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zoom RSS その他の負性抵抗素子(その1、インパットダイオード)

<<   作成日時 : 2016/07/11 21:38   >>

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 これまで代表的な負性抵抗素子としてトンネルダイオードとpnpn構造素子を紹介してきましたが、これ以外にも負性抵抗を生じる素子があります。上記2つに比べると少し特殊なものになりますが、以下3つほど紹介します。

 今回はインパットダイオードです。インパット(IMPATT)は略号で、IMPact avalanche Transit Time を表します。日本語訳は、「衝撃電子なだれ遷移時間ダイオード」などと長くなり意味がよくわからないかと思います。

 このダイオードはショックレイによるpnpnダイオードの提案から間もなくの195に同じベル研究所のショックレイの共同研究者であるW.T.Read,Jr.によって提案されています(米国特許289966号)。

 この素子はnpnp構造に似ていますが、図Aのように第3層のキャリア濃度が低いほぼ真性の層(i層)になっています。外側のn層とp層はキャリア濃度が高いn+層、p+層です。このダイオードに図のように逆バイアスをかけると図Aの下側に示したような電界分布が生じます。
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 両側のp+層、n+層はキャリア濃度が高いので、ほとんど電界は生じませんが、第2層のp層はキャリア濃度が高くなく薄く作られているので、n+層との間に逆バイアスによる空乏層ができて大きな電界が発生します。この電界がある限界を超えると接合が降伏し発生した電子−正孔対が衝突、増倍してなだれ現象が発生します。なだれ(アバランシェ)については以前に説明しています。

 第3層はi層でキャリア濃度が低いので、この層内の電界はほぼ一定となります、このためなだれで発生した正孔がこの電界によって移動しp+層に達します。電子の方はn+層側に移動しますが、正孔に比べて移動距離が短いため、電流にはほとんど寄与しません。

 以上の動作でどうして負性抵抗特性が現れるのかよくわからないと思います。これについては後続の特許(米国特許2899652号)に詳しく説明されています。

 まず素子に逆バイアスをかけますが、その大きさは接合の降伏が起こるより少し小さくします。これに図Bのような回路で図Cの上の図のような交流電圧を重畳し、この交流電圧が最大値をとる付近で降伏が生じるように設定します。
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 すると図Cの真ん中の図のように交流の1/4周期のところで電子−正孔対が発生します。この電荷はもともとかかっている直流バイアスによってi層を移動します。これによって図Cの下の図のようにほぼ一定の電流が交流の1/4周期から1周期の終わりまで流れることになります。
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 ここで終わりの半周期は交流電圧が低下しているにもかかわらず電流が増加することになり、負性抵抗が生じていると解釈できます。これまでの素子のように直流特性自体に負性抵抗特性が含まれているわけではなく、駆動電流を変化させると生じる特性ですから、動的負性抵抗特性と言うことがあり、インパットダイオードは動的負性抵抗素子の一つと分類されます。

 さてこの素子を何に応用するのかですが、上記のようにパルス電流が発生することを発振回路に使うことができます。上記特許には具体的な数値例が挙げられていますので、それを紹介しておきます。

 上記交流信号の周波数は4GHzとします。この1周期の3/4の時間がi層を電子が横切る時間(遷移時間)tに相当しなければいけませんので、t=1.87×10-10s=0.187nsとなります。電子の速度をおよそ107cm/sとするとi層の幅Wは18.7μmとすればよいことになります。接合が降伏し電子なだれが生じさせる電界は105V/cm程度で、電圧にすると数100V程度になります。すなわちこの素子によれば数GHzのマイクロ波発振が可能であることがわかります。

 なお上記特許にはpin構造素子でも同様な動作が可能であることが示されています。さらにpn接合でもp層またはn層中を電子(または正孔)が走行することにより同様な動作が可能です。i層を用いたインパットダイオードを発明者の名前をとってリードダイオードと呼び、pn接合の場合をアバランシェダイオードと呼んで区別することがあります。

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