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<<   作成日時 : 2006/07/23 16:17   >>

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 しばらくMOSFETを使った電子回路の話が続きましたが、石ころに話を戻しましょう。CMOSをどうやって1つの石ころとして作るか、という話です。前回紹介した特許(特公昭43−22738号)にも作り方は書かれていますが、これは非常に早い時期の出願ですので、もう少し作り方が確立してきた頃の特許を探してみました。

 CMOSはMOSFETを使ったICの基本構成として広く使われていますが、それを作る手順はかなり複雑です。このため、作り方について多くの技術開発が行われ改良がなされました。昭和50年前後にはCMOSの製造方法に関する特許出願が多くなされています。ここでは製造方法の改良の歴史に立ち入っても意味がないので、基本的な手順だけを説明します。この基本的手順はMOSFETを使ったICの製造に共通に使われている技術ですから、これを知っていれば大体大丈夫です。

 図を見て下さい。これは特開昭49−75288号で従来技術を説明するために使われている図です(図中に少し汚れがありますがご勘弁下さい)。さてこの図の(イ)から(ト)はCMOSの基本的な作製手順を示しています。まず(ト)を見て下さい。これがCMOSの完成図です。基板1がn型シリコンだとすると、右側にあるのがpチャンネルMOSFETです。左側のハッチングを入れた領域4はこの部分だけ基板がp型になっていて、この中にnチャンネルMOSFETが形成されています。それでは(イ)から順に作り方を見ていきましょう。画像

 (イ)はn型シリコン基板上に一部に穴の開いたSiO膜2が形成された状態を示しています。これをどうやって作るかですが、以前にも説明したと思いますが、シリコンを酸素ガス中で高温に加熱すると表面が酸化されてSiOができます。表面をきれいに磨いたシリコンウェハを酸化すると表面に一定の厚さのSiO膜ができます。その一部に穴を開けるにはどうすればよいでしょうか。

 一つには不要な部分にSiO膜ができないように予めカバーをしておくという手が考えられます。しかしこの場合、SiO膜を作るのに基板は1000℃前後の高温に加熱されるので、それでも大丈夫な材料でカバーしなければなりません。これは結構むずかしいので、普通はこの手は使われません。もう一つの手は基板表面全面にSiO膜を付けてしまい、後から不要な部分の膜を取り除く方法です。普通はこの方法が使われます。

 特許ではSiO膜に穴を開ける方法について「フォト・エッチングにより」という一言で済ませています。これは半導体分野ではこのような方法はこの特許が出願された時点ですでによく知られていたので、わざわざ説明していないのです。ここでは少し説明しておきましょう。

 フォト・エッチングというのは略した言い方で、フォトリソグラフィーとエッチングを組み合わせた技術のことです。フォトリソグラフィーはほとんど写真(フィルム写真)の技術です。まずはフォトマスクというものを用意します。これはSiO膜に穴を開ける部分にだけ光をあて、他の部分には光があたらないように遮るはたらきをします。原始的にはつぎのようにして作ります。大きな紙に拡大した穴の形の部分を黒く塗った図を描きます。これをフィルムカメラで写真に撮ります。このフィルムを現像してネガフィルムを作ると、これは最初の図と黒白が反転し、また大きさも縮小されていますので、これがマスクとして使えます。

 フォトマスクが用意できたら、フォトリソグラフィーの工程に入ります。まずSiO膜の上にフォトレジストというものを塗ります。これは感光性の樹脂です。光に感じる樹脂ですが、どういう感じ方かというと、光があたると分子構造が変わります。そして変わった部分だけが、特定の溶剤に溶けるようになります(逆に光があたった部分だけが溶けなくなる場合もあります)。このようなフォトレジストをSiO膜の付いたシリコンウェハに薄く一様に塗ります。これにはスピナーという装置が使われます。しっかりシリコンウェハを固定し、それに液状のフォトレジストを垂らしこれを高速で回転させます。不要な液ははね飛ばされてシリコンウェハ上に一様なフォトレジストの膜が付きます。

 液状のフォトレジストは少し加熱すると固まります。この上に先程のフォトマスクを被せ、上から紫外線をあてます。すると光の当たった部分が変化し、決められた溶剤に漬けると、その部分のフォトレジストだけが熔けて穴が開き、下地のSiO膜が露出します。

 つぎにSiO膜に穴を開けるわけですが、普通は化学的に薬品によって溶かして取り除きます。しかしSiOはガラスの主成分ですから、これを溶かす薬品はそうはありません。強い酸やアルカリもガラス瓶に入っていますが、瓶に穴が開くようなことはありません。ほとんど唯一、SiOを溶かす薬剤として知られているのがフッ化水素(HF)です。これを水に溶かしたフッ化水素酸水溶液がSiOの化学エッチング用に使われます。このフッ化水素酸は樹脂は溶かしません。またシリコンも溶かしません。ですからこれに漬けてもフォトレジストは溶けず、シリコン基板も溶けず、露出したSiO膜だけが溶けてなくなります。以上でやっと(イ)ができました。

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