石くれと砂粒の世界

アクセスカウンタ

zoom RSS 電子なだれ破壊

<<   作成日時 : 2006/10/21 23:33   >>

ナイス ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

 浮遊ゲートを使った不揮発性半導体メモリーを最初に実用化したのはこれもインテル社ですが、まずは同社が1970年に出願した米国特許を見てみることにします。これは米国特許3660819号で、日本には出願されていません。この特許は半導体メモリーの分類には入っていないため、検索ではヒットしませんでしたが、他の特許の孫引きで見つかりました。

 引用文献にはKahng特許があげられ、明細書の従来技術のところにはKahngとSzeによるベル研究所の技術報告が文献としてあげられています。不揮発性半導体メモリーの浮遊ゲートに電子を出し入れする手段としてKahng特許ではトンネル効果が提案されていました。しかしトンネル効果を起こさせるには非常に薄い絶縁膜が必要です。現在はそれほどでもなくなったかもしれませんが、1970年代頃はまだそのように薄い膜を実用的なデバイスに使うのは難しかったようです。この特許ではこの問題を取り上げ、薄い絶縁膜を使わない方式を提案しています。画像

 図Aはこの特許のFig.2で、半導体メモリー素子の断面図を示しています。Kahngのデバイスと違うのはゲートが絶縁膜26と30の間に埋め込まれた浮遊ゲート28だけで、外部に接続される通常のゲート電極がないことです。あとは通常のMOSFETと同じでn型シリコン基板20の表面にソースとドレインになるp領域22、24が作られ、金属(アルミニウム)電極32、33が付いています。

 なお、浮遊ゲートはKahng特許では金属でしたが、この特許では多結晶シリコンで作ると書かれています。これはDRAMの電極で用いられていたのと同じです。シリコン基板上の絶縁膜26は熱酸化して作ったSiO2膜で厚さは100nmとなっています。薄膜としては作りやすい厚さですが、トンネル効果で電子を透過させるには厚すぎます。

 それでは電子を浮遊ゲートに入れるにはどうするか、この特許ではつぎのような手段を使っています。前回、説明しましたが、トンネル効果以外で電子を絶縁膜を通過させるには、電子に高いエネルギーを持たせなければなりません。光や熱でなく、電気で行うには高い電圧で電子を加速する手段があります。アバランシェ(Avalanche)破壊によると書かれているのはそのような方法です。アバランシェ破壊は日本語では電子なだれ破壊とも呼ばれます。

 pn接合に逆バイアス、すなわちp側にマイナス、n側にプラスの電圧をかけると、pn接合部分に電子も正孔もいない空乏領域ができ、電流は流れません。しかしどんどん電圧を高くしていった場合、いつまでもこのような状態が続くことはありません。pn接合部分にかかる電界がある限界を超えると、電子がp側からn側に流れ込みます。この電子は高い電界で加速されているので、周囲の原子にぶつかり、それによって電子がなだれ状態で増殖し、電流はどんどん大きくなります。画像

 図Aをみると電極32が接地され、33にマイナス電圧が繋がれています。これでn型シリコン基板とp型領域22の間には逆バイアスがかかります。p型領域22の周囲には破線で示された部分36がありますが、これが空乏領域を示しています。図B(a)はpn接合ダイオードの電流−電圧特性です。逆バイアスでは電流は流れませんが、電圧が大きくなると突然電流が流れ出すようになります。これが電子なだれ破壊です。

 特許には30Vをかけるとアバランシェ破壊が起きたと書かれています。これによって図B(b)に示したように、p型領域側から大量の電子が浮遊ゲートの下の部分のn型領域に流れ込みます。この電子は高いエネルギーをもっていますので、絶縁膜を乗り越えて浮遊ゲートに入ることができます。

 逆バイアスの電圧があまり大きくなければ、pn接合が本当に破壊されてしまうことはなく、電圧を下げると元の状態に復帰しますので、繰り返しこの現象を利用することができます。

 浮遊ゲートに入った電子は125℃という高温で動作させても10年以上、つまり半永久的にもつ計算になると書かれています。それでは一旦、浮遊ゲートに入った電子を抜き取るにはどうしたらよいでしょうか。正孔を加速して浮遊ゲートに入れ、電子と結合させて電荷を打ち消すことが考えられますが、この特許ではX線や紫外線の照射を用いることを意識しているようです。

 最後の部分に書かれていることと符合しますが、インテル社は浮遊ゲートを使ったMOSFETをまずは紫外線消去型のROMとして実用化することを考えました。複数のMOSFETを使ったROM装置については別の特許がありますので、次回はそれを見ることにします。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
ナイス

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
電子なだれ破壊 石くれと砂粒の世界/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる