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zoom RSS pnpn構造素子の解析(その2)

<<   作成日時 : 2016/05/19 21:31   >>

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 前回、サイリスタは2つのトランジスタの組み合わせで表せ、この2つのトランジスタの電流増幅率の和が1になるところでサイリスタが負性抵抗領域にスイッチングすると説明しました。これを表すアノード電流Iの式を再掲します。
 
ここでα、αはそれぞれアノード側およびカソード側トランジスタの電流増幅率、Iはゲート電流です。

 通常、トランジスタの電流増幅率はほとんど1に近い値をとるので、αは1どころか2に近くなってしまうように思えてしまいます。

 しかしトランジスタの電流増幅率はエミッタ電流を十分に流した場合の値を通常想定しています。サイリスタの場合は真ん中の接合が逆バイアスになるので、負性抵抗領域に入る前の状態では、エミッタ電流に相当するアノード電流は非常に小さくなります。このような小電流における電流増幅率がどうなるかをまず考えます。

 電流増幅率αの定義は
 
であり、エミッタへ注入された電流がどれだけコレクタへ到達するかを示すパラメータです。この電流増幅率αはエミッタ電流IEに依存することが知られています。その理由はつぎのように考えられます。

 npnトランジスタで考えると、n型エミッタに注入された電子はp型のベース領域に入ると一部が正孔と再結合して消滅し、残った電子がコレクタ側へ通り抜けてコレクタ電流となります。エミッタ電流が小さいうちは、多くの割合の電子が再結合して消滅するため、コレクタへ流入する電子は少なくなり、電流増幅率は小さくなります。

 しかしエミッタ電流が大きくなるとエミッタから入ってくる電子数が増加し、再結合に関わるベース領域の正孔はこれに見合うように増加しないので、再結合しないで残る電子数が増加します。これによりコレクタ電流が増え、したがって電流増幅率も増加することになります。

 以上の説明を数式的に表現したいところですが、近似的な式でも最終的には数値計算によらないと電流増幅率の変化の様子がわからないと思われますので、ここではやや定性的な説明に留めたいと思います。

 以前に説明したようにトランジスタの電流増幅率αはエミッタ注入効率γとベース輸送効率δの積で表されます。
   (1)
このγとδはいろいろな表式がありますが、定義を含めて
   (2)
   (3)
と書けます。ここでInEはエミッタ電流の電子電流成分、IpEはエミッタ電流の正孔電流成分、Wはベース領域の幅、Lはベース領域における電子の拡散長です。

 npn型ではエミッタ電流の増加は主としてInEの増加により、IpEはそれほど変化しないのであまり寄与しません。したがって(2)式から分かるようにγはエミッタ電流の増加に伴って増加し、やがて1に近づくことがわかります。

 一方δは(3)式から分かるように、Wの薄い素子では1に近くなります。トランジスタならWを薄く設計すればいいわけですが、サイリスタの場合内側のn層とp層をともに薄くすることは、この部分に高電界がかかるため難しいと言えます。

 以上より、サイリスタにおいては、2つのαをともに大きくすることはなかなか難しく、α+αを1に近づけることは必ずしも容易ではありません。

 図Aはサイリスタの構造を示す図、図Bはこれに対応するアノード−カソード間に電圧がかかった状態のエネルギーバンド図です。
画像

 この図からも分かるように印加電圧を増加していくと、そのほとんどは真ん中の接合にかかりますから、やがてこの接合は降伏(ブレークダウン)に至ります。降伏が起こるということは電子−正孔対が急増する雪崩現象が生じることを意味します。このときの電流の増倍率Mは
  
と表されるとされています。ここでVBDは降伏電圧、Vは接合にかかる電圧、nは定数でシリコンなどでは3程度の値をとります。つまりVがVBDに近づくとMは急増します。

 この接合を流れる電流Iは
  (4)
と表せます。ここでI(x1)はアノード側のpnpトランジスタのコレクタ正孔電流で、
  (5)
と書け、I(x2)はカソード側npnトランジスタのエミッタ電子電流です。
  (6)
雪崩増倍率は電子と正孔で一般には異なると考えられますが、簡単のためにここでは等しい値Mとしました。

 (5)、(6)式を(4)式に代入して
  
となります。ただし
  
と置きました。電流増幅率αに増倍率Mがかかり、M>>1となりますから
  
が成り立つ可能性があります。つまり電流が負性抵抗領域に入ることが起こりうることがわかります。

 サイリスタの場合、ゲート電流を増加させるにしたがってスイッチング電圧が低下するという特性があります。上式をゲート電流Iを加えて書き直すと
  
となります。ゲート電流が加わる分、電流増幅率の増加が早くなることが理解されます。この結果、降伏が早く起こると考えられます。またゲートに電流を流すためにゲート電圧を増加すると、これは真ん中の接合にかかる電圧を増加させる方向にはたらき、外部電圧が低い状態で降伏電圧に達する効果があると考えられます。
画像

 以上がゲート電圧によるスイッチング電圧の変化についての説明です。以前に掲載したサイリスタの電流−電圧特性には電流増幅率の電流依存性が反映されていませんでした。これを加味してサイリスタの電流−電圧特性を再掲します(図C)。

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