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zoom RSS 量子閉じ込めシュタルク効果

<<   作成日時 : 2016/12/30 19:27   >>

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 前回紹介した電界吸収型光変調器では電界印加によって光吸収率が変化する層が使われています。この層は量子井戸層ですが、量子井戸は層に垂直方向に電界を印加することによって光吸収特性が変化する性質があります。この現象を引き起こしているのが、「量子閉じ込めシュタルク効果」と呼ばれる効果です。

 量子井戸の光吸収は同じ半導体の厚い層やバルク結晶の光吸収とは少しちがった特性をもっています。これを説明するためには「励起子」というものを説明する必要があります。原子や電子のように後ろに「子」が付く言葉は粒子であることを示しています。日本の女性名に「子」が付くのはこれとは関係がないようです。

 それなら励起子も粒子の仲間かということになりますが、これは一般に疑似粒子という分類になっています。真の粒子ではないが、粒子とみなすと考えやすいといった意味です。

 結晶に光を当てると電子が励起されて電子−正孔対が生成します。ところが電子と正孔は負と正の電荷をもっているので、電子がもといた場所から十分離れないと、クーロン力がはたらいて電子と正孔が引き合い互いの運動が束縛された状態が生まれます。イメージとしては正孔の周りを電子が回っている原子(図A参照)のような状態が生じると考えられます。この状態を励起子(れいきし、英語ではexiton、エキシトンまたはエクサイトン)と呼んで擬似的な粒子と考えると便利です。
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 この励起子を作っている電子と正孔が分離するにはわずかなエネルギー(数meV〜数10meV程度)しか必要でありません。これは室温の熱エネルギーと同程度ですから、結晶中では通常室温では電子と正孔に分離していまいますので、励起子は極低温でしか存在できません。しかし量子井戸の場合は様相がちがいます。量子井戸中では狭い範囲に電子が閉じ込められているので、電子が励起された場合に正孔から遠ざかりにくいと想像されます。そのため室温でも励起子が存在できます。

 励起子が存在するか否かは、光吸収特性から判定できます。電子−正孔対が形成されるエネルギーよりわずかに低いエネルギーで励起子は生成できますから、電子−正孔対発生に対応した吸収よりわずかに低いエネルギー(長波長)で光吸収が発生します。量子井戸ではこの吸収が室温でも観測されることから、励起子の室温での存在が確認されました。

 光吸収の電界による変化に話を戻します。量子井戸にはバルク結晶にはない複数のサブバンドが伝導帯、価電子帶に生じることは、以前に説明しています。このため、量子井戸の光吸収はこの伝導帯のサブバンドと価電子体のサブバンドの間で発生する励起子の吸収によって生じ、少しずつ違う波長に吸収ピークが生じます。

 このサブバンド間のエネルギーの差は電界によって電位が傾斜するために図Bに示すように減少します。すなわち励起子による光吸収のピークは電界を印加すると長波長側へずれます。この現象を「量子閉じ込めシュタルク効果」(Quantum-Confined Stark Effect, 略してQCSE)と呼んでいます。この効果はベル研究所のD.A.B.Millerらによって1985年に提唱されています(D,A.B.Miller, et al, Phys.Rev., Vol.32, p.1043 (1985)。
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 因みにシュタルク効果というのは古くから知られていた効果で、孤立した原子や分子に電界をかけると、電界がないときにくらべてこの原子や分子による光吸収が変化する現象です。量子井戸の光吸収で似た現象が起こることから、量子閉じ込めシュタルク効果という名前が付けられました。

 理論的な解析について次回以降調べたいと思います。

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