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zoom RSS トンネルダイオードの応用(その2)

<<   作成日時 : 2016/03/13 19:44   >>

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 トンネルダイオードの応用の話をもう少し続けます。トンネルダイオードというよりもう少し広い意味の負性抵抗素子の応用です。

1. 増幅回路
 図Aのような回路で信号源から入力した信号vを負荷抵抗Rの両端から信号vとして取り出すことを考えます。負荷抵抗Rに直列に負性抵抗−Rが接続されています。抵抗rは電源の内部抵抗や配線の抵抗分です。負荷抵抗から取り出される電力pは負荷抵抗に流れる電流をiとすると
  
ですが、電流iは
  
ですから、負性抵抗Rを大きくしていくと、回路全体の抵抗はr+Rより小さくなるので電流は増大し、出力電力は負性抵抗のない場合に比べて大きくなります。これは普通の正の抵抗だけの回路では起こりえない現象です。
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2. スイッチング
 回路的には上とほぼ同じで抵抗と負性抵抗が直列に接続した回路です(図B)。電源の内部抵抗は無視しました。電源電圧をV、負性抵抗両端の電圧をVとすると
  
が成り立ちます。負性抵抗素子のI−V特性は図Cの赤線とすると、上式は青線で示した直線で表されますから、赤線と青線の2つの交点が実際に実現される電流−電圧特性になります。つまりION−VONのオン状態とIOFF−VOFFのオフ状態の2点いずれかで安定することになります。このため電流が2点間でオン、オフでき、負荷抵抗の両端の電圧も2点間で切り換えられます。もちろん交点が2つになるように負荷抵抗を選ぶことが必要になります。
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3. その他
 トンネル接合はpn接合でありながら図Cにもみられるように原点付近では順逆両方向に電流が流れるという性質があります。これを応用した例があります。以前にも触れていますが、再度紹介しておきます。

タンデム太陽電池のようにpn接合を2つ以上直列にする必要があるとき、そのままpn接合を積層するとpnpnとなって真ん中の接合がnpとなるので、逆バイアスがかかり電流が流れなくなってしまうという問題があります。そこでpn−トンネルpn−pnとすると電流が流れなくなる問題は解決されます。

 これまでに触れた例では、タンデム太陽電池のほか、メモリー素子などがあります。


<トンネルダイオードに関する文献>
 以上でトンネルダイオードの話は終わりますが、これまで参考にした文献についてまったく触れずにきてしまいましたので、最後に参考文献(書籍)を上げておきます。

まずトンネルダイオード全般については
(1)S.M.Sze, “Physics of Semiconductou Devices”,(1969)
を参考にしました。半導体デバイスの教科書として有名な本で現在も改訂版が出ていますが、最新版(2006年)の邦訳は無いようです。この本はトンネルダイオードに1章を費やしていてここでは触れていない詳しい記述があります。

トンネルダイオードの理論については
(2)J.L.Moll, “Physics of Semiconductors”, (1964)、
邦訳、j.L.モール「半導体の物理」(近代科学社、1967)があります。かつて名著として知られていましたが、もはや古本でしか手に入らないと思います。この本にも「トンネル効果」の1章があります。ここで扱った理論の大筋が記されていますが、必ずしもわかりやすくありません。

ボルツマン方程式による半導体中の電流の理論については多くの本があります。ここで参考にしたのは
(3)阿部龍蔵、「電気伝導」(培風館、1969)
(4)御子柴宣夫、「半導体の物理」(培風館、1982)
(5)川村肇、「半導体物理」(共立出版、1987)
の3冊です。(4)は現在も改訂版が出ていますが、他は古本だのみと思います。ボルツマン方程式による電気伝導の説明は式の展開や近似の仕方などがそれぞれ少しずつ異なっています。(3)はボルツマン−ブロッホ方程式という呼称を使っています。ここでは(3)と(4)を折衷した説明になりました。

トンネル確率について忘れてはならないのは
(6)L.D.ランダウ、E.M.リフシッツ「量子力学」(ちくま学芸文庫、2008)
です。原著は1971年に出版され量子力学の名著としてよく知られていますが、現在、文庫版で読めるようになっています。28章「透過係数」にトンネル確率の理論が記載され、これが多くの文献で引用されています。WKB近似についてはこの本で扱われていませんが、多くの量子力学の教科書に記されていますので参照して下さい。

 次回より他の負性抵抗デバイスに移ります。

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