度で表されます。電子のk空間での速度dk/dtは
  
で表されます。ただしEは電界です。またk空間の平面内のk+dkの範囲内の電子濃度Δn(k)を考えると
  
と書けます。ただしF(ε)はフェルミ分布関数です。したがって電流は
    (1)
となります。エネルギーεと波数kの関係は
  
ですから、(1)式は
    (2)
となります。

 上記のようにトンネル電流は(2)式とトンネル確率Tの積で表されるはずですが、さらに条件が必要です。トンネル現象はトンネルした電子を受け入れる障壁の反対側に空いた状態がないと起こりません。そこでトンネルする前の電子がいる状態1(具体的には伝導帯など)のフェルミ分布をF、トンネル後に入る状態2(価電子帯など)のフェルミ分布をFとすると、状態1から状態2へ向かう電流密度は
    (3)
となり、逆方向の状態2から1へ向かう電流密度は
    (4)
となります。差し引きの電流密度は(3)式から(4)式を差し引いて
    (5)
が得られます。

 さてここまで式を導いてきましたが、この式とトンネルダイオードの電流−電圧特性はまだ結び付きません。電流−電圧特性を表すための工夫が必要です。
画像

 図Aはpn接合トンネルダイオードの模式的なバンド図です(以前の記事での図D(d)に相当します)。図では電子はn型半導体の伝導帯の底よりかなり大きいエネルギーまで電子が詰まった状態(縮退したといいます)からp型半導体の価電子帯の上部の空いた状態へトンネルする様子を示しています。この場合、n型半導体側の電子濃度はn型半導体側のフェルミ分布F と伝導帯の状態密度をNの積で表され、p型半導体側の空き状態の密度は同様に(1−F)と価電子帯の状態密度Nの積で表されます。したがって(4)、(5)式はつぎのように書き換えられると言えます。ただし定数はまとめてAと表しました。また積分範囲は価電子体の頂上Eから伝導帯の底Eまでと特定できます。
    (7)
    (8)
(7)式と(8)式の差し引きにより、(6)式に対応する電流は
    (9)
となります。

 この(9)式では電界Eが定数のなかに入って表から消えてしまいましたが、外部からの印加電圧によってフェルミエネルギーなどのエネルギー関係が変化するので、電流−電圧特性の概要はこの式を使って得ることができます。ただし以下のような近似を考慮する必要があります。

 まずトンネル確率Tは外部電圧の変化にはよらない定数とします。また伝導帯と価電子体の状態密度はおおよそ次式で表されるとします。
    (10)
    (11)
また、縮退の程度を表すVとV(図A中に示す)は小さく、おおむね2kより小さいとします。
  

 まずフェルミ分布は指数関数を級数展開して1次の項までとり、
  
  
と近似します。さらにこの分数関数をもう一度展開し、1次の項までとると
    (12)
と1次関数で近似されます。同様にして
    (13)
(12)、(13)式を(9)式中のF−Fに代入すると
  
となります。右辺は図Aから確認できます。またNとNはトンネル電流が流れている状態ではほぼ等しいとみなしてよいので、
  
と近似すれば、(9)式は積分が容易に計算できて
  
となります。再び図Aを参照して
  
ですから、結局電流密度Jは
  
 これが求める電流密度J−電圧V特性です。概形をグラフに描いてみると図Bのようになり、定性的ではありますが、負性抵抗特性が得られるのがわかります。
画像


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